キンモクセイ「二人のアカボシ」17年前のヒット曲に隠された栄光と挫折

ヒット曲に隠されたリスク

 これで盤石と誰しもがホッとした瞬間だったが、伊藤はこの状況に「かえって売れ線を狙い過ぎていないか?」という一抹の不安を感じたという。

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 佐々木も「キンモクセイは吉田拓郎やユーミンなどいろんな音楽が好きなメンバーが集まったバンドなので『二人のアカボシ』のようなシティーポップはバンドにとっては引き出しの1つでしかなく、だからシティーポップで売っていこうとは全然思っていなかったんです」

 伊藤「その次のシングル『七色の風』(オリコン週間ランキング14位)は、とんでもない数のミュージシャンの方々に参加頂いて、たぶんプロデューサーはここで一気に畳みかけようと思っていたんでしょうね」

 佐々木「それが思うようには売れなかった」

 伊藤「『二人のアカボシ』が、あまりにもうまく行きすぎたので、そこから、悩まされるという。ヒットの法則が見えたはずだったのに、あれ以来見えなくなった」

 バンドは、その後もアカボシのプレッシャーと向き合いながら活動を続けたが、2008年に活動休止を発表した。

「ジャパニーズポップス」のレコーディング風景
「ジャパニーズポップス」のレコーディング風景

バンド復活に隠された真実

 その後一時的にメンバーが集うこともあったが、18年、地元のイベントに偶然キンモクセイとして出演したことがきっかけで翌19年に再始動を発表。10月に配信シングル「セレモニー」をリリースした。これまでを振り返りながら新たなスタートラインに立つ、そんなバンドの決意表明のような曲だ。そして実に14年ぶりとなるオリジナルアルバム「ジャパニーズポップス」を12月25日にリリースした。

 伊藤「力配分を5等分したんです。1人2曲ずつ、メンバー全員で10曲、そして『セレモニー』を加えて全11曲用意しました。出来上がったものを並べてみたら、自然とメンバーが思い描くキンモクセイが反映されて、まるでザ・ベストテンに出てくるようなそんな曲が集まりました。それでずばり『ジャパニーズポップス』と名づけました」

 まさにキンモクセイらしい個性的でバラエティに富んだ楽曲が並んでいるが、どの曲も笑いの絶えない制作現場が透けて見えるような、そんな楽しさを曲から感じた。

 伊藤「とにかくレコーディングが楽しかったんです。昔はそんな余裕がなかったんだけど、いまはコミュニケーションがうまく取れるようになりました。みんな集まったら親父ギャグが飛び交ってますから。音楽を自然に楽しもうという、そんな気持ちの余裕がありました」

 今後キンモクセイとして活動を継続していくのか尋ねると、伊藤は「今後もこのメンバーでレコーディングしたいです。セッションもしたいですし、そこから曲ができればまたアルバムを作ろうって思えるかもしれません」

 最後にあの頃の呪縛からは解放されたのだろうか?

 伊藤「そうですね。付き合いを深めすぎて、また関係が悪くなってしまうのはもう嫌ですし、お互いを理解しているからこそ、これからは、ゆっくりと長く活動していきたいですね。やっぱりバンドが健康的で楽しくできるのが一番です」

 キンモクセイはオリジナルアルバム「ジャパニーズポップス」、そして「二人のアカボシ」が収録されたベスト盤「ベスト・コンディション+レアトラックス(完全生産限定盤)」を引っ提げて、27日下北沢GARAGEでワンマンライブを開催する。

 またオフィシャルYouTubeチャンネルでは「セレモニー」のミュージックビデオが公開されており、それを見たファンから「キンモクセイが帰って来た~!」「戻って来てくれて本当にありがとう」「ほのぼのするのに、なんか泣ける」「イトシュンの声いいなぁ」「涙が止まりません」「10年、生きててよかった」「何より嬉しかった懐かしいメロディー」「みなさん、良い大人になりましたね」「胸が熱くなりました」と読んでいるこちらも胸が熱くなるコメントが多数寄せられている。

キンモクセイ オフィシャルYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCQkDq5zTcncNImrqpjaq3QA

協力:RadiCro『成瀬英樹のPOP A to Z』

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