学生時代は無名だった陸上選手が50代で日本記録を作れたとっておきの“継続の秘訣”とは

フルマラソンを力強く走る【写真提供:後口洋史さん】
フルマラソンを力強く走る【写真提供:後口洋史さん】

可能な範囲で生活に運動を組み込み目標を立てる

 でも、会社勤めをしながら競技を続けるのは難しい。自分も今は中学校の社会科教師をしていますが、大卒後は時計メーカー「服部セイコー(現・セイコーホールディングス)」に就職し、バブルの余韻がまだ色濃い時代でしたから、営業マンとして早朝から夜遅くまで働き、遊び、毎日終電で帰宅。ウイークデーはまったく走れず、週末に自宅周辺を10キロ走って追い込んでみたり、市民マラソンにぶっつけ本番で出場したりするぐらいでした。マラソンのタイムは3時間30分くらいにまで落ちていましたね。

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 会社員生活は自分には合っていない、家族との時間や地元での暮らし、余暇で走ることも大事にしたいなあと思い、2年で埼玉県の公立小中学校事務職員に転職しました。今で言うライフワークバランスを考えたんですね(笑)。週5回走れる時間ができ、もう1度“別府大分毎日マラソン出場”という目標を立てることができました。その後も2度転職し現職ですが、一般企業のサラリーマンを続けていたら、ここまで走りを追究できなかったと思います。また、結婚し家庭を持つと、運動の時間がとれなくなる人も多いですよね。自分は幸い、家族に理解があって走り続けてこられました。「ギャンブルに夢中になるよりいいわ」と思ってくれているのかな(笑)。

 仕事や家庭をもちながら、どうすれば運動を続けられるか、と考えると、人それぞれ、運動にかけられる時間の制約はあっても、目標をもつことかな、と思います。それぞれ自分の生活に可能な範囲で運動を組み込み、身近な目標を立てて、それをクリアすること。その達成感が、運動を続けるモチベーションの一つになるのではないでしょうか。自分の場合は、その目標が記録でした。正直、平凡な選手だった自分がマスターズで記録を更新するようになるとは思っていませんでしたが、「自分のピークは30代なのかな」「まだ伸びるかも」と続けてきたらここまできた、という感覚です。

続けたことで走る目的が一つではなくなった

 それほど間隔をあけずに実践で走る、という方法も良かったのかもしれません。マスターズで記録を出すということは、いい時のタイムをいかに落とさないか、ということ。だから、それほど間隔をあけずに、脳と身体に前のタイムがよかったときの走りの感覚が残っているうちに、また実践で走ればタイムを維持しやすいと考えたのです。自分は今も高校2年生のときと同じぐらいのタイムを維持していて、1500メートルなど、一度落ちた後、なぜか40代でタイムが復活していったものもあります。

 県記録が出るようになると、今度は周りの方に目標にしてもらえるようになりました。若いときは誰しも自己顕示欲や承認欲求が強いものですが、自分にとっては走ることが自分を表現する手段の一つでした。それが、今は目標としてくださる方のためにも走り続けたい、と思うようになりました。走ることでいろいろな気付きや人との出会いがあります。走ることで自分が豊かになる。今はそれも走り続ける動機になっています。

次のページへ (3/4) 楽しみを犠牲にせず、休むべき時は休む
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