家賃5万円代、月収20万円を超えたらガッツポーズ…苦節17年の40代トリオが明かす切実な懐事情

昨年の『キングオブコント2023』で、2年連続となる決勝進出を果たしたお笑いトリオ・や団。本間キッド、中嶋享、ロングサイズ伊藤からなる結成17年目の中堅トリオは、同事務所のM-1王者・錦鯉に続く活躍を期待される、ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)生え抜きのネクストブレーク候補だ。ハリウッドザコシショウややす子など、個性派ぞろいの事務所において“正規軍”と呼ばれる彼らは、現状をどう捉えているのか。本音を聞いた。

個性派ぞろいの事務所において“正規軍”と呼ばれるや団【写真:ENCOUNT編集部】
個性派ぞろいの事務所において“正規軍”と呼ばれるや団【写真:ENCOUNT編集部】

キングオブコントで2年連続ファイナリストに進出した中堅トリオ・や団

 昨年の『キングオブコント2023』で、2年連続となる決勝進出を果たしたお笑いトリオ・や団。本間キッド、中嶋享、ロングサイズ伊藤からなる結成17年目の中堅トリオは、同事務所のM-1王者・錦鯉に続く活躍を期待される、ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)生え抜きのネクストブレーク候補だ。ハリウッドザコシショウややす子など、個性派ぞろいの事務所において“正規軍”と呼ばれる彼らは、現状をどう捉えているのか。本音を聞いた。

――キングオブコントでは2年連続でファイナリストに、手応えは。

本間「去年は優勝する気満々だったんですけど、完全に計算が狂いました。人生っていうのはそううまくはいかないなと。1年目は決勝に出られてうれしい気持ちの方が強かったんですけど、去年はこれで(決勝に)行けてなかったと思うと、ぞっとするなという感じ。2年連続で決勝に行けたことで、マグレじゃなかったんだとか、ネタはいっぱい持っているんだなとか、1年目を再評価される部分もあると思うけど、もし出られてなければあとはもう忘れられるだけなので。何とか生き延びられたな、みたいな」

中嶋「僕はうれしさと悔しさがちょうど50:50くらい。ほっとした部分もあるし、悔しい部分もあって、感情の持っていき方が分からない感じ」

伊藤「僕はもう、“やっぴー!”って感じです。3番手の時点で3位で、下手したらビリもあるぞと思っていたら、結局8番目まで(上位3組のファイナルステージ進出)暫定ボックスで粘って。けっこうテレビにも映れましたし、あれはやっぴーですよ」

本間「3組目で3位だからさっさと落ちるかと思ったら、意外に残るもんだからだんだん希望が見えてきちゃって。おい、ファイナル行けるんじゃねえか? みたいな」

中嶋「ちょこちょこカメラで抜かれることもあるから、何か気の利いたことも言わなきゃいけないし、気は抜けなかったです」

――世間からの見られ方に変化は。

本間「自分たちとしてはもっとポップな芸人のつもりでいるんですけど、なんか職人かたぎの頑固じじいみたいなイメージがついているんです。コント職人というか……。テレビ局の人とか接点の少ない芸人仲間から『ネタだけしたい人たちなんでしょ』みたいに言われることもある。僕たちとしては、街ブラとか食レポとか、熱湯風呂で体を張ったりとかもしたいんですけど」

伊藤「ただ単純に呼ばれなかっただけなのに、ネタ番組ぐらいしか出てなかったから、なぜか仕事を選んでると思われてるんです。(事務所の後輩の)やす子みたいな仕事もしたいですよ。『はい~!』って言ってるだけでいいんだから」

中嶋「それは失礼だろ!(笑)」

伊藤「僕らから見ると全然後輩で、子どもと言ってもおかしくないくらいの年だから、かわいいんです。売れてから、会うたびにちょっとずつあか抜けて大人びている感じがするんです。昔はオドオドしていたのに、今は周りのスタッフさんに『や団さんっていって、すごく面白いんですよ~』ってセールスまでしてくれたり」

中嶋「一度営業先で一緒になって遊ぼうってなったときに、稼ぎがまったく違うからちょっとお金を払うのをためらいましたね……。絶対あっちの方が稼ぎいいだろって。お互いの懐事情も知っているから、あっちもいいですって言うんですけど、さすがに先輩として払わせてくれって」

