アイドル卒業で恋愛解禁も「つまらなかった」 25歳女優の覚悟「私にはこの世界しか」
人気アイドルグループ「SUPER☆GiRLS」の元メンバーで女優の田中美麗が公演中の舞台「コマネーア!~Call My Name Again~」(18日まで、東京・シアターグリーン)で、主人公の幼なじみ役を務めている。楽しくもせつないファンタジーコメディーで、小劇場での舞台は初めて。また、「人生初めてのツッコミキャラでもあるんです」と新境地で存在感を示している。スパガ卒業後は、目標を見失った時期もあったという田中の女優業にかける思いを追った。
スパガ卒業後「抜け殻」に 手当たり次第の初体験
人気アイドルグループ「SUPER☆GiRLS」の元メンバーで女優の田中美麗が公演中の舞台「コマネーア!~Call My Name Again~」(18日まで、東京・シアターグリーン)で、主人公の幼なじみ役を務めている。楽しくもせつないファンタジーコメディーで、小劇場での舞台は初めて。また、「人生初めてのツッコミキャラでもあるんです」と新境地で存在感を示している。スパガ卒業後は、目標を見失った時期もあったという田中の女優業にかける思いを追った。(取材・構成=水沼一夫)
13歳で「SUPER☆GiRLS」の1期メンバーに入った私は、2018年にヘルニアの悪化で卒業しました。8年間ノンストップでやってきただけあって、アイドルを辞めた後は燃え尽き症候群が長かったです。もうステージに立たないんだとか、握手会とかもうしないのかなあとか、結構いろいろ考えちゃって、何も動き出せなかった時期がありました。母には「もう抜け殻状態。話しかけてもぼうっとしてたよ」と言われて。今振り返っても、「終わってんじゃん」という話ですよね(笑い)
アイドル時代は毎日動いていたので、動かなくなるとこんなに体って重くなるんだと思いましたし、とにかくもう何したらいいか分からない。よくアイドル辞めたら、芸能界引退するパターンと、移籍してリスタートする子や、引退して一般人として転職したりとか道があるんですけど、それすらも考えれないぐらいぼう然としていました。
しばらくして、アイドル時代にできなかったことをめちゃくちゃしましたね。長い間、会っていない地元の友達に会いに行ったり、恋愛もしましたし、あとやらなかったことにも挑戦したりとか、もう手当たり次第やってやりました。本当に、当時できなかったこと全部をやって。でも、つまらなかったですね、正直。何をやっても、満足いかなくて、やっぱり私にはこの世界しかないんだって思いました。もう全然物足りなかったです。恋愛も憧れていたんですけど、制服デートとかもしたかったんですけど、お付き合いするってなっても、なんかファンの方からのほうが愛をいっぱいもらっていたなというか、何かここじゃないなって思ったりしました。
転職とかも考えたんですよ。若いころ一緒に活動していた子の中に、転職をした子が何人かいるので、その子に聞いたりもしたんですけど、ある程度の知識だったり、学力がないとダメだと聞いて。私は学校も行っていないし、今から勉強したとしても、どう食べていくかとか真面目に考えたときにちょっと現実的ではなかったです。
再び芸能界に戻り、新たな挑戦もいろいろさせてもらいました。最初は知人に紹介してもらった声優事務所に入りましたが、経験値としてはかなりレベルは上がりましたし、やっぱり、この仕事をするときが一番楽しいなって実感できました。
仕事に対する考え方も変わりましたね。今までアイドルを辞めて1人になって、お仕事を選んでいた時期もありました。それは女優としてやっていくならイメージみたいなものも大事かなと思って仕事をお断りしていたんですけど、そのせいで何もなくなった時期がありました。今はいただいた仕事、与えられた仕事をやろうと思っています。
「海外で活躍できる人になりたい」というのが最終的な目標なんですけど、ハリウッドだとちょっと大きすぎるなと思って「目標はアジア進出」と言っています。でも、まずはそんな世界を見るより日本国内から頑張らなきゃと思うので、とりあえず今の目標としては、女優だったり自分の好きなこと、洋服を着て撮影されるモデルさんだったりとか、そういう仕事を一生懸命やりたいと思っていますね。
兄が病気で…舞台に感情移入「本読みの段階で涙」
今回の舞台もご縁というか、2019年の舞台でご一緒だった演出家の方からお声がけをいただきました。舞台は4作目で、今まで200人ぐらいのところでやっていたのですが、初めて100人以下の劇場です。小劇場の舞台は割と見に行くことが多くて、いつか出てみたいなあと思っていた矢先のお話でした。地声が届きますし、お客さんとの距離も近いので、演じる楽しさがあります。
台本はせつなかったですね。私は主人公の幼なじみ役で出るんですけど、その主人公がある日、バイク事故で命を落としてしまって、猫に生まれ変わってしまいます。私の役は主人公に対して好意を持っているんですよ。だけど突然いなくなっちゃって、そのもどかしさをたまたま会った猫に伝える。でもその猫は主人公なんだよっていうストーリーです。お客さんから見ても、もどかしさがあると思うんですよ。「そこいるよ、主人公の子」みたいな。ただ、私は猫に向かって話していて、そこに面白さがありますね。
自分の役も、すごい身に染みて分かるというか、感情移入できちゃうなという場面がたくさんありました。この作品は身近に亡くなっていた方がいらっしゃったらすごい共感できると思いますし、そういう経験のある方は「あのときこうすればよかった」とかいろんな後悔があると思うんですよね。私自身も2~3年前に兄を病気で亡くしました。その時、私は舞台の本番中だったんですけど、その当時伝えられなかった思いと今回主人公に対する思いがリンクする部分がたくさんあるなと感じています。1ページぐらいずっと私が語るシーンがあるんですけど、めっちゃ分かると思いながら、本読みの段階で涙が出ちゃったぐらい共感できました。変に役作りしなくても「私でいいかな」と思えたぐらい、せつなさ多めな内容です。
あと、人生初めてのツッコミキャラでもあるんですよ。割と鋭いツッコミを劇中、何度か言うんですけど、私はどちらかというとボケてツッコまれてきた側なので、最初は難しさがありましたね。ツッコミって、テンポが大事じゃないですか。ちゃんと勉強しなきゃなと思って稽古に励みました。
映像のお芝居には慣れていたんですけど、舞台は全然違いますよね。だから、絶対途中で(壁に)ぶつかるし、逃げ出したくなると思うんですよ。だけど、いつもなんやかんや乗り切れてきたので、自分のハングリー精神だったりとか、瞬発力とか今まで経験してきて得たものを生かしながら、新しいことを吸収できたらなと思います。
また新しいことに挑戦させていただける環境を与えてくださったスタッフさんにも感謝です。小劇場ならではの近い距離感で味わえる楽しさじゃないですけど、細かいお芝居だったりとか、細かい表情だったりを注目をしていただけたらなと思いますね。
□田中美麗(たなか・みれい)1996年10月14日、埼玉県出身。アイドルグループ「SUPER☆GiRLS」の元メンバーとして女優、タレントとして活躍中。フジテレビ系「ファーストクラス」「ようこそ、わが家へ」出演。2018年~20年まで雑誌「JELLY」の専属モデルを務めた。趣味はカメラで、一眼レフカメラを7台所有。特技は絵を描くこと。アクセサリーブランド「MAYLE」のデザイナー兼プロデューサー。身長161センチ。
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