本仮屋ユイカ、37歳で変化した結婚観「誰かといるのもありかな」 芸歴27年で広がった演技の幅

俳優の本仮屋ユイカがショートドラマアプリ「BUMP」で配信中の『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』で主演を務めている。演じるのは、魅惑の美貌を誇るセレブ妻・藤堂玲花だ。縦型ドラマへの初挑戦かつ、これまでの本仮屋のイメージとは大きく異なる役柄。役者人生27年の中でもチャレンジングな作品となった同作への思いを聞いた。

『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』で主演を務める本仮屋ユイカ【写真:荒川祐史】
『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』で主演を務める本仮屋ユイカ【写真:荒川祐史】

初のショートドラマで信頼する御法川修監督と再タッグ「ご一緒できて良かった」

 俳優の本仮屋ユイカがショートドラマアプリ「BUMP」で配信中の『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』で主演を務めている。演じるのは、魅惑の美貌を誇るセレブ妻・藤堂玲花だ。縦型ドラマへの初挑戦かつ、これまでの本仮屋のイメージとは大きく異なる役柄。役者人生27年の中でもチャレンジングな作品となった同作への思いを聞いた。(取材・文=中村彰洋)

 同作は1話わずか3分にも満たないショートドラマという形態。短い時間で視聴者を作品の世界観に誘うことができるかがカギとなる。

「短い中で、緩急を作らなければならず、ずっと頂点を打ち続けているような演技をする必要がありました。全部のシーンが決めカットになるようなキャッチーさを持っていることが特徴だと思います。すごいスピードでエネルギーを出していかないと成立しないので、最初の段階からかなり自分を追い込むようにして、プライベートでもずっと玲花のことを考えていました」

 今作で監督を務めるのは御法川修氏。本仮屋とは、2021年の主演ドラマ『私の夫は冷凍庫に眠っている』(テレビ東京)以来のタッグだ。御法川氏にとっても初となるショートドラマへの挑戦。「本仮屋さんとやりたい」と直々にオファーをもらった。

「私は御法川さんに全幅の信頼を置いているんです。魔術師なんですよ(笑)。いろんなアプローチの仕方がある中で、御法川さんは催眠術をかけるように作品の世界に連れていってくれるんです。『私の夫は~』も現実では起こり得ない、かなり突飛なストーリーでしたが、それを信じぬけるような雰囲気を作ってくださるんです。演じる人へのリスペクトもあって、本当に素晴らしい監督です。

 そんな方の新しいチャレンジにご一緒できることがとてもうれしいです。今作は、御法川さんが『この人は』という人を隅々まで配置したキャスティングになっていて、本当に皆さん魅力的なんです。ご一緒できて良かったと心から思います」

芸歴27年目を迎えた本仮屋ユイカ【写真:荒川祐史】
芸歴27年目を迎えた本仮屋ユイカ【写真:荒川祐史】

“悪女役”に没頭した撮影期間「愛着も湧きました」

 今作で演じた玲花は39歳の高飛車で傲慢なセレブ妻で“ダークヒロイン”的な一面を持つ。「穏やかに暮らすのをモットーにしている私とは、とても遠い人生の歩き方だなと思います」。

 限られた撮影期間だったが、とても濃厚な時間だったと振り返る。「もっと玲花と一緒にいた感じがしますし、愛着も湧きました。浮世離れした人物でしたが、現場入りした時に監督が『この人はもう本仮屋ユイカではありません。これからは玲花です』とオフの時も玲花としていられるような空気づくりをしてくださいました。ユイカに戻るのではなく、ずっと玲花でいることで、自分の中の玲花をどんどんと濃くしていくことができたので、本当に感謝しています」。

 作中では、不倫をする様子も描かれている。子役時代から活躍を続ける本仮屋も37歳。数年前には想像もしていなかった役柄を演じることも増えてきた。

「キスシーンも昔なら考えられなかったですよね。でも、それを見てみたいと思ってもらえて、そのチャンスが巡ってきたことがすごくうれしいです。でも、ふと急に『私のファンの方は大丈夫だろうか?』と心配になりました。本当に親のような目線で見守ってくださる方が多いので、心配をかけてしまったら申し訳ないです(笑)。でも、別人として受け取ってもらえたらうれしいです」