本間「お笑い界全体で、僕らの稼ぎの少なさがバレ始めてきてる」

中嶋「僕が(モグライダーの)ともしげに言っちゃうんです。あいつが会うたびに月収を聞いてきて、教えるとラーメンおごってくれるから(笑)」

本間「僕もお見送り芸人しんいちと仲が良くて、他事務所の後輩なのにいつも心配して飯をおごってくれる。車で来るからいつも僕ばっかり飲んでいて、酔っぱらって給料とか全部話しちゃったら、ラジオで全部暴露しちゃって。芸人全員、後輩だろうが他事務所だろうがみんなおごってくれますよ。ここ何か月か財布を出した覚えがない。ハングリー精神? それがないんですよね(笑)。今はしょうがねえよな、稼げるようになったら出世払いで返すからって」

40代トリオのリアルな収入事情は「月収20万円を超えたらガッツポーズ」

――実際のところ、リアルな収入事情は。

本間「ブッコミますね(笑)。なんて言おうかな……一人暮らしの独身男性がギリギリ1か月乗り切れるかどうかくらい?」

中嶋「3人とも、月収20万円を超えたらガッツポーズしています。この前久しぶりに超えて、3人のグループLINEがお祭り騒ぎでした」

本間「みんな独身だし、なんとか暮らせてはいるんですけど。僕は東高円寺の築40年の木造アパートで、8畳で家賃5万8000円。少し傾いているから、キッチンと居間の間の開き戸が自動で閉まる。自動ドア付きの物件ですよ(笑)」

伊藤「僕も木造アパートの1階で、7~8畳くらいで家賃5万5000円。大家さんが2階に住んでいて、すごく良くしてくれるんです。コロナで一歩も外に出られないときに大家さんに携帯でショートメールを送ったら、薬とかドアノブにかけてくれて。それからちょくちょく連絡を取り合うようになって、『洗濯物また取り込んでないわよ』とか母親みたいな感じになってきて……。今ではちょっとうっとうしいです(笑)」

――ハリウッドザコシショウを中心とした「ハリウッド軍団」のメンバーとして、交流も深い。

本間「ザコシさんにもよくおごってもらっていますけど、や団自体は厳密にはハリウッド軍団ではないんです。SMA立ち上げ当初に、男ウケするようなキワモノ系の人たちが集まって結成したのがハリウッド軍団。対する僕らは『正規軍』って呼ばれていて」

中嶋「フリのある正統派のネタをする芸人が正規軍、そこに当てはまらないフリースタイルの芸人がヒール役のハリウッド軍団に別れて、毎回ライブで対決していたんです。そしたらハリウッド軍団からどんどんチャンピオンが生まれて、気づいたらそっちが正規軍みたいになってた」

――以前のインタビューでは、ハリウッドザコシショウが「もうSMAから優勝レベルの芸人は出ない」とも話していた。

本間「そのインタビュー、見ました。そう言われて黙ってられるかと、その言葉をモチベーションに頑張っている。……正直図星な部分もあったし、シショウの言いたいこともよく分かる。自分の持っている武器を全力で出せというのがシショウの教えで、それをやり通した錦鯉さんが優勝して、果たして自分たちはそこに続けるのかと」

中嶋「お笑いに関しては正論しか言わないんですよ……」

本間「本当にあの人はお笑いに対して真摯(しんし)で、どんなに嫌いな芸人でも面白いものは面白いと認めるし、逆に僕らみたいに仲良くしてもらっている連中にも、つまらないものにはつまらない、それじゃ勝てないよとアドバイスしてくれる人。ザコシさんが面白いって言ってくれるときは自信になるし、『お前の面白いところ全然出てねえじゃん』って言われたとしても、それはそれですごく道しるべになりますね」

□本間キッド(ほんま・きっど)、本名=本間徹哉(ほんま・てつや) 1982年12月23日、埼玉県出身。お笑いトリオ『や団』のツッコミ担当。趣味はプロレス観戦、特技は格闘技全般。『キングオブコント』では22年に決勝3位、23年に決勝5位。

□中嶋享(なかしま・とおる) 1982年6月23日、埼玉県出身。お笑いトリオ『や団』のボケ担当。趣味はラーメン屋めぐり、特技はバスケットボール。『キングオブコント』では22年に決勝3位、23年に決勝5位。

□ロングサイズ伊藤(ろんぐさいず・いとう)、本名=伊藤和希(いとう・かずき) 1981年3月22日、神奈川県出身。お笑いトリオ『や団』のボケ担当。趣味はスポーツ全般、特技はハーモニカ。『キングオブコント』では22年に決勝3位、23年に決勝5位。

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