鈴木一也氏が『女神転生』シリーズから離れたワケ 派生シリーズ『ペルソナ』への思いとは

カルト的な人気を博し、今なお多くのファンを魅了する『女神転生』シリーズ。同シリーズの世界観とシナリオを構築したのがゲームクリエイター・鈴木一也氏だ。しかし、1994年の『真・女神転生if...』以降、クレジットからその名を消す。ファンの間では長らくさまざまな憶測が飛び交ったが、真相はどこにあるのか。本人に話を聞いた。

インタビューに応じた鈴木一也氏【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた鈴木一也氏【写真:ENCOUNT編集部】

こだわりすぎたクリエイターと、内製化を目指す会社の方針

 カルト的な人気を博し、今なお多くのファンを魅了する『女神転生』シリーズ。同シリーズの世界観とシナリオを構築したのがゲームクリエイター・鈴木一也氏だ。しかし、1994年の『真・女神転生if…』以降、クレジットからその名を消す。ファンの間では長らくさまざまな憶測が飛び交ったが、真相はどこにあるのか。本人に話を聞いた。(取材・文=関口大起)

『デジタル・デビル物語 女神転生』から『真・女神転生II』まで、シリーズの黎明期を支え続けた鈴木氏。しかし、『真・女神転生if…』では企画協力としてクレジットされるに留まり、以降、シリーズのシナリオを直接手掛けることはなくなった。その背景には、クリエイターとしての性(さが)と、会社組織の論理が交差していた。

「結局、凝って時間をかけすぎるから、このまま鈴木に任せられないって評価をされたんですよ。クリエイターとして、当たり前のことをしたいというだけだったんですけどね」

 一つの設定、一つの言葉に至るまで、徹底的にこだわり抜くのが鈴木氏のスタイルだ。そのこだわりこそが『真・女神転生』シリーズの唯一無二の世界観を生み出した原動力であることは間違いない。しかし、商業作品である以上、開発スケジュールや予算という制約は避けて通れない。クオリティーを追求するあまり時間を要してしまう鈴木氏のスタイルは、組織の運営方針と必ずしも合致するものではなかったのだろう。

 もう一つの大きな要因として、鈴木氏の独立があった。『真・女神転生』の開発時、すでにアトラスから独立しており、外部から制作に参加していたのだ。

「アトラスとしては、『女神転生』を自社のタイトル、IPとして社内で作っていこうという流れもあったと思います。おそらくですけどね」

『真・女神転生』シリーズが成功し、ブランドとして確立していくにつれ、アトラスが企業として主導権を掌握しようとするのは当然のことではある。鈴木氏もそれを冷静に振り返る。そこには個人的な確執や憎悪といった感情はなく、むしろ、自身が育てたコンテンツが企業を動かすほどの価値を持ったことへの自負すら感じられた。

「思想が違う」派生シリーズ『ペルソナ』への思い

 クリエイターとしての業、独立、そして時代の変化。さまざまな要因が絡み合い、鈴木氏は『真・女神転生』の最前線から離れた。その後、シリーズは『ペルソナ』という新たな派生シリーズを生み出し、世界的な人気を獲得していく。自らが産み育てたシリーズの現在を、鈴木はどう見ているのだろうか。

「単純に、誕生に関わったシリーズがここまで続いていることがうれしいですね。ペルソナは金子(一馬)くんの世界観がすごく出ていて、メガテン(女神転生)とは思想から違います。メガテンは悪魔や神が別世界にいて、それを召喚するという考え方でした。一方、ペルソナでは、人間の無意識のイメージから悪魔が出現している」

『女神転生』がオカルト的な世界観を基盤とするのに対し、『ペルソナ』は人間の内的宇宙、心理学的なアプローチから生まれる存在を描いている。同じ悪魔や神が登場しても、その出自と解釈が根本的に異なると鈴木は指摘する。

「金子くんはもともと『ジョジョの奇妙な冒険』が大好きだったんですよ。だから、ペルソナの能力ってスタンド的なものですよね。ゲームとしてのスタイリッシュさを極めている感じもある。しかも、毎回新しいことをやってくれるので、今後にもすごく期待しています」

 クリエイターとして常に新しい表現を模索し続けてきた鈴木氏にとって、『ペルソナ』シリーズが挑戦を続ける姿勢は、手放しで評価できるものなのだろう。生みの親は、少し離れた場所から、その成長と未来を温かい目で見守り続けている。

関口大起(https://x.com/t_sekiguchi_

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください