2020年の邦画ベストワンは「37セカンズ」に決まり!世界の映画祭でも高い評価

第32回東京国際映画祭が28日から開幕する。中でも、「Japan Now」部門で29日に上映される「37セカンズ」(HIKARI監督)は必見だ。漫画家のゴーストライターを務める脳性麻痺のヒロイン、ユマが自立する姿を描くカミング・オブ・エイジ・ストーリー。今年2月、世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞したのを始め、世界の映画祭で高い評価を集めた。日本では8月の湯布院映画祭でお披露目され、シネフィルたちからも絶賛の声を浴びた。劇場公開は2020年2月だが、来年の映画賞を席巻するだろう。

「37セカンズ」(C)37Seconds filmpartners
「37セカンズ」(C)37Seconds filmpartners

第32回東京国際映画祭の「Japan Now」部門で上映

 第32回東京国際映画祭が28日から開幕する。中でも、「Japan Now」部門で29日に上映される「37セカンズ」(HIKARI監督)は必見だ。漫画家のゴーストライターを務める脳性麻痺のヒロイン、ユマが自立する姿を描くカミング・オブ・エイジ・ストーリー。今年2月、世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞などを受賞したのを始め、世界の映画祭で高い評価を集めた。日本では8月の湯布院映画祭でお披露目され、シネフィルたちからも絶賛の声を浴びた。劇場公開は2020年2月だが、来年の映画賞を席巻するだろう。

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「来年の事を言えば鬼が笑う」というが、笑いたいなら、笑っておくれ。「37セカンズ」は間違いなく、来年の映画賞の筆頭候補である。今年の始めに内覧試写会で観た私は思わず、HIKARI監督に「2020年のベストワンは決まりました」と言ってしまった。この映画は既にお墨付きだ。世界190か国に配信するNetflixが日本以外の全世界配信権を獲得しているし、HIKARI監督にはハリウッドスタジオがオファーをしている。

 ヒロインは郊外でシングルマザーの母(神野三鈴)とひっそりと暮らすユマ(佳山明)。ゴーストライターとして漫画を描きながら、車いす生活を送っている。そんな彼女はある時、公園に落ちていたアダルトコミックを拾い、自分の作品を描くことを決意。SFアダルトコミックを描いて、編集部に持参する。女性編集長(板谷由夏)に気に入ってもらえるが、「あなた、セックスしたことはある? 作品はいいけど、リアルさに欠けるんだよね。作家に経験がないのに、いい作品は書けない。もし、いつか、あなたがセックスしたら、連絡しておいで」と言われるのだった。その後、ユマはセックスを経験するために、夜の歓楽街へと車いすを走らせる……。

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車いすのヒロイン・佳山明が性の目覚めを通じて成長する姿を描く

 車いすのヒロインが性の目覚めを通じて、成長していくという物語は、唯一無二。しかも、そのヒロインを演じたのは、実際に脳性麻痺を患う佳山明(めい)だ。製作陣は当初、演技派と呼ばれる女優にオファーしようと考えたが、HIKARI監督は「どこかにユマはいるはずだ」と広くオーディションで募った。佳山は1994年大阪生まれ、現在25歳。日本福祉大学を卒業後、社会福祉関連の仕事に従事。2018年冬、大阪オーディションの最終日に最後の一人として飛び込み、か細い声で「すみません」と会場に現れた。その姿を見た瞬間、監督は「ユマがいた」と思ったそうだ。

 HIKARI監督は大阪生まれで、ジョージ・ルーカス監督ら一流監督を数多く輩出した南カリフォルニア大学(USC)大学院を卒業。現在はロサンゼルス在住の女性だ。USC大学院卒業制作「Tsuyako」を始め、これまで短編を撮ってきたが、長編は今回が初めてとなる。当初、「キャンタリング」(駆け足)という題名で始まった初稿は交通事故で下半身不随になり、セックスができなくなったヒロインが性の喜びを見出すことができるか、という内容だったという。

 これはこれでユニークだ。車いす生活者の性を取り扱った映画には、2013年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞した「暗闇から手をのばせ」(戸田幸宏監督)があるが、これは身体障害者のデリヘル嬢(小泉麻耶)をヒロインにしたもので、車いす生活の女性をヒロインにしたものではない。

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