BTS「Dynamite」と「Life Goes On」に見る色彩とモノクロームの二項対立

世界を席巻する韓国の7人組ボーイズグループ、BTSの新アルバム「BE (Deluxe Edition)」が発売され、リード曲「Life Goes On」のミュージックビデオ(MV)も全世界同時公開された。ビルボードメインシングルチャート「HOT100」で1位となった「Life Goes On」はアコースティックギターサウンドが際立つオルタナティブ・ヒップホップジャンルの曲。MVは同グループ末っ子のJUNG KOOKが監督を務めており、メンバーそれぞれの内面がストレート、かつ飾らずに表現されている。その内面の主なものとは「寂しさ」と「恋しさ」だ。

BTS【写真:(C)Big Hit Entertainment】
BTS【写真:(C)Big Hit Entertainment】

現実には存在しない世界を描くモノクローム映像に込められた意味は“ファンとの再会”

 世界を席巻する韓国の7人組ボーイズグループ、BTSの新アルバム「BE (Deluxe Edition)」が発売され、リード曲「Life Goes On」のミュージックビデオ(MV)も全世界同時公開された。ビルボードメインシングルチャート「HOT100」で1位となった「Life Goes On」はアコースティックギターサウンドが際立つオルタナティブ・ヒップホップジャンルの曲。MVは同グループ末っ子のJUNG KOOKが監督を務めており、メンバーそれぞれの内面がストレート、かつ飾らずに表現されている。その内面の主なものとは「寂しさ」と「恋しさ」だ。

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「寂しさ」の理由は冒頭ですぐに示される。ソウル市内をドライブするVは着用していたマスクを外しながら時が止まってしまったかのような大都市の風景を眺める。場面が変わり今度は部屋の中。JUNG KOOKも同じように窓の外の風景を窓越しに眺めている。窓はまったく開けられておらず、JUNG KOOKのどこか寂しげな横顔がクローズアップされる。そこに歯磨きをしながら現れるJIMIN。どんなに苦しい困難が続いていても朝には起きて夜には寝る、という変わりない日常が続いていることを示す重要なシーンだ。RMはベランダに出て自転車のサドルをそっと指でふき、付着したホコリを息で空へと吹き飛ばす。家の中で些細な日常を送るBTSのメンバー7人がリビングや寝室に集まり穏やかで平和な姿を次々と見せるが、同時にそこには痛いほどのもどかしさが描かれている。

「恋しさ」の理由も明確だ。Vの運転する車の窓の向こうに突然、大型スタジアムが現れる。そこではBTSの公演が過去に開催されたのだろう。歓喜と熱狂で揺れたスタジアム。しかし、今そこは静まり返っている。Vの悔しげな表情にそれが如実に表れている。

「寂しさ」と「恋しさ」。切ない思いを抱えたメンバーが庭に出て思い思いに時を過ごすシーンが登場するが、実は庭は人にとって重要な役割を担っている。「庭は人々の生活の中で、活力を回復するような役割を果たすこともできる。体調が悪い時、抑圧された時、またはインスピレーションが必要な時、私たちはしばしば庭を訪れる」(※1)。さりげなく差しはさまれた映像の中にはメンバー自身の癒しと回復の時間が静かに流れている。

 このMVの特徴は切なくも心温まるストーリーということだけではない。カメラワークを見てみると高低の動きがほとんどないことが分かる。前半に登場するJUNG KOOKが窓の外の風景を眺めるシーンと、最後の無観客ステージのシーンでカメラがわずかにゆっくりと上下に動くが、それもよほど注意して見ないと気付かない。

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