音楽業界に“向いている人”とは? プロがきっぱり 難関入社面接で自分のバンドTシャツ、伝説の持ち主

就活学生や転職活動者に向けて音楽業界の“実際”を伝えようと、『17人のエキスパートが語る 音楽業界で食べていく方法』出版記念トークイベントが23日、東京・御茶ノ水RITTOR BASEで行われた。著者で、元ソニー・ミュージックエンタテインメントで制作や宣伝の仕事に携わり、現在は江戸川大で音楽ビジネスを教える関根直樹氏が登壇した。

イベントに登壇した関根直樹氏【写真:ENCOUNT編集部】
イベントに登壇した関根直樹氏【写真:ENCOUNT編集部】

元ソニー・ミュージックで制作や宣伝に携わり現在は江戸川大で音楽ビジネスを教えている

 就活学生や転職活動者に向けて音楽業界の“実際”を伝えようと、『17人のエキスパートが語る 音楽業界で食べていく方法』出版記念トークイベントが23日、東京・御茶ノ水RITTOR BASEで行われた。著者で、元ソニー・ミュージックエンタテインメントで制作や宣伝の仕事に携わり、現在は江戸川大で音楽ビジネスを教える関根直樹氏が登壇した。

 株式会社リットーミュージックから刊行された同書は、音楽業界にはどんな業種があり、どんな仕事をしていて、どんな人が向いているかなどについて、実際に現場で働く17人のインタビューから引き出す内容。レーベル、マネジメント、コンサート制作、音楽配信、動画配信、メタバースといった、いまホットな業種に携わる第一線の業界人を特集している。

 関根氏は、32年間勤めたソニー・ミュージックでプロデューサーとして邦楽宣伝・A&R業務に携わり、出向先のライブエグザムでチーフ・プロデューサーとして日本人アーティストの海外興行エージェント・ツアーマネジャーに加えて、海外のアニメ・音楽フェスティバルの制作業務を手掛けた。SCANDAL、T.M. Revolution、中孝介、LOVE PSYCHEDELICO、坂本真綾など、アジアを中心に着手したアーティストは30組以上の豊富な実績を誇る。江戸川大社会学部教授、インアウトワークス合同会社CEOの肩書きも持っている。

 イベントで関根氏は、もともとは大学のゼミ生から音楽業界について知りたいという要望を受けたことをきっかけに、著書執筆を思い付いたといい、「業界の方も『あっ』と思うようないろいろな情報を私なりに網羅しました。音楽業界で働いている方にも読んでほしい内容です。音楽業界を目指す学生にもこの本を読んで勉強してもらえたら」と語った。

当時100倍の倍率だった難関ソニー・ミュージックに入社した関根氏。米国留学時代に組んでいたパンクバンドのロゴがデザインされたTシャツを着てジーンズの格好で面接を受けてネタにして、最終の社長面接では「自分の言いたいことを言ってすっきりしよう」と「これからの時代はロックです」と語り通して合格したという入社秘話を披露した。

 新型コロナウイルス禍で打撃を受けた音楽・興行業界の話題では、「コロナ禍だからこそヒットしたアーティストもいると僕は思っています。逆にうまく乗り越えた事例もあります」と、YOASOBIがブームを巻き起こした理由について分析した。また、コロナ禍によって転職・離職者が続出したコンサート業界の人手不足の現状に言及。コンサート需要は回復してきているが、「舞台制作や舞台監督に集中して仕事が重くのしかかっている状況です。資材高騰化に加えて、人件費も高騰していて、それがコンサートチケットに転嫁されているわけです。僕は、これはしょうがないんだなという部分があると考えています。『高くなったから行かない』と思う人がいるかもしれませんが、こういう背景があるからチケットが高くなっているという現状は理解する必要があると思います」と、業界事情について鋭く指摘した。

 学生に向けて、「音楽が好きと言う人は多いですが、みんな音楽が好きです。それと、音楽を仕事にするのはちょっとまた違います。そこにはつらさも当然あります。自分の好きな推しのアーティストだけを見て聞くだけではダメで、業界を俯瞰できて、音楽を勉強する、研究するという発想を持っている人が向いていると思います。なんでこのアーティストは売れているのに、このアーティストは売れていないんだろうと考えられる人はいいと思います」と、“向いている人”の持論を述べた。

 現代社会で重視される働き方の実態についてはどうか。「コンサートは夜にあります。土日にあります。コンサートの期間は長時間労働をすることもあります。これを嫌だと思う人は向いていないかなと思います。ただ、昔、僕がいた頃は音楽業界はブラックでしたが(笑)、労働時間については今は代休制度などかなり変わってきています。今やブラックじゃないと思いますよ。あと、ある程度の体力と精神力は必要かなと思います」と話した。

 日本アーティストの海外進出の現状や課題についても指摘したうえで、日本の音楽業界のこれからは明るいとの見方を示し、「未来しかないんじゃないですか」と力強く語った。

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