東村アキコ氏、想定外の連ドラ監督初挑戦「本当に過酷だった」 漫画家ならではの着眼点

ABEMAオリジナルドラマ『バカンスの法則』が、7月27日から配信される。本作では、漫画家・東村アキコ氏が自身初となる連続ドラマの原作・脚本・監督を務める。多忙な日々に疲弊した主人公・星野緑(橋本環奈)が、海辺の別荘で過ごす“非日常のバカンス”の中で、ミステリアスな管理人・西上(チェ・ジョンヒョプ)と出会い、恋に落ち、人生の大切な時間を取り戻していく本作。初監督にも挑んだ東村氏に、制作の裏側や作品に込めた「休むこと」への思いを聞いた。

初監督に挑んだ『バカンスの法則』への思いを語った東村アキコ氏【写真:増田美咲】
初監督に挑んだ『バカンスの法則』への思いを語った東村アキコ氏【写真:増田美咲】

監督挑戦の裏側「気付いたら全話やる流れに」

 ABEMAオリジナルドラマ『バカンスの法則』が、7月27日から配信される。本作では、漫画家・東村アキコ氏が自身初となる連続ドラマの原作・脚本・監督を務める。多忙な日々に疲弊した主人公・星野緑(橋本環奈)が、海辺の別荘で過ごす“非日常のバカンス”の中で、ミステリアスな管理人・西上(チェ・ジョンヒョプ)と出会い、恋に落ち、人生の大切な時間を取り戻していく本作。初監督にも挑んだ東村氏に、制作の裏側や作品に込めた「休むこと」への思いを聞いた。(取材・文=堀タツヤ)


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――本作は東村さんが原作・脚本・監督まで務められていますが、今回の企画はどのようにスタートしたのでしょうか。

「以前からABEMAさんとはいろいろとお仕事をさせていただいていて、何年も前から『ABEMAでいつかドラマを作りたいので、その時はストーリーを考えてもらえませんか』というお話はいただいていたんです。でも、私もなかなか時間が取れないこともあって、実現していませんでした。ただ、数年前から漫画で描きたいと考えていた話があって、それをドラマにしましょうということになりました。若手の脚本家の方にも何人か入っていただいて、私の頭の中にあった原作を脚本にしていきました」

――当初から監督も務める予定だったのでしょうか。

「そんなことはなくて、脚本が出来上がって『終わった!』と思っていたら、『これは東村さんが監督をやらないと世界観が出せないかもしれない』と言われて。当初は『最初の3話だけでも監督をやってもらえませんか』というお話だったんです。もともと現場には行こうと思っていたので、『それなら』と言っていたんですけど、気付いたら全話やる流れになっていて(笑)。結局、全18話を監督することになりました」

――これまでご自身の作品が映像化されることは多くありましたが、自ら監督を務めるのは初めてですよね。

「監督をやりたいと思ったことは、一度もなかったんです。漫画という自分の表現方法がありますし、自分の漫画が映像化された時も、基本的には『お任せします』という感じで。監督は責任重大すぎて、やりたいと思ったことはありませんでした。実際にやってみたら、体力的にもスケジュール的にも本当に過酷でした。皆さん、こんなに大変なことをやっているんだと実感しましたね。スタッフの皆さんが新米監督の私を支えてくださって、なんとか乗り切れたという感じで、映像の現場で働く方々へのリスペクトがすごく深まりました」

――漫画家としての経験が役に立ったところもありましたか。

「カット割りや映像の構図、例えば、背景をどれくらい入れるのか、人物をどれくらいの大きさで置くのか、ということを決めていくのは、漫画と同じなんです。だから現場で迷うことはありませんでした。編集段階でも、頭の中に完成図があるので、それに向かってどんどんつないでいく感じでした」

――判断が早いんですね。

「撮影では現場が押すのがすごく嫌だったんです。俳優部の皆さんも予定通り帰してあげたいし、スタッフの皆さんにも若い方がたくさんいるので、ホワイトな職場じゃないとダメだと思って。だから、感覚を研ぎ澄ませて、なるべく迷ったり、変更したりすることを少なくしようとは心掛けていました。メイクさんやスタイリストさんには『この現場は終わるのが早くていい』と言われましたね」

