早瀬久美が振り返る50年間の「俺は男だ!」 ファンが自宅で母親とお茶「今なら考えられない」
前千葉県知事のタレント森田健作が主演し、1971年から72年にかけて放送された日本テレビ系青春学園ドラマ「おれは男だ!」でヒロイン・吉川操を演じて人気を博した女優・早瀬久美(70)。劇中で森田の演じる小林弘二から呼ばれた「吉川くん」という言葉を懐かしく感じる中高年は多いはず。放送終了から50年の節目を迎え、現在70歳。熱烈なファンも多かった撮影当時の思い出や20代だった森田の当時の様子を聞いた。
共演の森田健作にも言及「女性に関心がなかった」
前千葉県知事のタレント森田健作が主演し、1971年から72年にかけて放送された日本テレビ系青春学園ドラマ「おれは男だ!」でヒロイン・吉川操を演じて人気を博した女優・早瀬久美(70)。劇中で森田の演じる小林弘二から呼ばれた「吉川くん」という言葉を懐かしく感じる中高年は多いはず。放送終了から50年の節目を迎え、現在70歳。熱烈なファンも多かった撮影当時の思い出や20代だった森田の当時の様子を聞いた。(取材・文=中野由喜)
「当時は今よりも個人情報が表に出ていたのかと思いますが、ファンの方が私の留守中に家まで来て母と友だちになって家に上がり込んで、お茶を飲んでいたこともありました。今なら考えられないことですよね。母は『いい子よ』と言っていました(笑)。のんびりした時代でしたよね」
劇中では森田が剣道部の主将役で早瀬はバトン部の主将役だった。
「バトンは最近もちょっとやってみたら今も問題なく回せました。体が覚えているんですね」
2人の演じる小林と吉川の友情と恋愛の間にあるような関係は視聴者の高い関心を集めた。演じる森田と早瀬の当時の関係はどうだったのか。
「吉川が海で溺れるシーンの後で無事に助かったシーンになったら、実際には、そんなシーンはないのに視聴者の方の間では人工呼吸で助かったという噂が流れたりしました(笑)。健ちゃんとは仲は良かったですよ。今も仲がいいですよ。でもあのとおり性格ですから健ちゃんが女の子にアプローチするとかは全然ありませんでした。今も健ちゃんには『本当に色気なかったよね』と当時を思い出して言っています。女性に関心がなかったと思います。当時は危険な感じは一切なかったです。今は知りませんよ(笑)」
「あのとおりの性格」について、象徴的なエピソードを聞いてみた。
「健ちゃんは、演じた役の小林弘二のまま。裏表のないまっすぐな性格。分かりやすい人でした。私はいなかったので、後で聞いた話ですが、共演者の一人がロケ先で体調を崩したことがあり、健ちゃんは『大変だ』と、お医者さんを紹介してもらおうとロケ先の民家を何軒も訪ね歩いて助けを求めたそうです。あとはロケが終わると、真っ先に帰るのも健ちゃんでした。みんなでどこかに寄って帰ろうということは健ちゃんに限ってはありませんでしたね。知事時代もそうだったみたいです。県庁の人は残業が減ったと喜んでいました(笑)」
早瀬自身も多忙な売れっ子女優として青春時代を過ごしたはず。
「忙しくてあまり学校に行けませんでした。そのストレスをドラマの学園生活でカバーしてもらった気がします。ロケの合宿に行って、合間に撮影していた気分でした。青春ドラマですが私には本当の青春。楽しい思い出です。この作品のおかげで『女優です』と今も胸を張って言える。このヒット作がなかったら忘れられていたと思います。あの時のマドンナの早瀬久美ですと言えることに、ものすごい感謝です」
1980年に結婚し、83年には芸能活動を休止して夫の仕事の関係で渡米した。
「すぐに帰るつもりでいたし、日本とアメリカ(サンフランシスコ)を行ったり来たりすればいいと思っていたので、芸能活動休止ということに特別な決意はありませんでした。サンフランシスコではたまにインタビュアーの仕事をしていました。郷ひろみさんがサンフランシスコに立ち寄った際に取材したり、オノ・ヨーコさんにもインタビューをしました。あとはジャパンタウンのラジオ局で日本人向けの歌番組のパーソナリティーをやっていました。アメリカでは英語を覚えることにも必死で、そうこうしている間に娘も生まれ、芸能界を辞めるとか活動休止するような自覚もなく目の前のことに無我夢中でした」
1990年に帰国し、2002年に芸能活動を再開した。今、普通の主婦から女優に戻った喜びを感じることもあるという。話す姿は古希とは思えないほど若々しく輝いて見える。今後、50年前のマドンナがどんな姿を見せてくれるか注目したい。
□早瀬久美(はやせ・くみ) 1951年12月25日、兵庫県神戸市生まれ。1966年映画「紀ノ川」で映画デビュー。1968年フジテレビ系ドラマ「お嫁さん」で初主演。1971年日本テレビ系「おれは男だ!」でヒロイン・吉川君として人気に。1980年に結婚して1983年には芸能活動を休止して渡米。1990年に帰国し陶芸教室を経営。2002年に芸能活動再開。2017年からは八王子FM「早瀬久美のあの日をもう一度」のパーソナリティー。