【Sareee-ISM】KAIRIが初代IWGP女子王座獲得時の心境を激白「これが最後と思っていた」

19日、東京・銀座にある猪木元気工場で「Sareee-ISM~ChapterII~」(8月4日、東京・新宿FACE)が開催される旨の会見が行われた。同大会はWWE帰りの女子プロレスラーのSareeeが主催する自主興行の第2弾となるが、メインでは、Sareeeと同じく元WWEに在籍経験のあるKAIRIをパートナーに、シードリングの中島安里紗&マーベラスの彩羽匠とタッグマッチを戦うことが発表された。今回はSareeeとKAIRIのタッグが結成される意味を探ってみた。

「Sareee-ISM2」のメインでタッグを組むSareeeとKAIRI
「Sareee-ISM2」のメインでタッグを組むSareeeとKAIRI

初代IWGP女子王者・KAIRIの覚悟

 19日、東京・銀座にある猪木元気工場で「Sareee-ISM~ChapterII~」(8月4日、東京・新宿FACE)が開催される旨の会見が行われた。同大会はWWE帰りの女子プロレスラーのSareeeが主催する自主興行の第2弾となるが、メインでは、Sareeeと同じく元WWEに在籍経験のあるKAIRIをパートナーに、シードリングの中島安里紗&マーベラスの彩羽匠とタッグマッチを戦うことが発表された。今回はSareeeとKAIRIのタッグが結成される意味を探ってみた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「猪木イズム最強女子タッグ結成!」「Sareee-ISM~ChapterII~」で、SareeeとKAIRIがタッグを組むと聞き、真っ先に感じたのがこれだった。

 もちろん、両者がWWEに在籍したことがあるため、元WWEスーパースターズであることは間違いないが、19日に開催決定会見が実施された場所が「猪木元気工場」というアントニオ猪木の権利を管理する会社であったこと、Sareeeが父親の影響で幼少期からA猪木の影響を受けて育ち、かつKAIRIが昨年制定されたIWGP女子王座の初代王者だったことも加味すると、自然と身勝手な連想ゲームが脳裏をよぎった。

 なにせIWGPとは、1983年にA猪木が「世界統一」を掲げ、「3年越しの大野望」として世に誕生させた念願のタイトルであり、NWF王座と並んで、A猪木を語る上では欠かせないタイトルだったからだ。

 しかしながら会見後、KAIRIに話を聞くと、これ以上ないほどに驚かされた。それはKAIRIに対し「初代IWGP女子王座のベルトを巻いていた時にA猪木のことは考えなかったと思うんですけど……」と水を向けると、「考えますよー」との言葉が返ってきたことだたった。

「IWGPって聞くと猪木さんが浮かびますし、やっぱり簡単に名乗れる響きではないですよね。やっぱり猪木さんをはじめたくさんのレスラーの方々が命を削って、その価値を高めて、その名前も高めてこられているっていうところで、簡単には名乗れないっていうのはありました。もう本当に」

 そう言って、猪木ファンを泣かせる言葉を発したKAIRI。それほどまでにIWGPという王座に対し、敬意を持って接していたとは思わなかったが、「これが最後って思っていました」とまで口にしたのは、さらに驚いた。

 詳しく話を聞くと、KAIRIは「もう引退を考えていました」と話しながら、こう続けた。

「(IWGPの)ベルトを取って、ベルトの価値を私が高めてって思ってましたし、実際に自分で満足いくぐらい高め切って、次の選手に引き継げたらっていう気持ちでした」

旗揚げ戦では橋本千紘の“オブライト”に涙を飲んだSareee【写真:(C)Sareee-ISM】
旗揚げ戦では橋本千紘の“オブライト”に涙を飲んだSareee【写真:(C)Sareee-ISM】

Sareeeの問題提起に対するKAIRIの見解

 今年に入って、Sareeeは女子プロレス界に対する問題提起を起こした。

「プロレスなので、私は“戦い”だと思うんですね。なので、キレイとかわいいとか、いいですよ。もちろんそれもいいんですけど、その前にしっかりと“戦い”をやった上で、そういうことをやっていかないと。嘘はあとからバレてしまうので。しっかり私が“戦い”っていうものを日本の女子プロレス界に。(日本に)帰ってきて、しっかり見せていきたいと思っています」(3月13日に行われた会見場でのSareeeの言葉より)

 これに関して、KAIRIはどう思ったのか。実はKAIRIに最も聞きたかった質問がこれだった。というのは、おそらく女子プロレス界のみならず、格闘家も含めた「プロ」を名乗る全ファイターが「“戦い”とはなんぞや」という根源的な理由を、今一度、再考するためのきっかけになったと考えたからだ。

