共鳴する“愛と喪失” 『鳴潮』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』に通底する問い

オープンワールドアクションRPG『鳴潮』とNetflixアニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』のコラボレーションが、6月8日よりスタートした。ルーシーとレベッカという2人のキャラクターがソラリス(『鳴潮』の舞台となる世界)に降り立つこの企画は、センセーショナルな驚きを両作品のファンにもたらした。

『鳴潮』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』のコラボがスタート【画像:(C)KURO GAMES (C)2026 CD PROJECT S.A.】
『鳴潮』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』のコラボがスタート【画像:(C)KURO GAMES (C)2026 CD PROJECT S.A.】

『鳴潮』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』のコラボが開始

 オープンワールドアクションRPG『鳴潮』とNetflixアニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』のコラボレーションが、6月8日よりスタートした。ルーシーとレベッカという2人のキャラクターがソラリス(『鳴潮』の舞台となる世界)に降り立つこの企画は、センセーショナルな驚きを両作品のファンにもたらした。

 ポストアポカリプスとサイバーパンク。細かく見ていくと世界観や舞台設定に相違はあるが、両作に通じるファンほど2つの世界に通底するテーマ性やモチーフを見出しているのではないだろうか。

 フィルム・ノワール的虚無と退廃主義の中で展開される愛とヒューマニズム。それらはこれまでのポップカルチャーの中で何度も描かれてきたタイムレスな問いだが、極めて同時代的であるとも感じられる。本稿は、両作のファン、とりわけ現状片方にしか接していない方に向けて書いたものだ。

(※以下、作品のネタバレを含む記述があります)

『サイバーパンク:エッジランナーズ』の舞台は、ネオンの光と底なしの欲望が渦巻く絶望の街、ナイトシティ。理不尽な社会システムによって母と日常のすべてを奪われた少年デイビッド・マルティネスは、遺された軍用インプラントを己の背骨に打ち込み、裏社会を生きる傭兵「エッジランナー」として歩み始める。

 彼が出会ったのは、月へ行くことを夢見る孤独なネットランナーの少女。彼女こそが、今回『鳴潮』に登場するルーシーだ。「彼女の夢を叶えたい」――その純粋な願いと、散っていった仲間たちの想いを背負うため、デイビッドは自らの肉体を機械(クローム)で改造し、限界を超えて力を求め続けた。

 しかし、その代償は精神を蝕む「サイバーサイコシス(精神崩壊)」という避けられない破滅だった。己の人間性が失われていく中、彼はただ愛するたったひとりの少女を逃がすため、巨大企業アラサカという絶対的な権力に抵抗する。

 その悲しくも美しい結末はオーディエンスの心に穴を空け、挿入歌「I Really Want to Stay At Your House」のカバーやリミックスを含む大量の二次創作物を生んだ。

『エッジランナーズ』は悲しくも美しい結末を迎えた【画像:Netflix公式YouTubeより】
『エッジランナーズ』は悲しくも美しい結末を迎えた【画像:Netflix公式YouTubeより】

 本作のエグゼクティブプロデューサーを務めたラファウ・ヤキ氏は、リリースからほどなくして自身のXを介して以下のようにポストしている。

「エッジランナーズが悲劇的な結末であることを受け入れられない人が多いようだ。最初からこれはノワール作品にする予定だった。ノワールには幸せな結末は不要だ。この物語の構造において、主人公はシステムに勝てない。しかし、愛する人のために戦うことはできる」

 そして『サイバーパンク』の生みの親(本シリーズは1980年代に端を発する)であるゲームデザイナーのマイク・ポンスミス氏も、2020年の段階で「世界が制御不能で、自分では運命を変えられないと感じている人が増えている。サイバーパンクはある意味、その挫折感の表現だ」(The Atlantic誌【2020年12月号】より)と述べている。

「主人公はシステムに勝てない」という構造が立ちはだかる【画像:Netflix公式YouTubeより】
「主人公はシステムに勝てない」という構造が立ちはだかる【画像:Netflix公式YouTubeより】

 ヤキ氏の言う「システム」は組織・権力・社会のいずれかと置き換えることもできそうだが、まさにこの“対システム”は『鳴潮』でも問われ続けている。

 最も顕著だったのはVer.1.3のブラックショア編だろうか。本作において、世界の崩壊現象は「悲鳴」と呼ばれ、巨大な演算装置「テティスシステム」がそれに対抗するために孤島(ブラックショア)の地下深くで稼働し続けている。

 悲鳴を予測して未然に防ぐためには、“より正確な悲鳴をシミュレーションしなければならない”という性質のため、諸刃の剣といって差し支えない側面もあった。そして本来なら処理しきれないはずのドス黒いエラーデータを1万年も溜め込み続けた結果、システムコードが完全に書き換わり、制御不能な熱暴走を起こす。

