社長、プロデューサーを兼ねるSKY-HI ソファで寝て起きて即仕事の日々「オンライン会議で良かった」

アーティスト、社長、プロデューサーのSKY-HI(スカイ・ハイ=36)は、今年2月に立ち上げたプロジェクト『D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-』で、事務所、グループの枠を越えた動きをけん引している。そうしたアクションの根本には、課題に対して本質から向き合うマインドがあるという。少年時代から広辞苑を愛読するなど知識欲が旺盛。睡眠時間も惜しんで動き続ける思いも聞いた。以下、インタビュー「後編」。

日本のアーティストの世界進出について語ったSKY-HI【写真:荒川祐史】
日本のアーティストの世界進出について語ったSKY-HI【写真:荒川祐史】

インタビュー・後編「『ワクワクする』をシンプルに体現したのが『D.U.N.K.』」

アーティスト、社長、プロデューサーのSKY-HI(スカイ・ハイ=36)は、今年2月に立ち上げたプロジェクト『D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-』で、事務所、グループの枠を越えた動きをけん引している。そうしたアクションの根本には、課題に対して本質から向き合うマインドがあるという。少年時代から広辞苑を愛読するなど知識欲が旺盛。睡眠時間も惜しんで動き続ける思いも聞いた。以下、インタビュー「後編」。(取材・近藤加奈子、構成・柳田通斉)

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SKY-HIは、最新の著書『マネジメントのはなし。』(日経BP刊)で、日本のエンターテインメントの現状を「うまくいかない状況に対し、あとから言い訳のように外的要因を挙げているだけのように思うんです」と指摘している。K-POPのグループが男女問わず、続々と世界進出している中、日本のグループ、アーティストを嘆く声もあるが……。

「日本って昔は『世界で活躍するスポーツ選手は出ない』みたいに言われていましたけど、僕はずっと『そのエビデンス(証拠)は?』と思っていました。『マネジメントのはなし。』でも、日本の高齢化社会とエンターテインメント界の現状を嘆く声について、僕なりに考えを明かしていますが、例えばエンターテインメントが盛んな韓国の方が出生率は少ないんです。つまり、日本には才能そのものはある方は多いはずで、『それが表に出てきていない』『活躍できないシステムの方に問題がある』と推察できる。『何事も雑なものの見方をしないようにする』『いかに課題に対して本質的に考えられるかが重要』だと思っています」

その思考は、ヒップホップカルチャーからの影響があるという。

「ヒップホップのカルチャーは物事の本質から目をそらさないことが重要視されています。そういった楽曲を聴いたり、コンシャス(意識的)なラッパーのインタビューを読み、青春時代を過ごしてきたことは大きいと思います」

中学受験を終え、早稲田実業中に入学。早大の系属校で大学受験をせずに進学できる道が開け、音楽にのめり込んでいった。

「異様な行動力がありましたね」と自身も驚く学生時代を述懐【写真:荒川祐史】
「異様な行動力がありましたね」と自身も驚く学生時代を述懐【写真:荒川祐史】

中学受験を終え、音楽にのめり込む日々「異様な行動力がありました」

「その頃は『授業が終わった後、今日は何をしよう?』っていつもワクワクしていたし、『まず渋谷に行ってみよう』というのが始まりでした。レコード店に行き、バンドをやってダンスもやって、『とりあえず、興味を持ったらやってみよう』でした。異様な行動力がありましたね」

音楽と出会い、多くの仲間たちもできた。感性を伸ばせた理由を聞くと、「人に恵まれたからです」と言った。

「ドラムの師匠がいつも次に練習する曲のタイトルとアーティスト名を教えてくれるんですけど、CDは買うなり、借りなきゃいけなかったので、ディグる(良い音楽を探す)癖がつきました。そして、見聞が広がり、ピンク・フロイドやストーンズを聴くようになり、音楽との距離が近くなりました」

良い音楽を見極めるために、大事にしたことは「情報」に惑わされないことだった。

「『至高の名作』と言われる作品で、『絶対に面白いから見た方が良い』と言われると、『面白い』と思う気持ちで見てしまうじゃないですか? 逆に『良い』と思っているのに、周りから否定されて『好き』と言えないこともあるでしょう。つまり、情報は大事だけど時にノイズになる。なので、『本質を見極めていかなきゃいけない』ということです」

