42歳・山田孝之、俳優は「いつ辞めてもいい」 20代の時から持ち続ける“架空の逃げ道”とは

俳優の山田孝之(42)が、大型俳優オーディション番組『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』に取り組んでいる。約1万4000人の応募者と向き合う中、改めて考えたのは「俳優とは何か」。20代から持ち続けてきた「いつ辞めてもいい」という考え、裏方に回って見えた景色、役を生きることで受けるダメージまで、約30年の俳優人生を語った。

インタビューに応じた山田孝之【写真:増田美咲】
インタビューに応じた山田孝之【写真:増田美咲】

俳優オーディション番組『THE OPEN CALL』で審査に参加

 俳優の山田孝之(42)が、大型俳優オーディション番組『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』に取り組んでいる。約1万4000人の応募者と向き合う中、改めて考えたのは「俳優とは何か」。20代から持ち続けてきた「いつ辞めてもいい」という考え、裏方に回って見えた景色、役を生きることで受けるダメージまで、約30年の俳優人生を語った。(取材・文=平辻哲也)


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「これは20代の時からですけど、架空の逃げ道を作るって言ってるんですけど。『いつやめてもいい』と思ってずっとやってるんです」

 山田が長く俳優を続ける上で持ってきた考え方だ。

「『これで生きていくんだ』とか『これしかないんだ』と思うと、そこに執着ができて嫌なので。生きづらくなるから。『今これ一番できてるし楽しいし、いろいろ仕事やる中でも一番お金が稼げるものだけど、でもこれがベストじゃない。もっとあるはず、俺は』って20代の時から思ってるんです、ずっと」

「いつ辞めてもいい」と思うことで、力みが取れる。その発想のきっかけは、俳優を本業としないミュージシャンがドラマや映画で見せる芝居だった。

「『なんでこんなにいいんだろう、この人たち』みたいな。肩の力が抜けてて。帰る場所があるからなんですよね。ステージの上で歌うこと・ライブをすることはこの人たちの一番のものなのでいいんです。だから肩の力が抜けてめちゃくちゃいい芝居するんです」

 ならば、自分にも「帰る場所」があると思えばいい。

「『あ、じゃあ俺もそれ作っちゃおう』みたいな。今、むしろ俳優の仕事がなくなったら、今まで費やしてた時間分空くわけじゃないですか。ということは多分次やりたいことは見つかるし。だから『いつこれ以上楽しいことに出会えるんだろう』って」

 実際に辞めたいと思ったことも何度もある。特に20代の頃だった。

「自分の理想と現実が追いついてないみたいな時です。『あれだけできたと思ったのに全然できてないな』とか。『うわ、でもこれもう公開しちゃうのか』みたいな」

「こんなんだったら辞めた方がいいかな」「早いうちに辞めておいた方がいいんじゃないか」と考えたこともあったという。

 10代、20代は出演を重ね、30代になると作る側にも活動を広げた。2019年公開の藤井道人監督作『デイアンドナイト』ではプロデューサー、21年公開の『ゾッキ』では竹中直人、齊藤工とともに監督を務めた。年代ごとの人生設計があるようにも見えるが、本人は否定する。

「ないです。いつ死ぬか分からないですし。『何歳でこれ』みたいなのは全くゼロです」

 ただ、長く続ける中で後輩は増えた。20代の頃に自分が口にしていた不満と、今の若い俳優たちの不満が変わっていないことにも気付いた。

「『何も変わってないなと。なんか自分でもできることないかな』。そういう意識はあります」

 その思いも、作る側に回る理由になった。

「プロデューサーを経験してみたらその人たちの苦しさも分かるだろうし、何をやってるかっていう。そっち側に立たないことには、自分の立ち位置から動かずに外見てるだけだと分からないので」

俳優は「いつ辞めてもいい」 【写真:増田美咲】
俳優は「いつ辞めてもいい」 【写真:増田美咲】

裏方に回って気付いた現場への思いやり

『ゾッキ』で監督を経験した時には、俳優として何度もやってきた衣装合わせの見え方まで変わった。

「衣装合わせに俳優が来た時こんなうれしいんだみたいな。キャスティングもそうですし本読んで断られることもある。それが実際目の前に衣装合わせに来るってことはもうやってくれる確定なので」

 そこで、自分の態度も振り返った。

「この役は僕の身長体重で顔濃い人だったらいいだろうと思わずに現場に臨もうと思います」

 別の立場に立たなければ分からないことがある。それは俳優という仕事にも通じる。映画の現場は100人、多い時には200人規模になる。

「協調性とかはすごい大事です。思いやりっていうのは役を作る段階でもそうですし、現場でも必要とされてきます」

 一方で、役によっては普段とは違う距離の取り方も必要になる。

「時にはその役によっては印象が悪い感じで行った方が良かったりするわけです。そうすると嫌われますけど、まあ仕方ないです。でもだからと言って撮影する上で横柄な態度取れるかって言ったら、それだと撮影できないから。そこのバランスが大事になってくるし。そこはある意味人間力が必要かなと思います」

 今回の『THE OPEN CALL』で山田が見ているのも、演技のうまさだけではない。役との向き合い方、人との関わり方まで含めて「俳優」を見ている。その視線は、そのまま自身の俳優人生にも返ってくる。

「いつ辞めてもいい」と考えながら、それでも約30年にわたって俳優を続けてきた。そんな山田でも、避けたい役があるという。善人か悪人かではない。「つらい状況がいっぱいある人」だ。

「つらいんで本当に。例えば僕、ちゃんと計算して数えたことないですけど、『母何回死んでんの?』みたいな。普通1回しかないじゃないですか、みんな」

 芝居の中の出来事であっても、役として生きている間は、その人物にとっての現実になる。

「その役としてその時を思ってるってことは、本当にそれくらい実際に母が死んだダメージがあるんですよ。これをやっぱりずっとやればやるほど、そういうつらい経験が役って絶対出てくるんで。何もない人って映画にならないから。そのつらい思いしすぎたから、『もうあんまりつらい思いしてる人やりたくない』みたいな感じはあります」

「いつ辞めてもいい」という逃げ道を持ちながら、それでも俳優を続けてきた。その仕事には楽しさだけでなく、役として経験した喪失や痛みも残る。約1万4000人の応募者と向き合う『THE OPEN CALL』は、山田にとっても、改めて俳優という仕事を見つめる場になっている。

□山田孝之(やまだ・たかゆき)1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。99年に俳優デビュー。2003年の『WATER BOYS』でテレビドラマ初主演、05年の『電車男』で映画初主演を務める。主な出演作に『闇金ウシジマくん』シリーズ、『全裸監督』、NHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『クローズZERO』『十一人の賊軍』など。映画『正体』で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。『MIRRORLIAR FILMS』をはじめ、監督、プロデュースなど活動は多岐にわたる。

【番組情報】
『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』
10月1日から定額制映像配信サービス「Lemino」で独占配信。毎週木曜更新。第1話は無料、第2話以降はLeminoプレミアムで配信される。15歳以上であれば性別、国籍、所属事務所、演技経験を問わないオープンコール形式で、全国11の国・地域および海外から約1万4000人が応募。選ばれた俳優が出演するオリジナル映画は2028年に全国劇場公開予定。

ヘアメイク:南辻光宏
スタイリスト:飯田恵理子(CORAZON)


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<お問い合わせ先>
Ground Y(グラウンド ワイ)
ヨウジヤマモト プレスルーム/TEL 03-5463-1500

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