なぜ那須川天心は成り上がれたのか 才能を見出したRISE伊藤代表が“理由”激白

目指すのは格闘技村の村長か? それとも知事や総理の道か

そう考えると、自分だけではなく、自分の周囲にどれだけ柔軟な思考を持った人がいるか。そこも重要になってくる気がしてならない。

「もし自分の目の前に壁があったとして、壁しか見えなかったとしても、平気でそこを乗り超えたヤツが上に行きますよね。過去も今も。そういうのが時代をになっていく選手になりますよ。どうしてもそこを超えられない子はこじんまりしちゃう。強くていい選手なんだけど、それじゃあ世間には届かない」

ここまで話した後、伊藤代表は印象的な言葉を残した。

「そういう選手は(格闘技村の)村長にしかなれないんですよ。見ている世界が村なので(知事や総理にはなれない)。だから、もっと大きなものを見ていかなきゃいけない」

その視点は、天心の相手選びに関しても応用されている。

「天心にはキックボクシングでは相手がいない。だから天心が相手に合わせてルールを変えるべきだとか言ってくる人もいるんですけど、俺は天心とやりたいなら天心に合わせるべきだと思うんです」

事実、メイウェザー戦は天心がメイウェザー陣営の主張するルールに合わせたことで実現することができた。

「今回だって風音が天心とやりたいんだったら、自分のやってきた-53キロじゃなく、天心に合わせろと。それなのに今の選手は◯◯ありならやるとか主張してくる人もいる。じゃ、やらなきゃいいと思う。だからなかなか難しいですよね。でも、そういうのだと、結局ははじけられないと思いますよ」

令和の時代に「同門対決」をリング上に現出させたRISE。それは、元WMAF世界スーパーウエルター級王者だった伊藤代表の現役時代には考えられなかったことだという。

「僕は当時、同門に港太郎(元UKF世界ミドル級王者)がいましたけど、一緒に練習してきた仲間で、僕は同門対決は好きなタイプではなかったですね。でももしファンが望んだり、やるべきってなったら、もうファイターは最終的にはイチ個人だと思うので、そこはやらなきゃいけないこともあったでしょう。僕らの時代は基本、なかったですけど、今の時代だからこそ、こういうことがあるのかなっていう」

伊藤代表はファイターに対し、さまざまな意味で叱咤(しった)する。それはファイターの選手生命が無限でないことを知っているからだ。むしろ、身をもってそれを体現してきたからこそ、選手にはじけてほしいという意識を強く持っているのだろう。

「よく選手生命は10年って言われますけど、輝いてる瞬間ってそのうちの2、3年だと思うんですよ。そこで一気に壁を飛び越えられるヤツ、今後そういう選手が出てくるかですよね」

もちろん自然発生を待つだけではなく、伊藤代表は輝けるファイターを作りだそうとしている。「RISE魂」という「挑戦をあきらめない心」を胸に――。

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