 ブラックショアの管理者であり、テティスシステムのコア(核)でもあるショアキーパーは、その“フェイタル(致命的な)エラー”に対処すべく、自身もろとも消し去ろうと試みる。そこでその犠牲を拒否したのが、漂泊者(主人公)だった。

 システムが失われると、いつ、どこで、どれほどの規模の災厄が起きるのかが一切分からなくなり、各国は対策や避難誘導を行う間もなく、突発的な滅亡の危機に晒されることになる。それでも、漂泊者はショアキーパーを取り戻した。

『鳴潮』主人公はショアキーパーを救い出した【画像:(C)KURO GAMES】
『鳴潮』主人公はショアキーパーを救い出した【画像:(C)KURO GAMES】

 ルーシーやデイビッドに比べれば、漂泊者は「勝てている」。記憶を失った状態で目覚めて以降、超然的な力でブラックショアを含めた様々なコミュニティや地域を救ってきた。各地で暗躍する残星組織(フラクトシデス)の陰謀を打ち倒し、絶望的な状況から何度も立ち直っている。遠い存在に見える瞬間は確かに多い。

 だが、記憶以外にも多くのものを失っているのもまた事実だ。Ver.3.1の第3章3幕の中で、漂泊者は明確に諦観を示している。

「俺は空から降ってきた救世主なんかじゃない。待ってるだけじゃ救世主は現れない。これまで、俺の力が足りなかった時、どうにもならない犠牲が出ることもあった」

 先のブラックショアでも多くの犠牲を出しており、現行のVer3.0〜3.3でも間欠的に喪失を経験している。

『鳴潮』主人公も多くの喪失を経験している【画像:(C)KURO GAMES】
『鳴潮』主人公も多くの喪失を経験している【画像:(C)KURO GAMES】

“あなたか、世界か”という、かつてのセカイ系的オルタナティブは、今日も深く息づいている。そして『サイバーパンク:エッジランナーズ』および『鳴潮』に関して言えば、世界側に自分も含まれていることを強調しておくべきだろう。

 第一にあなたを救い、結果的に世界(と自身)も救われた。あるいはあなたを救う、それ以外は度外視。といった具合だ。エッジランナーズのクライマックスで、デイビッドは「母さんもメインも守れなかった。でも君だけは守りたいんだ」と言ってルーシーのために決死の行動に出ており、ルーシーはストーリーを通じてデイビッドをアラサカの手から守っていた。いわば、お互いがお互いの救世主だったのだ。

 関係性は異なれど、『鳴潮』で同じように命を捧げ合っていたのが、漂泊者とエイメスである。文字数の関係でこちらの詳細は割愛するが、該当シナリオ実装のVer.3.1リリース後に発表されたムービーのタイトルが「あなたと私」で、その動画内で使われている楽曲の名前は「Me and You」。それ以上に大事なものはないと言わんばかりだ。

『鳴潮』カットシーン「あなたと私」より【画像:(C)KURO GAMES】
『鳴潮』カットシーン「あなたと私」より【画像:(C)KURO GAMES】

『鳴潮』の群像劇にあてられたプレイヤーは『サイバーパンク:エッジランナーズ』を深く愛せるかもしれないし、その逆もまたしかりである。登場人物たちの相性も良さそうで、誰かのために命を賭したルーシーとエイメスは友達になれそうだし、“待ち続ける女”という意味ではレベッカとショアキーパーも気が合いそうだ。

 何より『鳴潮』の本気度が凄まじい。何年も前から決まっていたのではと推察できるほどコンテンツ量が多く、ルーシーとレベッカがソラリスに招かれるだけでなく、ナイトシティをゲーム内に作ってしまった。

 その再現度と執念すら感じるクリエイティビティは、双方のファンを大いに驚かせている。

『鳴潮』側のコラボへの本気度は非常に高い【画像:(C)KURO GAMES (C)2026 CD PROJECT S.A.】
『鳴潮』側のコラボへの本気度は非常に高い【画像:(C)KURO GAMES (C)2026 CD PROJECT S.A.】

 ポンスミス氏はかつて、「サイバーパンクとは世界を救うことではなく、自分自身を救うことだ」とも語っていた。これは文字通り、“自分自身”なのだと思う。あなたが救われることこそ、私の救い。

 ルーシーは月へ向かい、漂泊者は今日も誰かのそばに立つ。異なる2つの物語が、2026年にソラリスで交差する。システムに抗い、誰かのために命を削った者たちのストーリーは、どの時代に生まれても、どの世界を舞台にしても、同じ問いへと帰着していくのかもしれない。あなたにとって、その問いはどんな顔をしているだろうか。

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