佳境の「いだてん」…大河初の外部演出家・大根仁が描く「前畑がんばれ」撮影秘話

「いだてん」【写真提供:NHK】
「いだてん」【写真提供:NHK】

――「頑張れ」という言葉をどのようにとらえて撮影していましたか

「前畑がレース前に、どういう風に『頑張れ』という言葉を受け入れたのか、飲み込んだのか。脚本にあえて書かれていない気がしたんです。宮藤さんの脚本はこういうところを見つけられるかどうかが勝負。ですから、ここはもう少し、この回のテーマとなる『頑張れ』という言葉が生き生きとしてくる展開がつけられるのではないかという思いから、演出を足していきました」

――第36回は大根さんが担当しましたが、第37回はNHKの井上剛さんが演出を担当しています。

「『いだてん』に参加した時に井上さんと話したのは、何回か“共同演出”をやろうと言っていて、1話の中に複眼的な演出が入ってくるのが、新しいのではないかということでした。それぞれ得意分野を撮って最終的にミックスさせる回ができたらいいなと思っていたんです。第36回は、ベルリン五輪が終わって、東京でのシーンが始まるところは、次の第37回に直結しています。ここは井上さんが撮ったほうがいいと思い、第36回の台本のラスト10ページは井上さんに任せるという“演出”をしています。井上さんが撮ったものを、僕が編集でつないでいます」

――共同演出の手ごたえはいかがですか。

「(第36回は)僕が思い描いていた理想の回だったかなと思います。コメディ要素があり、シリアスな要素もあり、スポーツ競技があり、女性スポーツの描写があり、大河ドラマらしい時代に飲み込まれていく重い感じも最後に描けた。“自分なりの理想形”ができたのではないかと思います」

□大根仁(おおね・ひとし)1968年12月28日、東京都生まれ。50歳。テレビ演出家、映画監督として、これまで数々の作品を手掛ける。2010年、テレ東ドラマ「モテキ」がヒットし、映画化もされた。主な作品に映画「バクマン。」(2015)、「SCOOP!」(2016)などがある。

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