 実際、KAIRIは「いい質問ですね」と前置きした上で、次のように返答した。

「やっぱり私はいろんな国でプロレスをしたからこそ、今そう思えるのかもしれないけど、私の場合はやっぱりそれぞれの国や団体、人それぞれの中でプライドがあるし、プロレスとはこうだって、もうホントに全員違うなって思って、それは感じまして。で、やっぱ私の中でも、私の思うプロレスとはこうだっていうのもまだ固まってはいないんですよ。けど、やっぱりいろんな団体を経験する中で、今も迷いながら、プロレスとはなんなのかっての中でやっていて。やっぱり私もプロレスは“闘い”がベースだと思いますし、“戦い”をやっぱり見せないとお客さんもついてきてくれないとは思います」

 この発言は、KAIRI本人が口にするように、日本やアメリカをはじめ、さまざまな国や地域、団体で試合を経験してきた“世界を旅する海賊王女”KAIRIだからこその言葉だと痛感した。

 その上でKAIRIは言う。

「でも、Sareeeちゃんがそう思ってるんだったら、私はそうやって意見を発信した方がいいと思う。最近で言うと、中田(敦彦)さんが松本(人志)さんに対する提言じゃないけど、思っていることを口に出して言うほうが、今は難しい時代の中で、ちゃんとそういう考えを言えるってすてきだなというか。それによって周りも考えるし、私も考えたし、考えるきっかけにもなるから問題提起してくれる人ってすごいなって。私が影響を受けたアスカさんもそういう方でしたけど、問題提起ができる人ってカッコいいなと思いますね、うん」

「最初で最後のタッグかも…」(Sareee)

「もしかしたら最初で最後になるかもしれない」

 KAIRIと同じく、Sareeeにも会見後に話を聞くと、今回が終わってみないことにはその先は分からないことを明かしつつ、次のように発言した。

「もちろん、(いつかはKAIRIと)対戦したいなとも思いますけど、まずはドリームタッグ。これが見たいと思ってくださるファンの方もすごくたくさん、それこそ世界中にいると思うので、そういう方の期待に応えたいと思っています」(Sareee)

 また、Sareeeは、「今日の記者会見はほんわかした感じでしたけど、対戦相手には中島安里紗と彩羽匠がいるので、リングに上がれば、私のスタイル、戦い、強さ、そこは何があってもブレないので。そこはしっかりと刻み込みたいと思います。そして、前回は橋本千紘選手に敗れてしまったんですけど、今回は負けるわけにはいかない。強敵の二人ですけど、しっかり私たちが勝利して、『Sareee-ISM~2~』を締めくくりたいと思います」と話した。

 一方、KAIRIは会見の席で「戦いたい選手でもあるんですけど、組んでもみたい。同じWWEを乗り越えてきた者同士として心をひとつにしたい。WWEで培ってきた者だったり、日本で培ってきたものを融合させたら、どんな化学変化が生まれるんだろうと思って。そこは私自身もやってみたいかったので、まずは(組む)」と発言。

 しかもKAIRIは会見で「私はSareee-ISMがどんなものかお客さんと一緒に体感したい」と口にし、今回、Sareeeからのオファーを受けた理由を「私は挑戦をする人が大好きです。Sareeeちゃんは24歳で一人で渡米して、私も行っていたから分かるんですけど、試合以外の人間関係づくり、今まで日本で築き上げたものすべてを捨てて、どうなるか分からない覚悟で行く勇気。その挑戦する勇気を私は尊敬します。そして一人で興行をするっていう勇気、思いは本当に心を打たれますし、私も少しでも協力したいと思ってオファーを受けました」と話している。

 ちなみにKAIRIに対し、A猪木の印象をたずねると、「やっぱりプロレスっていう輪を超えて、日本中、世界中、一般の人たちにまでプロレスの楽しさを伝えようとしてたっていうのがわかるので、とにかく視野が広いですよね。究極のエンターテイナーというか」と答え、ザ・ロックとして知られるドウェイン・ジョンソンの名前を出しながら、「ドウェイン・ジョンソンさんもそうなんですけど、もうプロレスの垣根を超えて、世界中でのザ・エンターテイナーだなって思うんです。猪木さんもホントにエンターテイナー、強さの中に、人を楽しませたいっていう気持ちがすごいある方なんだなって思います」と話した。

 いずれにせよ、今回限りの可能性も含めた上で両者の動向を見守りたいが、今回の結果にかかわらず、Sareee対KAIRIによる、来るべき「猪木イズム最強女子決定戦」は是非とも実現してほしいところ。そのためにも、まずは“闘い”の詰まった「猪木イズム最強女子タッグ」を堪能することが先決だろう。

 それが生前、「プロレスは“闘い”である」と言い続け、引退試合後のあいさつで「人は歩みを止め、挑戦をあきらめたときに年老いていく」と口にしたA猪木が残したかった「猪木イズム」の正体であることは間違いないのだから。

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