出演者への印象も明かした【写真:増田美咲】
出演者への印象も明かした【写真:増田美咲】

コロナ禍で変化した働き方「自分の時間も大事だなと考えるように」

――キャストについてもお伺いしたいのですが、橋本環奈さんと現場でご一緒されていかがでしたか。

「環奈ちゃんは、作品の世界観をすごく分かってくださっていて、私の思う通りの緑でした。脚本の時点で『ここは書き込みが足りないかもしれない』と思っていた部分も、アドリブやお芝居で埋めてくれました。その姿を見て、本当にプロの技だと思いましたね。自由にやってくださった部分が作品を豊かにしてくれたので、本当にありがたかったです。ほかにも、勝地涼さんやキャストの皆さんのお芝居から、偶然生まれた面白い瞬間がたくさんありました」

――チェ・ジョンヒョプさんについてはいかがでしょう。

「ジョンヒョプさんは、役をすごく真面目に作り込む方で、撮影の直前にも『ここはこうしたほうがいいんじゃないか』『こうしてみたいんです』と、たくさん提案してくださって、それがすごく印象的でした。自分でもいろいろクリエイティブできるタイプの方なんだなと思いましたね」

――本作には「人生にはバカンスや休む時間が必要」というテーマがあります。今、このテーマを描きたいと思った理由は何だったのでしょうか。

「きっかけとして大きかったのは、コロナ禍でいろいろなことを見つめ直したことです。コロナの直前に、アシスタントさんたちと一緒に、海の近くの中古の一戸建てを買いました。コロナ禍の間はお店もやっていないし、食事会や講演会も全部なくなったので、そこで仕事をして、夜はみんなでお酒を飲んだりして過ごしていました。それまでは、育児もありましたし、仕事もずっと走り続けてきたので、立ち止まって考える時間がなかったんです。でも、その時に初めてゆっくりした日々を過ごして、自分の人生について考える時間ができました。そこで思いついたのが今回の物語だったんです」

――コロナ禍を経て、働き方や休み方への考え方も変わりましたか。

「変わりましたね。漫画家はコロナ禍でリモートワークを導入した方が多いと思うんですけど、私もアシスタントさんたちとクラウドで原稿を受け渡ししながら仕事をするようになって。直接『もっとこうして』と教えることはできなくなったので、難しさもありましたけど、それでも楽になる部分は大きいと思うようになりました。アシスタントさんたちも通勤がない方が楽そうですし、自分の時間も大事だなと考えるようになったんです」

――現在は、どのように休みを取られているんですか。

「もともと土日祝日は私もアシスタントさんたちも休みにするというルールで、20年以上やっています。あと、子どもが生まれてからは、毎年8月は漫画の休みをもらって、子どもと過ごすようにしています。

 若い頃は、休まずにずっと仕事をしている方がかっこいいと思っていましたけど、日々の仕事の思い出って、あまり残っていないんですよね。でも旅行に行った思い出は残っているんです。例えば、アシスタントさんたちとも、『あの時の締め切りは大変だったよね』とはあまり話さないけど、『みんなで旅行に行った時、こうだったよね』という話はずっとするんです。もちろん漫画を描いている時間も充実しているんですけど、人の記憶って、結局、旅行や遊んでいる時のものが強く残るんだなと思うようになりました」

――そんな思いが込められた作品ですが、最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。

「本当に監督をやりました。お飾りではなく、カット割りから衣装、美術まで、細かいところまで関わらせてもらいました。時には、こっそり居眠りしているところを助監督に起こされながら(笑)、スタッフの皆さんに支えてもらいながら、チームで作った作品です。

 私の漫画を読んでくださったことがある方には、ぜひ見てほしいです。私の漫画がそのまま映像になっているような作品に仕上がっていると思います。見ていただいて、元気になってもらいたい。そんな思いで作った作品です」

□東村アキコ(ひがしむら・あきこ)1975年10月15日、宮崎県生まれ。『海月姫』『主に泣いてます』『東京タラレバ娘』『美食探偵 明智五郎』『偽装不倫』など、映像化された作品も多数。『かくかくしかじか』の映画化では脚本も手掛けた。本作『バカンスの法則』で、自身初となる連続ドラマの原作・脚本・監督を務める。

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