製造は55年前、サビた車体に穴…ボロボロの愛車に乗り続ける理由 個性派オーナーの深い思い
旧車イベントで見つけた有間さんが乗るダットサン521トラック(1969年型)、知らない人が見たらサビサビのトラックにしか見えないのだが、あえて昭和を走っていた当時のままの状態をキープするのにはオーナーのこだわりがあった。
昭和のトラックを当時のままの状態で乗る
旧車イベントで見つけた有間さんが乗るダットサン521トラック(1969年型)、知らない人が見たらサビサビのトラックにしか見えないのだが、あえて昭和を走っていた当時のままの状態をキープするのにはオーナーのこだわりがあった。(取材・文=土田康弘)
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10月20日に埼玉県所沢市で開催された第25回「クラシックカーフェスティバルinところざわ」、その会場内でひときわ異彩を放っていたのが有間さんのダットサン521トラックだった。ボディはサビが浮いたままの状態、部分的には穴が空くほど腐食が進んでいる。会場内に並んでいるピカピカに磨き上げられたクラシックカーの中にあって、少々場違いな雰囲気も……。しかしオーナーの話を聞くとその意味と深い思いが伝わってきた。
「このダットサン521トラックは昭和44年製造なんですが、当時のままの状態をキープして乗り続けたいと思ったんです。友人が不動車として持っていたものを6年前に譲り受けて、エンジンなどをレストアしてちゃんと動くようにしました。しかし内外装はリペイントしたりせずに、そのままにしているのはこのクルマが活躍していた当時の雰囲気を体感したかったからなんです」
はじめて購入したのはマーチポルカ
もともと有間さんはちょっと変わった(いやかなり変わった)クルマが好きで、はじめて買ったのがマーチポルカという希少車。他にも初代スマートを所有するなど、他人と同じクルマには興味が無いという変化球のクルマ好きだ。
「子どもの頃はスーパーカーブームだったんですが友達が好きだったスーパーカーにはまったく興味が無くて、ミニーカーを加工して自分流にカスタムして遊んでいました。でもクルマは大好きで4台を所有しています」
そんな1台が今回のダットサン521トラックだ。エンジン関係、サスペンション関係などはしっかりとレストアして、旧車とは思えない走りっぷりを取り戻した。昭和の旧車とは思えない動力性能が蘇り高速道路もしっかり制限速度まで出るとのこと。
クルマを手がかりにした聖地巡礼を楽しむ
そんなダットサン521トラックを手に入れたことで、有間さんには旧車ならではのもうひとつの楽しみが生まれる。それが聖地巡礼的なルーツ探しの旅だ。このダットサンは当時のままの姿で乗り続けているので、各部にはオリジナルのステッカーやペイントがそのまま残されている。それを手がかりにして昭和の時代にこのクルマがどんな働き方をしていたのか、どんなエリアで走っていたのかなどを知りたいと思い始めたのだった。
「ドアの内側には販売店のステッカーがすり切れずにかろうじて残っていたんです。その販売店の名前を手がかりに探したところ、なんと現存しているクルマ屋さんだと言うことがわかりました。かつてその販売店で新車としてこのクルマが納車されたと思うと感慨深いですよね。近々ダットサンを里帰りさせるドライブに出かけようと思っています」
さらにこのクルマは神奈川県の日産座間工場の近くで働いたことも過去のオーナーの情報からも少しずつわかってきた。さらにボディにはうっすらと「○林○」「自家用車」の文字が見えている。これはこのトラックを使っていた商店や工場の屋号が書かれていたはず。これを解読して、どんな働き方をしていたのかに思いをはせるのも楽しいと言う。
「もうひとつの趣味であるバイクを積んだり、荷物の運搬にも実用しているダットサンですが、ルーツ探しを楽しませてくれるのも旧車ならではですよね。ボディのステッカーなどをきれいに剥がしてしまったり、リペイントしたら手がりはすべて消えてしまっていたので、今になってみれば当時のコンディションのまま乗っていて良かったと思っています」と実感を込めた。