桜庭和志、「ちょっと違うでしょって」総合格闘技界の“迷走”に警鐘

桜庭和志(右)とターザン山本!氏【写真:ENCOUNT編集部】
桜庭和志(右)とターザン山本!氏【写真:ENCOUNT編集部】

格闘技界が盛り上がらない理由

桜庭「それと『QUINTET』はマットでやっているんですけど、リングや金網に比べてもの凄くデカイので、会場に入っただけですごい演出になっているって言われますね」

ターザン「差別化ができているんですね」

桜庭「リングにはロープがあるし、金網でもそうですけど、それだと相手じゃなく、そこに寄りかかって倒れないようにしながら殴り合いに持っていく。それだと純粋に自分の力じゃないものを利用して闘っていくから、なんか違うなと思って」

――桜庭さんが今のMMAを見て、「ボクリング(ボクシング+レスリング)になっている」と言った、という話がありますね。

桜庭「言っていいんですかね。今の総合(MMA)は『キックボクリング』ですよ(笑)」

ターザン「キックボクリング!?」

桜庭「今の日本の総合は体重の軽いクラスが主流になってきたからなのか、なんかチョンチョンチョンって(打撃を)やって、倒れたと思ったら、またチョンチョンチョンってやって」

ターザン「シャモのケンカみたいなもんですよね」

桜庭「だったら、ちゃんとKOしようよ、極めようよって思うんだけど、そこじゃなくてチョンチョンチョンってやって判定勝ちして『ウワーッ!』て。いや、それは勝ちとは言わないでしょって」

――パチパチパチ!

ターザン「そういうことだ」
 
桜庭「ちょっと違うでしょって」

――だからつまらないし、格闘技が盛り上がらない。

桜庭「僕は昔の総合しか知らないですけど、アンデウソン・シウバだったりショーグンだったり。あの辺はちゃんとKOを狙うじゃないですか。あの辺は面白かったですよね。例えば『UFC』とかでもコナー・マクレガーとか、ちょっと前ならロンダ・ラウジーとかは全然面白いし。ロンダには極めがありましたもんね。テイクダウンも強いし」

――プロレス全盛の頃は、先輩後輩の関係がちゃんとあったので、下の選手は勝手に「プロ」とは何をするものかを学んでいくけど、今はそのシステムが少なくとも日本のMMAでは崩壊してしまったので、チョンチョンチョンでも勝ちは勝ちっていうのを容認するようになっちゃったんですよね。

桜庭「なんなんだろうと思って」

ターザン「今の話を聞くと、桜庭さんは名前を変えたほうがいいね」

――どんな名前にですか?

ターザン「キラー桜庭ですよ!」

桜庭「キラー桜庭?」

ターザン「キラーというのはね、ダメなもの、塩っぱいものは全部切り捨てるというね」

――殺人者ですね(笑)。

桜庭「あー」

ターザン「この世界というのは『やる側のプロ』と『見る側のプロ』と『語る側のプロ』が揃って、初めてウワーッと素人が来るわけですよ! そのうち、1つでも欠けたらダメなわけですよ!」

――三位一体になってこそ、一般世間の人が「面白い」と寄ってきてブームになっていくと。

ターザン「今、桜庭さんに話を聞くと、それがキチンと意識の中に入っているね」

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