UFCに医師との二刀流ファイター 練習は週に3回、振休取得し試合「仕事を前倒しで詰め込んで」

格闘技イベント「ROAD TO UFCシーズン5」DAY2が29日、マカオ・ギャラクシー・アリーナで行われた。メインイベントとして行われたUFC女子ストロー級の一戦ではシー・ミン(31=中国)がプージャ・トーマル(32=インド)と対戦し、肩固めを極め1R・一本勝ちを収めた。試合後会見ではとてもUFCファイターとは思えない生活や練習環境を明かした。

試合後会見に登壇したシー・ミン【写真:ENCOUNT編集部】
試合後会見に登壇したシー・ミン【写真:ENCOUNT編集部】

専業プロを打ち破る武器は“研究ノート”

 格闘技イベント「ROAD TO UFCシーズン5」DAY2が29日、マカオ・ギャラクシー・アリーナで行われた。メインイベントとして行われたUFC女子ストロー級の一戦ではシー・ミン(31=中国)がプージャ・トーマル(32=インド)と対戦し、肩固めを極め1R・一本勝ちを収めた。試合後会見ではとてもUFCファイターとは思えない生活や練習環境を明かした。


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 UFCという世界最高峰の舞台と契約しているが、ミンは専業格闘家ではない。現役の医師として働きながら、日本では“修羅の道”と呼ばれる環境に参戦している。今回の勝利について冷静にこう語った。

「自分には才能なんて全くないと感じています。過去にはテコンドーや散打の大会にも出ましたが、良い成績は残せませんでした。今回専業の選手たちに勝てたのは、すべて昆明紅星レスリングクラブのコーチの戦術のおかげです」

 驚くべきは、拠点としている昆明紅星レスリングクラブはいわゆる名門ジムではないということだ。今回の試合に臨むまでの道のりは決して恵まれたものではなかった。

「私たちのクラブは専用のジムを持っていなくて、借りている場所で練習しているんです。今回は試合直前に追い出されてしまい、サンドバッグもマットもない状態でした。そのため大学の屋外サッカー場で練習しました。そこなら無料ですからね」

 練習量は週にわずか3回。その短い時間でハイレベルな選手に対抗するためのトレーニングをしている。「実行力」と「研究」を武器にしているそうで、対戦相手のビデオをスロー再生し、専用のノートに記録して毎日繰り返し研究。中国メディアから「まるで医学生のよう」の声が上がると「私の同僚や同級生もみんなノートでメモを取るのが好きなんです。パッと開けばすべてが一目で分かりますよね。スマホで見るより効率が良いんです」と笑った。

 医師という職業柄、簡単に休みを取ることはできない。「試合前に仕事を前倒しで詰め込んで、振替休日を利用して試合に来た」という。

 練習時間が限られているからこそ、自己管理にも一切の妥協がない。火鍋やアイスクリームへの欲求も断ち切り、筋肉を維持するために長年クリーンな食生活を徹底している。試合後に何が食べたいか問われると「お腹いっぱい食べられればそれで良くて、特別に食べたいものはありません」と言い切っていた。

 眼鏡をかけ、優しい声でインタビューに答える真面目な印象だが、意外な一面も見せた。日本発祥の対戦型格闘ゲーム「ストリートファイター」が好きだそうで、テーマ曲を入場に使用している。「私もゲームが大好きで、格闘技を好きになった理由の一つでもあります。ゲーム好きなファンの皆さんのために選びました」と選曲の理由を語った。

1R・一本勝ちを収めたシー・ミン【写真:(C)Zuffa LLC/UFC】
1R・一本勝ちを収めたシー・ミン【写真:(C)Zuffa LLC/UFC】

試合が組まれないことへの危機感も

 現在はUFCと契約したもののマッチメーカーからの連絡がなく、試合枯れを危惧しているという。普段から減量をしていないかつ、標高の2000メートルの雲南省を拠点としているため、常に健康でスタミナも万全だとアピール。会見のカメラに向かってUFC代表のダナ・ホワイトへ英語で直接メッセージを送った。

「Good evening, Dana White. 私はあなたの従業員、シー・ミンです。私のパフォーマンスを気に入ってくれたらうれしいです。次の試合の準備はできています。8月だと嬉しいですね」

 会見の終盤、オクタゴンで熱狂するファンを見た感想を問われると、飛び出したのは、対戦相手への深いリスペクトと慈愛の言葉だった。

「試合が終わってからは、ずっと対戦相手のことを考えていました。私たちは本来48キロ級の選手なのに、UFCの52kg級で身長170センチもある巨人たちと戦っているんです。彼女には医大に通っている妹がいて、妹の学費を稼ぐために試合に出ていると聞いていました。自分が勝ってうれしかったけれど、彼女が泣いているのを見てとても悲しくなりました」

 さらに「彼女に聞こえるか分かりませんが、これからは私があなたの中国の妹です。今後、雲南省に練習や生活をしに来る時は、私がすべて手配しますよ」と続けた。

 試合後はすぐにホテルに戻り、コーチとビデオを見て反省会をする予定だという。最高峰の舞台にもいた“二刀流ファイター”。このオクタゴンに入るまで、尋常でない努力を積み上げているに違いない。

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