先入観、偏見を排除し、今年2月からプロジェクト『D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-』を動かしている。「幾多のダンス&ボーカルグループ(アーティスト)が垣根を越えて、日本から世界に発信していく」をコンセプトにし、2月1日に日本テレビ音楽番組『D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-」(水曜深夜0時59分、関東ローカル)を開始。事務所、レーベルの枠を越えた取り組みで、30分間の放送終了後から配信もされている。また、3月には番組連動で大型ライブイベントを開催した。また、日本初の民放テレビ局が制作に入ったYoutubeコンテンツの音楽番組(5月13日配信開始、土曜午後7時)としての世界への展開も始まった。

とはいえ、「海外に届ける」ことの難しさは感じ、『マネジメントのはなし。』でも「正直、頭を悩ませている部分ではあります」と記している。海外進出への具体的な展望はあるのだろうか。

「競争がないと成長もないし、シーンがないとカルチャーも生まれない。カルチャーがないと浸透しないと本気で思っています。日本の何かしらのカルチャーがアジアのポップスとして世界で存在感を示す。その視座であればすごく可能性を感じますが、一個人、一グループがどうやって爪痕を残せるのかって話は、本質的じゃない気がします。例えば、『NASAの試験を受けてないけど、宇宙飛行士になりたい』と言っているようなもので、夢には適切なかなえ方のプロセスがあると思います。夢をかなえるには資質や才能が必要ですが、日本という国で捉えた場合、資質はすごくある状態で才能のある人が育ちやすい環境もできている。だけど、『出口だけない』という状態なので、今後は出口を作り、その数は多ければ多いほど良いと思っています」

番組、ライブのプロジェクト『D.U.N.K.』は「ワクワクするを体現」

『D.U.N.K.』をきっかけに、アジアのポップスが世界進出することも目標だが、その前提として大事にしていることがある。

「『D.U.N.K.』は番組であり、ライブもあるので、今後もいろんな人に出て欲しいです。日本は圧倒的に音楽番組の数が少ないですし、音楽コンテンツをもっと充実させる流れは必要な気がしています。手数が圧倒的に足りていないことをさまざまな会社の方々が思っているという事実が、D.U.N.K.の開催と成功を呼んだとも思っています。一口に音楽番組と言ってもBE:FIRSTがかっこいいパフォーマンスを見せる冠番組と、いろんな人が出てくる番組では音楽の楽しみ方は変わってきます。これは持論ですが、誰が出ているとかに関係なく、『どんなことが起こるのか』とワクワクするようなものは良いことしか起こらないんです。その『ワクワクする』をシンプルに体現したのが、『D.U.N.K.』です。正直、やりきれなかったことはたくさんありますので、今はこれをやり続けることが頑張りどころの1つです。また、初回であるので自社アーティストには本当に頑張ってもらってしまいましたが、これが最高の資料として今後のオファーに関わってくると思います」

1人で始めた会社BMSGを「NO.1の存在にしたい」思いもある。

「成長のきっかけはそれが一番大きいという気がしています。会社組織が大きくなっていけばいくほど、純粋なワクワクを実現させる時に自分や周囲にかかるカロリーは増えていくので、それをやれるチームやメンタリティーがないといけないと感じています。2025年まではそことの勝負かなと思っています」

かつて大学生、AAAの活動、ラッパーの三刀流だった時期がある。寝る間がなくなったことで、「履く草鞋(わらじ)は二足まで」と決め、早大を2年で中退した。だが、今は当時よりも多くの草鞋を履いている。

「1日の睡眠時間……。分からないです。昨日はベッドで寝ました。いつもはリビングで仕事をしながら、タイミングを見て寝ています。それで会議の時に起きて、そのまま参加するという感じです。でも、今は会議がオンラインになったので助かっています。じゃなかったら、この働き方は無理かも。時代に救われました(笑)」

時代に合ったエンターテインメントの革命児。今後も本質を見極め、「ワクワクイズム」で前進していく。

□SKY-HI(スカイハイ)本名・日高光啓。1986年12月12日、千葉・市川市生まれ。早稲田大社会科学部中退。2005年、AAAのメンバーとしてデビューし、同時期にSKY-HIとしてソロ活動を開始。以降、ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーと幅広く活動。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。

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