「本当に6人も乗れるのか?」ボタンもシフトレバーもない…新型テスラ、豪雨の試乗で感じた実力
正直に言えば、大雨の日の運転なんて勘弁してほしい。視界は悪い。路面は濡れている。ブレーキもアクセルも、いつもより少し慎重になる。ましてや、初めて乗る車ならなおさらだ。ところが、この日試乗した6人乗りの新型車「Model Y L」は、その不安を少しずつ和らげていった。静かさ、見晴らし、加速、そして雨の日の安心感。悪天候だからこそ、晴れた日だけでは分からないこの車の一面が見えてきた。テスラの新しい6人乗りSUVは、ミニバンではない“ファミリーカー”になり得るのか。大雨の東京で、その走りを確かめた。

「本当に6人も乗れるのか?」Model Y Lに感じた第一印象
正直に言えば、大雨の日の運転なんて勘弁してほしい。視界は悪い。路面は濡れている。ブレーキもアクセルも、いつもより少し慎重になる。ましてや、初めて乗る車ならなおさらだ。ところが、この日試乗した6人乗りの新型車「Model Y L」は、その不安を少しずつ和らげていった。静かさ、見晴らし、加速、そして雨の日の安心感。悪天候だからこそ、晴れた日だけでは分からないこの車の一面が見えてきた。テスラの新しい6人乗りSUVは、ミニバンではない“ファミリーカー”になり得るのか。大雨の東京で、その走りを確かめた。
進化を続ける電気自動車(EV)に、また一つ新たな選択肢が加わった。米EV大手テスラが今年4月から日本で展開している「Model Y L」は、同社の人気SUV「Model Y」をベースにした3列シート6人乗りの新型車だ。
試乗当日の東京は、朝から本降りの雨に見舞われていた。最大1時間降水量は15.0ミリ。たたきつけるような雨で服も靴も濡れ、試乗前から気分は重かった。
会場に到着すると、担当者が出迎えてくれた。初めて目にするModel Y L。全長は4970ミリ、全高は1670ミリ。横幅は通常のModel Yと大きく変わらない一方、後方を伸ばすことで3列目と荷室の余裕を確保したという。印象は“大きなミニバン”というより、あくまでテスラの新型SUV。3列シート車にありがちな生活感の強さは薄く、長くなったボディーも不自然には見えない。
「本当に6人も乗れるのか?」。そんな疑問を持ちながらドアを開けて乗り込むと、その開放感に驚いた。2列目は独立したキャプテンシートで、左右のシートの間には通路があるため、中央をそのまま通って3列目に移動できる。座った時の見晴らし、車内全体の開放感は想像以上だった。
運転席に座ると、目の前には横長の16インチセンタータッチスクリーンがある。物理ボタンはほとんど見当たらない。エンジンをかけるボタンも、シフトレバーもない。スマートフォンが鍵になり、シートベルトを締めてブレーキを踏むと、車はもう走り出せる状態になる。
最初は少し戸惑う。従来の車に慣れているほど、「あれ、どうやって動かすんだろう」と探してしまう。だが、数分触っていると、考え方そのものが違うことに気づく。
これは、車というよりスマートフォンに近い。古いガラケーから初めてiPhoneに替えた時のような感覚と言えば近いだろうか。最初はボタンの少なさに戸惑うが、慣れてくると、むしろ余計な動作を減らしていることが分かってくる。

大雨だからこそわかった、Model Y Lの“本当の実力”
いよいよ走り出す。雨はまだ強く、ワイパー越しの景色は重い。路面の白線も見えづらく、初めて乗る車としては自然と肩に力が入る。
だが、アクセルを踏んだ瞬間、その緊張は少し薄れた。3列シートのSUVと聞いて想像していた鈍さはない。静かなままスッと前へ出て、アクセルを離せば回生ブレーキで自然に減速する。踏めば進み、離せば落ち着く。その動きが分かりやすい。
担当者は「踏んだら走る、離せば止まるので、運転が苦手な方からも好評です」と話す。大雨の日の運転で怖いのは、車が自分の思った通りに動かないことだ。だが、Model Y Lは操作に対する反応が素直で、初めての車なのに扱いにくさを感じにくかった。
もう一つ印象的だったのは、車内の静けさだ。雨粒が車体を打ち、タイヤが水をはじいているはずなのに、室内は落ち着いている。前席で普通に話す声が後ろまで届き、3列目との距離も思ったほど感じない。担当者も「3列目に座っていても、普通に会話できます」と語る。
筆者自身、兄弟が多かったこともあり、大人数で車に乗り込んだ時の声の通りづらさはよく分かる。前列では普通に会話しているつもりでも、3列目には声が届きにくい。後ろから聞き返され、前の席が少し声を張る。そんなやり取りは、3列シート車では珍しくない。
だが、Model Y Lではそのストレスが少なかった。雨の日にもかかわらず、車内は静かで、前席の会話が後ろまで自然に届く。6人乗れるという数字以上に、6人で乗った時に会話が途切れにくいことが印象に残った。
雨の日ならではの発見もあった。ナビ画面には降水レーダーが表示され、リアルタイムで雨雲の動きを確認できる。スマートフォンで見れば済むと言えばそれまでだが、車の大きな画面に自然に組み込まれていると、使い勝手はまるで違う。目的地の雨は強いのか。この先で雨雲は抜けるのか。子どもの送迎や家族旅行、荷物の積み下ろしを考えると、天気の変化を車内で把握できる意味は大きい。
乗り心地も、想像以上に落ち着いていた。Model Y Lには電子制御サスペンションが備わる。2列目、3列目にも座ってみたが、走行中の揺れはかなり抑えられているように感じた。路面には水が浮き、舗装の継ぎ目もある。それでも、車内にガツンとした衝撃が入りにくい。
担当者は「路面の凸凹に対して、瞬間的に振動を調整してくれます。段差の角を丸めてくれるようなイメージです」と説明する。たしかに、後席に座っても突き上げの角が立たない。3列目まで人を乗せる車として、この乗り心地は重要だ。
アクセルを深く踏み込むと、静かなまま車体が一気に前へ出る。反応は鋭いが、荒々しさはない。濡れた路面でも車体は落ち着いており、怖さよりも余裕の方が勝っていた。
担当者によると、雨の日など滑りやすい路面では、タイヤのスリップを検知してモーター側で出力を細かく調整するという。「滑っていることをあまり感じさせないぐらい、コントロールは得意です」。実際、大雨の中でも車体が不安定になる感覚は少なかった。
Model Y Lの車両本体価格は749万円(税込み)。決して安い買い物ではないが、ガソリン代やメンテナンス費を抑えやすいEVとしての利点を考えると、単なる高額SUVとも言い切れない。
6人で乗れて、雨の日でも落ち着いて走れる。しかも、ミニバンほど生活感は出ない。家族のためだけでなく、自分も乗りたいと思えるファミリーカーとして、Model Y Lは現実的な選択肢になり得る1台だと感じた。
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