佳境の「いだてん」…大河初の外部演出家・大根仁が描く「前畑がんばれ」撮影秘話

NHK大河ドラマ「いだてん」がひとつの佳境を迎えている。22日放送の第36回「前畑がんばれ」では、水泳の前畑秀子(上白石萌歌)が1936年のベルリン五輪で、日本人女性初の金メダルを獲得する瞬間を描いている。実況中継では、アナウンサーの河西三省(トータス松本)が「前畑、がんばれ!」を連呼。日本中に感動を伝えた。これまで女性スポーツを取り上げてきた同番組にとって、そのハイライトとも言える回だ。演出を担当したのは、NHK大河ドラマでは初の外部演出家となる映画監督の大根仁氏(50)。映画「モテキ」や「SCOOP!」などを手掛けた監督が、どのような思いで「前畑がんばれ」を撮ったのか。聞いてみた。

「いだてん」【写真提供:NHK】
「いだてん」【写真提供:NHK】

大根仁監督インタビュー 大反響だった人見絹枝の回も担当

 NHK大河ドラマ「いだてん」がひとつの佳境を迎えている。22日放送の第36回「前畑がんばれ」では、水泳の前畑秀子(上白石萌歌)が1936年のベルリン五輪で、日本人女性初の金メダルを獲得する瞬間を描いている。実況中継では、アナウンサーの河西三省(トータス松本)が「前畑、がんばれ!」を連呼。日本中に感動を伝えた。これまで女性スポーツを取り上げてきた同番組にとって、そのハイライトとも言える回だ。演出を担当したのは、NHK大河ドラマでは初の外部演出家となる映画監督の大根仁氏(50)。映画「モテキ」や「SCOOP!」などを手掛けた監督が、どのような思いで「前畑がんばれ」を撮ったのか。聞いてみた。

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――水泳のレースを撮影した時に意識したことを教えてください。

「『いだてん』では1932年のロス五輪以降、水泳のシーンが多くて。『いだてん』の前半で多かった走るシーンは、背景が流れたり、表情を見せたり、まだ作れる部分がありました。でも、水泳は、基本同じコースをずっと泳いでいて、汗もかかないし、表情も見えにくいんです。そこをどう速く力強く泳いでいるように見せるかが難しかったです」

――前畑秀子役の上白石さんにはどのように声をかけたのですか。

「上白石さんには『まず、体を作ろう』と言いました。本人もキャスティングが決まった時に『自分の線の細さは、とても金メダリストには見えない』と言っていて、自ら肉体改造をして頂きました。撮影現場ではとにかく、『頑張れ』しか言えなくて、撮りながら『頑張れ、頑張れ』と言っていましたね。(前畑とデッドヒートを演じた)相手選手のゲネンゲル役を演じて頂いたドイツの女優さんは、実際に水泳をやっていて、大きな大会で記録を残したような方だったので、その人と拮抗するように見せるのは大変でした」

「いだてん」【写真提供:NHK】
「いだてん」【写真提供:NHK】

――大根さんは1928年アムステルダム五輪で日本人女性初のメダリストとなった人見絹枝(菅原小春)の回も担当されました。

「女子スポーツが生まれ、オリンピックに出られるところにまで発展していく。さらに、その後、1964年の『東洋の魔女』にまでつながっていくと思うんです。こうしたひとつの流れの中で、菅原さんもレースのシーンは大変だったと思うし、上白石さんも泳ぎでは、涙ぐましい努力をしてきたと思う。私がこれまで撮ってきた女優さんは恋愛描写が中心で、アスリートを描くということはありませんでした。今回、担当できて、演出家として自信につながったと思います」

――河西三省役のトータス松本さんが以前のインタビューで『実況が難しかった』と語っていました。

「今回、誰よりも追い込まれたのがトータス松本さんだったと思います。実際にプールでも撮ったんですが、トータス松本さん自身が納得するような実況ができなくて、後日、スタジオで実況ブースだけを作って、リテイクしました。さらにそれを編集して、現場でしゃべれなかったところや足したいところを足して、最後にはMAルームで再びあのテンションで実況しました。だから、3回くらい同じ実況をやっていて、『頑張れ』は1000回くらい言っていると思います。乗り出して実況する様子はミュージシャンを感じさせて、迫力がありました」

次のページへ (2/2) 「頑張れ」に込められた意味
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