「そんな型番あるわけねえだろ!」業者が怒鳴る→現場で謝罪…義父から受け継いだ希少な日産旧車、守り続けるワケ
「そんな型番あるわけねえだろ!」――。愛車のトラブルでレッカーを依頼したところ、電話口で怒鳴られたという。50代の男性オーナーが乗っているのは、義父から譲り受けた希少な日産の旧車。型式に続いて車名を伝えても、すぐには信じてもらえなかった。なぜ救援を求めた相手に疑われたのか。愛車との忘れられない出来事や、その姿を守り続ける思いを聞いた。

【愛車拝見#378】義父から継承した50年以上前の日産名車
「そんな型番あるわけねえだろ!」――。愛車のトラブルでレッカーを依頼したところ、電話口で怒鳴られたという。50代の男性オーナーが乗っているのは、義父から譲り受けた希少な日産の旧車。型式に続いて車名を伝えても、すぐには信じてもらえなかった。なぜ救援を求めた相手に疑われたのか。愛車との忘れられない出来事や、その姿を守り続ける思いを聞いた。(取材・文=平木昌宏)
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歴代の日産車の魅力に触れる「プリンスの丘 自動車ショウ」が、東京・武蔵村山市のイオンモールむさし村山「つむぐひろば」で開かれた。会場で目を引いたのが、男性の愛車「バイオレット 1400デラックス ハードトップ」だ。
1973年式で、走行距離は約4万4000キロ。50年以上前の車ながら、ほぼノーマルの姿を保っている。男性によると、バイオレットは車高を落とすなど、手を加えて楽しまれることも多い車だという。その中で、当時の雰囲気を残すハードトップは希少な存在だ。
なだらかな曲線を描くボディーに、白と薄い茶色を組み合わせた内装。これほど大切に維持している男性に、そのこだわりを尋ねると、「オーナーのこだわりが全く一切ない」と、意外な答えが返ってきた。
「新車のラインから出てきたような状態を維持したいなと思っています」
では、当時の雰囲気をここまで残す1台を、どのように手に入れたのか。車を託したのは、日産のメカニックだった義父だ。仕事の関係で引き取り、長年維持していたバイオレットを、男性が2005年に譲り受けた。
「当時は、引き取ったら廃車にされるような車だったらしいんです。あんまり人気もなかったし、これも1400のデラックスという、ハードトップで一番下のグレードなんですよ」
それでも、車の状態は良かった。義父は、その1台を残すことにしたという。
「すごく程度が良かったから、義理の父がしっかり維持しようということで、維持してくれたんですね。それを僕が譲り受ける形です」
受け継いだ当時、走行距離はまだ2万キロに達していなかった。義父が残した姿を大切にしながら、男性も約20年にわたり維持してきた。
初めて運転したのは、義父と参加した旧車イベントでのこと。普段はオートマ車に乗っていたため、マニュアルの運転に緊張したという。しかし、実際にハンドルを握ると印象は変わった。
「非常に乗りやすかったですね。すぐ慣れましたし、乗りやすい車だなと思いました」
父の愛車を夫が受け継いだことについて、妻はどう思っているのか。男性は「(妻は)ずっと嫌だったみたいです」と意外な答えを明かした。
義父はバイオレット以外にも車を所有しており、妻は幼い頃から父の車で家族旅行に出かけていた。ただ、駐車場でも目立つバイオレットの独特な姿が、あまり好きではなかったそうだ。
現在は当時と違う付き合い方になっている。「今は義理の父から引き継いだということも、僕が乗っているというのもあるんで、妻はこういうイベントには来てくれます。一緒に楽しんでおります」。

救援の電話で信じてもらえず…担当者から「疑って悪かった」
約20年の間には、旧車ならではの出来事もあった。ある日、バイオレットで会社へ出勤し、夜に帰宅している途中で、突然エンジンが止まった。
レッカーを依頼すると、電話口で車両の型式を尋ねられた。男性が答えると、伝えた型式を信じてもらえず、怒鳴られたという。
「そんな短けえ型番あるわけねえだろ!」
男性は、50年以上前の車なのだと説明した。さらに車名を聞かれ、「日産のバイオレットです」と答えても、すぐには信じてもらえなかったという。
ともあれ、担当者は現場に来てくれた。男性によると、原因は発電系統の不具合。充電してもらい、再び走れる状態になった。
その後、担当者は「疑って悪かった」と謝罪したという。男性は「もう走れるんですけど、家の近くまでレッカーに載せていってくれました」と振り返る。電話口で型式も車名も疑われた一件は、最後に自宅近くまで運んでもらう結末になった。
これまで大きなトラブルは少ないというが、今の姿を保つには気を使う。特に難しいのが、部品の確保だ。
エンジンには、ブルーバードなどと共用できるものもあるという。一方、独特の形をした樹脂パーツは、探しても簡単には見つからない。
「eBayとかヤフオクとか、いろいろ見ていてもないです。なので、もう気を付けるしかないです。壊れたらもう手に入らないものがほとんどです」
運転中の苦労もある。クーラーは付いておらず、夏の暑さは厳しい。窓を開けても、思うように風が入ってこないという。
「高速道路を走っていても、本当に中に風が入ってこないんです。夏の暑さはたまらないですよ」
それでも気持ちが離れないのは、この車ならではの魅力があるからだ。一番のお気に入りを尋ねると、「デザインですね。エレガントというか、美しいですよね」と答えた。
内装の色も気に入っている。男性によると、当時はボディーカラーやグレードによって内装色が異なっていたという。愛車に使われている白と薄い茶色の組み合わせも、その車らしさを感じる部分だ。
バイオレットは、自分にとってどんな存在なのか。男性が挙げたのは「生活の中の彩り」という言葉だった。好きな靴や時計、眼鏡を身に着けたときのように、この車に乗るとうれしくなるという。
「乗っていて、楽しいなっていうか、うれしいなって思える。本当に彩りみたいなものなんですよね」と語った。
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