アイドルとプロレスラー、“二刀流”荒井優希の意識を変えたレジェンド武藤敬司の姿「衝撃的でした」

プロレスデビューを果たした年に新人賞を獲得し、デビュー3年を迎えるまでにタイトルを2つ獲得することは並大抵の努力ではかなわない。しかもその一方で、アイドルとしても約2年ぶりに選抜メンバーにも選ばれた。荒井優希は、東京女子プロレスでも、SKE48でもトップランナーとして突っ走っている。

アイドルとレスラーの「二刀流」で活躍する荒井優希【写真:橋場了吾】
アイドルとレスラーの「二刀流」で活躍する荒井優希【写真:橋場了吾】

先輩がベルトに挑んでくるという初のシチュエーションにビビッてしまった

 プロレスデビューを果たした年に新人賞を獲得し、デビュー3年を迎えるまでにタイトルを2つ獲得することは並大抵の努力ではかなわない。しかもその一方で、アイドルとしても約2年ぶりに選抜メンバーにも選ばれた。荒井優希は、東京女子プロレスでも、SKE48でもトップランナーとして突っ走っている。(取材・文=橋場了吾)

 荒井にとってプロレスラーとして考え方が大きく変わった試合があるという。それが2023年2月21日に東京ドームで行われた武藤敬司引退試合だ。この日、荒井は東京女子プロレス提供の8人タッグマッチ(坂崎ユカ&山下実優&中島翔子&辰巳リカvs瑞希&伊藤麻希&渡辺未詩&荒井優希)に出場した。

「アイドルのときの私と、プロレスラーの私は違うみたいで、プロレスラーの荒井優希は大きな会場で試合をすることが好きなんだということに気づきました。結果的にドームの試合は自分が負けてしまったんですが、本当にすごく楽しかったですし、もっと大きい会場で試合がしたいと思えた日でした。あと、武藤さんの引退試合も見させていただいたんですが、数万人がリングの1か所を見ているのは衝撃的でした。

 SKE48のときはステージが複数あって、いろいろなところにメンバーが出てくるので、お客さんの目線が散らばるんです。リングだと一点集中で、武藤さんのひとつひとつの行動で皆が感動して……会場全体が動いている感じが『ライブとは違う何か』だと感じました。プロレスが好きで武藤さんが好きで、これだけの人がこの日にこの場所に集まっていることにも、皆が同じ環境にいることにも感動しました。やっぱり大きい会場でプロレスの興行ができることって、本当にすごいことなんだなと改めて感じましたし、価値観が変わりました」

 その1年後の今年1月4日、荒井は自身よりも一回りも二回りも大きいマックス・ジ・インペイラーを破り、見事第12代インターナショナル・プリンセス王者となった。2月10日には、長野じゅりあを相手に初防衛に成功したが、試合後に上福ゆきが現れマイクによる口撃(褒め殺し?)を受けてしまう。

「上福さんとはシングルとタッグ、1回ずつしか試合をしていないです。私にとっては『青いベルト(インターナショナル・プリンセス王座)=上福ゆき』なんです。しかも上福さんはキャリアもかなり上で、その大先輩が私のベルトを狙いに来るっていうのが初めてのシチュエーションなので普通にビビっちゃいました。最近の上福さんはシングルのトーナメントでもすごい試合をされているのを見ているので、上福さんのマイクを聞いていて『どうなるんだろう』という不安がすごく出てしまいました。

(上福は)オールマイティーなイメージです。すごく華やかで、ビジュアルが良くて、技も鋭くて、どこからでも長い足で蹴られる……そしてお客さんを楽しませることもできるし、ちょっと意地悪な攻めもできる。どこにも抜けているところがないなと思います。過去に試合をさせていただいたときも翻弄(ほんろう)されたというか、上福さんのペースで進んでいったイメージがあるので、今回はそうしたくないですね。やっぱり自分がチャンピオンなので、自分のペースで進めたいというか、上福さんが試合の中心にならないように頑張りたいです」

 上福が第5代インターナショナル・プリンセス王者として君臨していたのが、2020年11月7日から21年5月4日まで。くしくも、荒井のデビュー戦の同日に王座から陥落している。その上福が、3月31日に両国国技館で開催される『GRAND PRINCESS ‘24』で荒井に挑む。荒井もこの大舞台での挑戦は望むところだ。

「(両国国技館で試合をするのは)3回目です。1回目はインターナショナルに初めて挑戦した伊藤(麻希)さんとの試合(22.3.19)、2回目は赤井(沙希)さんの引退試合に東京女子プロレス提供試合で出場したとき(23.11.12)ですね。両国は伊藤さんに全然かなわなかったという悔しい思い出が詰まった会場でもあります。伊藤さんが長めの歌を歌って出てきたんですが、私が挑戦者で先に入場していたので伊藤さんがパフォーマンスする姿を見ていて不思議な気持ちになったというか……リングに出てから考える時間があって、すごく緊張したのを覚えています。赤井さんの引退試合の日は私が勝つことができて、かつ赤井さんの試合もすごく心が動いて……お世話になった方が引退された会場でもあるので、自分らしくいきたいですね」

フィニッシャーのFinallyは両国国技館でも炸裂するか【写真:東京女子プロレス提供】
フィニッシャーのFinallyは両国国技館でも炸裂するか【写真:東京女子プロレス提供】

東京女子プロレスもSKE48も両方の良さを愛してほしい

 3.31の両国国技館ではSKE48のメンバーによるミニライブも予定されているが、荒井ももちろん参加する。そして、3月いっぱいでSKE48を卒業する谷真理佳も花を添える。谷といえば、幾度となく実況席のゲストとして荒井の試合を盛り上げてきた。

「(谷は)アイドルの私もプロレスラーの私も知ってくれた上で寄り添ってくれますし、いつもいっぱい応援してくれて、褒めてくれて。本当にお世話になっている方なので、(卒業することは)すごく寂しい気持ちではあるんですけど、やりたいことがあると思うので応援したいと思いますし、卒業してもまた解説してほしいなと思います」

 そのSKE48において、荒井は2月28日にリリースされたシングル『愛のホログラム』で約2年ぶりに選抜メンバーに選ばれた。プロレスラーとアイドルという二刀流でもトップランナーでいられるモチベーションはどこにあるのか。

「仕事のバランスは……スケジュールを決める方々は大変ですよね(笑)。まずは両方に迷惑をかけたくないというのが大きいですね。私が試合や練習でけがをすることは、プロレス界にとってよくない印象がついてしまうと思いますし。それが嫌で、トレーニングやケアには時間を使っています。そして、SKE48の仕事もしっかりやらないことには、アイドルとしての私のファンの方や関係者が悲しむので、どちらも頑張っている姿を見せたいです。両国では、2年前は挑戦者でしたが今回はチャンピオンですので、きっと感じることや見える景色が変わってくると思いますし、インターナショナル・プリンセスチャンピオンとしての自信をもってリングに立ちたいと思っています。SKE48のミニライブもあるので、ライブも試合も見ていただけたら両方の良さが伝わると思うので、見ていただく全員の方に両方愛してもらえる日にしたいなと思います」

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