全長45メートル、死亡事故相次ぐ横浜の踏切…廃止案を巡り市と地域住民が対立のワケ

神奈川・横浜市鶴見区の京急生麦駅近くにある全長約45メートルの「生見尾(うみお)踏切」で、先月29日、ベトナム国籍の26歳男性が電車にはねられ死亡する事故が発生した。この踏切では過去にも複数の死亡事故があり、安全性が問題視されているが、再発防止のためにどんな対策が取られているのか。市と地域住民の間では、踏切の廃止を巡る意見の対立も起こっている。

生見尾踏切では、死亡事故を受け多くの花や飲料が供えられていた【写真:ENCOUNT編集部】
生見尾踏切では、死亡事故を受け多くの花や飲料が供えられていた【写真:ENCOUNT編集部】

全長約45メートルの踏切の途中には、電車の通過を待つための待避スペースが設けられている

 神奈川・横浜市鶴見区の京急生麦駅近くにある全長約45メートルの「生見尾(うみお)踏切」で、先月29日、ベトナム国籍の26歳男性が電車にはねられ死亡する事故が発生した。この踏切では過去にも複数の死亡事故があり、安全性が問題視されているが、再発防止のためにどんな対策が取られているのか。市と地域住民の間では、踏切の廃止を巡る意見の対立も起こっている。

 事故が起きたのは29日午後11時頃。男性は踏切内の待避スペースの手前で立ち止まっていたとみられている。事故から6日後の今月4日、現場を訪れると、多くの花や飲料が供えられていた。近隣に20年近く住む男性は、事故当時の状況を「消防車やパトカーがたくさんいました。また事故が起きたのかと思いましたが、パニックにはならなかった」と話した。

 生見尾踏切は、東海道線、京浜東北線、横須賀線の上下計6線をまたいでおり、8本の線路が通過している。全長約45メートルの踏切の途中には、電車の通過を待つための待避スペースが設けられており、赤色(車用)と緑(歩行者・自転車用)に塗装された線路上と色分けがされている。また、踏切周辺には「電車はすぐに止まることができません」という音声ガイダンスが流れ、安全を呼びかけている。

 生見尾踏切を通る車両は1日約400台、通行人は約4000人。踏切を挟んだ両側には飲食店など約80店が立ち並ぶ商店街があり、駅に向かうサラリーマンや学生、高齢者などが日常的に利用している。通行する人の安全を見守るため、平日の日中から夕方には警備員2人を配置。取材時にも高齢の女性が踏切を渡りきれず、遮断棒が下りてしまい、警備員によって助け出される瞬間があった。

 踏切のすぐ先には生麦駅とつながる歩道橋があるが、エレベーターが1か所しかなくスロープもないため、年配の人や足の不自由な人の多くは踏切を利用しているのが現状だ。杖をついて歩く70代男性は「バリアフリーになっていないから踏切を渡っている」と話す。また、シルバーカーを使って歩く高齢女性は「生見尾踏切を時間内に渡りきれないから反対側には行かない」と話した。

 横浜市は歩道橋へのスロープの設置を検討していたが、「スロープ自体の重さ等により、橋の耐力が持たないことから、現在の構造では対応が難しい状況です。今後、修繕などのタイミングに合わせて、スロープが設置できる構造への変更を検討していきます」としている。

 また、市では過去の死亡事故を踏まえ、生見尾踏切を廃止し、バリアフリー対応の歩道橋を新設する方針も打ち出しているが、地元住民から反対の声が上がり、着工には至っていないという。横浜市道路局建設部の担当者は「昔から存在する踏切がなくなることへの不安や、周辺が商店街であることから人の流れが変わることへの懸念があります」と地域住民の声を説明しつつ、再発防止の対策として「一番の対策としては生見尾踏切を廃止して橋をかけたい」と理解を求めている。

次のページへ (2/2) 【写真】事故現場の「生見尾踏切」の全体図
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