桜庭和志が激白 なぜ観客目線に立てたのか 生きたプロレスの経験

桜庭和志が「見る側」に立てたことは奇跡!?

――しかし桜庭さんが「見る側」に立ったって言うけど、実はそれってなかなかできないことですよね。

ターザン「奇跡ですよ!」
 
桜庭「僕はプロレスもやっているから、やっぱりお客さんのことも考えないといけないので。もし自分だけのための競技をやっていたら、そういう考えにはならなかったと思います。それと見る人を増やして行こうとしたら、やっぱり面白くしないといけないけど、寝技は見ている人には面白くない。でも、ルールを変えたら絶対に面白いよなーって。この2年間でルールは4、5回は変えて来ましたしね」

――4、5回も!

ターザン「打撃の持つアングロサクソン的な、動的な世界に対して、寝技というのは静的な、静かなる格闘技じゃないですか。寝技という間合いゼロの中で闘うと、なぜかお互いが理解し合うことになるんだよね。理解し合う関係の中から、お互いに対する尊敬の念も生まれるけど、打撃だとそうはいかないもんな」

桜庭「打撃は脳を破壊する世界だから、負けているのに『俺、負けていない』ってなるけど、グラップリングの場合は『負けました』って自分から負けを認めるので、何も文句を言わないんです」

ターザン「それ、日本人的な美意識の世界で、それこそ『武道』なんですよね」

桜庭「しかもアマチュアの『QUINTET』になると、大会が終わったら別のチームの人と飲みにいくんです」
 
――敵同士だったのに、ノーサイドの関係になるんですね。

桜庭「スキンシップっていうんですかね」

ターザン「肌が触れ合うことで相互理解を深めるんですよね。それが『武道』なんですよ。ところが打撃の場合は、相手を潰す、という考えになる。そういう日本発の世界が見えてくると、『UFC』に対抗するものとして、すごく対立構造ができて、いいね、これ!」

桜庭「いやいや、『UFC』と対立はしないですよ。一緒にやっているんです(笑)」

ターザン「いやいや、実際に対立するんじゃなしに、価値観として対立するというか、美意識として対立していくんです」

桜庭「あー、はいはいはい(とニコリ)」

――天邪鬼の両雄が美意識の対立をしています(笑)。

ターザン「あのね。要は時代性がそこにあるかどうかなんですよ。『見る側』『やる側』『語る側』のそれぞれに立った時、21世紀の格闘技はどうあるべきか。今の話を聞いた時に(時代性が)あるなと思ってスイッチが入ったよ! 興奮しましたよ、今日!!」

桜庭「時代性があるので、今の時代はフェイスブックやツイッター、インスタやYouTubeでも宣伝できますから、今日の取材はなしでお願いします(笑)」

□桜庭和志(さくらば・かずし)1969年7月14日、秋田県出身。中央大学レスリング部出身。92年UWFインターナショナル(Uインター)に入門。「PRIDE」のリングでグレイシー一族を次々と撃破し、「グレイシーハンター」の異名を取る。2014年には「UFC」の殿堂入り。18年春より「QUINTET」を立ち上げ、現在に至る。10月27日には後楽園ホールで今年最初の大会が開催される。

次のページへ (4/4) 「QUINTET」旗揚げ戦から参戦している石井慧
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