なぜコロナ禍で中古車が高騰しているのか 専門家が明かす“消費者心理”の変化

新型コロナウイルス禍を受け、中古車市場の異変が長期化している。生産体制に課題を抱える新車市場に連動し、中古車への関心が高まる一方で、価格の高騰化と入手の高難度化が“高止まり”しているというのだ。車を買いたい消費者にとっての「傾向と対策」とは。日本最大手の中古車情報メディア「カーセンサー」で企画部門の責任者を務める宮下俊氏に教えてもらった。

「カーセンサー」企画部門責任者の宮下俊氏【写真:カーセンサー提供】
「カーセンサー」企画部門責任者の宮下俊氏【写真:カーセンサー提供】

カーセンサー幹部に聞いた 中古車市場「競争の激化」 “新車至上主義”に変化も

 新型コロナウイルス禍を受け、中古車市場の異変が長期化している。生産体制に課題を抱える新車市場に連動し、中古車への関心が高まる一方で、価格の高騰化と入手の高難度化が“高止まり”しているというのだ。車を買いたい消費者にとっての「傾向と対策」とは。日本最大手の中古車情報メディア「カーセンサー」で企画部門の責任者を務める宮下俊氏に教えてもらった。(取材・文=吉原知也)

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 最近、“新車の納期が長くなってなかなか買えない”といった声をちらほら聞くことはないだろうか。今年1月19日にトヨタが、人気車種「ランドクルーザー」の納期について、「今からご注文いただく際の納期は4年程度となる場合がございます」と発表し、大きな話題を集めた。中古車市場に目を向けると、21年11月に発表された「カーセンサー中古車購入実態調査2021」によると、「21年の中古車購入の費用総額は4兆1699億円と推計され、15年の調査開始以降、ここ7年間で最大の市場規模となった」と分析している。

 背景について、宮下氏は中古車のニーズが高まっていることによる「競争の激化」を指摘する。世界的な半導体不足やコロナ禍による工場の操業停止などの要因で、自動車の生産が停滞気味に。新車の台数が減ることで、中古車市場に波及するという構造的な問題だ。新車市場の変化から2、3か月のタイムラグで影響が出てくるという。

 中古車販売店側からすれば、新車の台数が減ると、下取りに出てくる中古車も少なくなる。仕入れが難しくなることで、よりいい中古車を確保することが困難に。必然と競争が激しくなるという流れだ。中古車確保の一般的な手段である業者間オークションにも、変化の波が。メーカー系列のディーラーは、通常は主に自社ブランドを店で小売りし、他社ブランドはオークションに出すのが通例というが、現在は他社ブランドも店頭に置くように。オークションへの流通量も減り、結果的に価格上昇が避けられない現状だ。

 実際に価格は高騰化。同サイト掲載車の分析データでは、平均の車両本体価格は、2019年12月が「148.8万円」、20年12月が「151.9万円」、21年12月が「162.2万円」。2年間で約13万円の増加だ。21年は通年で右肩上がりの状態だった。宮下氏は「中古車発生量が減ったことも相場を押し上げた要因と考えられますが、それ以上に、市場傾向として車両の年式や新車時価格が上昇していることも価格高騰の要因」と見ている。不景気に悩む消費者にとっては、手痛いところでもある。

 一方で、宮下氏が注目するのは「消費者心理の変化」だ。コロナ禍前後の時間軸で振り返ると、1度目の緊急事態宣言が発令された2020年4、5月に中古車マーケットは一時停止。同年6月にすぐに反動需要が起こった。公共交通機関を避けたい人の増加による自動車ニーズの急増だ。その後も中古車需要の高止まり状態が続き、「活発化が維持されています」。

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