 母親役などを経験する中で、徐々に結婚観にも変化が生まれたとも明かす。「役者っていい仕事ですよね。もう私は結婚したこともありますし、子どもを産んだこともありますから(笑)。でも、実際に結婚願望も生まれてきました。1人が好きですし、未熟で自分の世話だけで大変なのに、人と生活するなんて……と思っていたんです。でもいろんな人の結婚の形を見ていく中で、『自分に合った方法で誰かといるのもありなのかな?』と思うようになりました」。

「安室(奈美恵)ちゃんになりたい」という真っすぐな思いで飛び込んだ芸能界。酸いも甘いも経験した27年間で演技との向き合い方も徐々に変化していった。

「見ている人に楽しんでほしいという思いは変わらないですが、人前で演じさせてもらえるということは、視聴者の方ができなかったことを代弁する役目をもらえているんだと考えるようになりました。怒りをぶちまけたり、大泣きすることなんてそうそうないことだと思いますし、諦めてしまったことやどこかで我慢してしまっているようなことを代理で表現するのが、役者という仕事だと思います。私が何かを演じることで、誰かの思いを昇華させる。それが1番の使命なんだなとここ数年、30代に入ってから、意識して表現するようになりました」

俳優という職業の魅力について語った【写真:荒川祐史】
俳優という職業の魅力について語った【写真:荒川祐史】

演じていて「生きていて良かった」と感じる瞬間も

 何かに悩んだ時は“一人インタビュー”することで思考を整理する。「視野が狭くなると、私は“悲劇のヒロイン”になりがちなので、悲劇から喜劇に転じるために、『こんなことがあったんですよ』と俯瞰で自分のことを話して、客観視するようにしています」。

 その一方で、人への相談も積極的に行い、さまざまな意見を取り入れるようにしている。

「特に今作に臨むにあたって、ずっと緊張していたんです。妹(本仮屋リイナ)と会うたびに『緊張するぅ』と言っていたら、『何年やってるんだ! いい加減、緊張に飽きろ!』って(笑)。撮影前日には、『うまくやりたいと思っちゃうんでしょ? でも、ユイが1番面白いと思うことをやりなよ』とアドバイスもくれて、『なるほど!』と力がふっと抜けていきました。自分自身を信じ直すための背中を押してくれた言葉でした」

 長年演技をしていると「生きていて良かった」とすらも感じられる貴重な瞬間に巡り会うことがあるという。

「本当に奇跡的な瞬間があって、全員のことが手に取るように分かることがあるんです。見えてないのに、『あそこの制作さんが今車を止めているな』とか『監督は本当はこうしたいんだろうな』って。気持ち悪いですよね(笑)? でも、そんな風にみんなの気持ちが一つになっている瞬間があって、それが自分の演技にさらに火をつけていることが分かるんです。

 自分が意図していないようなリアクションや表現が、自分の中から出てきたりすると、本当に感動しちゃうんです。自分でやってるのにね(笑)。そういう瞬間って、確実に全員が『いいシーンを撮れた』と手応えを感じているんですよ。みんなが幸せそうにしている中で演技できている時が1番幸せです。この気持ちは昔からずっと変わらないですね」

 今作の出来上がりを映像で見た時、「自分が老けたと感じた」と苦笑いする。そんな気持ちをマネジャーに伝えたところ、「気にしなくていいんです。そこが女優のいいとこですよ」という言葉が返ってきた。

「『年を重ねて変化していく見た目や考え方を見せることができる仕事が女優さんなんです』という言葉をもらいました。ここから先も自分が成長していって、それを作品に残せることはなんて幸せなことなんだろうと考えることができました」

 1998年のデビューから四半世紀が過ぎた。「27年目と言われるとびっくりしちゃうんです。本当にずっと胸元に初心者マークをつけている気分です」。あの頃と変わらぬ思いを胸に、これからも等身大の本仮屋ユイカを表現していく。

スタイリスト:大友洸介
ニット:ブラーミン、スカート:ベアトリス、イヤリング:パーキールーム、ブーツ・リング:スタイリスト私物

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