菅首相が掲げる「不妊治療の保険適用」 専門家が見る課題は?

保険が適用されることで逆に技術力の低下を招く可能性を危惧

 今回発表された保険適用の方針について、杉山理事長は「首相とも話していますが、保険適用となると今の日本の制度では混合治療ができない。逆に技術力の低下を招く可能性があります」と指摘する。

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 不妊治療ではこれまで、自費だからこそ最先端の治療法を含む様々な選択肢の中から患者が治療法を選択することができた。それが保険適用となれば制度的に複数の選択肢から患者が適切な治療法を選択する混合治療が受けられなくなり、高額な治療費を払ってでも子どもが欲しい世帯が、高度な治療を受けられなくなる可能性があるという。現場の医師にとっては高度な治療を施す機会が減り、また高額な医療機器を導入することもなくなり、ひいては不妊治療の技術力低下にもつながるというわけだ。

 とはいえ、菅首相が実現まで2年程度の猶予を設けたことで「法制度の整備からいろいろと検討していくことには歓迎です。不妊治療は患者さんによってケースが大きく異なる。総理は体外治療にも保険を適用するとは言ってませんし、さまざまな選択肢を残しつつ、多くの人が適切な治療を受けられるようになれば」と要望を口にする。

 ひっ迫する医療費の負担についても課題はある。「保険は自分たちで納めているもの。それを子どもができない家庭のためだけに使うことには抵抗もあるでしょう。保険料に手をつけるのではなく、コロナ対策の10兆円のように、他の予算から捻出することはできないのか」。35歳以降から妊娠成功率が下がるとの試算もあるが、適用の条件に付いては「やはり現行の43歳までというのは医学的に根拠がある年齢。そこは変えずに、730万円という世帯年収には制限をかけないというのが現実的なところだと思います」と話す。

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