新橋ガス爆発事故、現場に居合わせた記者が語る恐怖 即退避を決めたのは“警察のひと言”

3日に東京・新橋の雑居ビルで起きた爆発事故は、人通りの多い昼間のオフィス街を騒然とさせた。原因はガス漏れと見られているが、捜査は続いている。煙が立ち上がり、炎が上がる中、偶然、現場に居合わせたのが格闘技記者の“Show”大谷泰顕氏だ。耳をつんざくほどの爆発音を聞き、すぐに現場に駆け付けた大谷氏だが、警察官の発したあるひと言で、退避を決めた。緊迫のレポートをお届けする。

ビルの二階から煙が上がり、消防の消火水が煙に向かって放水されているのが確認できる【写真:“Show”大谷泰顕】
ビルの二階から煙が上がり、消防の消火水が煙に向かって放水されているのが確認できる【写真:“Show”大谷泰顕】

わずか300メートルの距離で爆発音 避けたかった二次災害

 3日に東京・新橋の雑居ビルで起きた爆発事故は、人通りの多い昼間のオフィス街を騒然とさせた。原因はガス漏れと見られているが、捜査は続いている。煙が立ち上がり、炎が上がる中、偶然、現場に居合わせたのが格闘技記者の“Show”大谷泰顕氏だ。耳をつんざくほどの爆発音を聞き、すぐに現場に駆け付けた大谷氏だが、警察官の発したあるひと言で、退避を決めた。緊迫のレポートをお届けする。

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「ドーン!」。3日午後3時過ぎ、打ち合わせが終わって、新橋駅界隈(かいわい)を歩いていると、どこからともなく大きな爆発音が耳に入ってきた。

 いったい何が起こったのか……。その段階で詳細までは分からずにいたが、何かが爆発したことだけは把握することができた。

 そのまま立ち止まってスマホを触っていると、2、3分後にはパトカー、そして消防車がけたたましいサイレン音を鳴らして目の前を通り過ぎていく。

 慌てて手元のスマホを手に取り、検索画面を表示させ、「新橋 爆発」と検索をかける。すると案の定、爆発があって、その場に多くの物が散乱している画像が出てきた。

「新橋の2階がいきなり爆発した」

 画面上にそんな投稿が表示され、改めて爆発が起こったことを確認。現場がどの程度の状況になっているのか、気になった。

 ふと周囲を見渡すと、150メートルほど離れた場所にいた数人が、ある一定の方角を向きながら話しているのが見えた。なかには指をさしている人も見える。それでもすぐには足を進めることができず、検索をしながら情報収集をしていた私は数分後、現場に向かって歩き始めた。

 一つ目の角を曲がった場所で、150メートル先に黒煙が上がっていることが目視することができた。自分が爆発音を聞いた場所から、わずか300メートルほどしか離れていない。

 驚いたのは、私が思っていた以上に大量の黒煙が上がっていたことだった。

 規模は全く違うものの、2001年の同時多発テロで世界貿易センタービルから上がっていた煙の映像を思い出した。

 何が起きたのか、知りたい欲求にかられ、自然と雑居ビルに向かって足が動いた。取材のジャンルこそ違うが、明らかな事故現場を目の前にして、何もせずにその場を離れてしまうことは許せない意識が働いていた。

 一方で、冷静になっている自分もいて、「二次災害に巻き込まれて、人様の手をわずらわせることだけは絶対に回避すべし」との意識も強く持っていた。

 現場に最接近すると、すでに警察や消防が到着し、現場で救助活動に取りかかっていた。ただ、まだ規制線が張られるところまでは行っておらず、様子を見守る人も多かった。「危ないから下がってください!」とのアナウンスが呼びかけられていたものの、私を含め、スマホでその場の様子を撮影していた人たちも、そこまでの危険を感じていなかったのが本音だろう。

 目の前で消防車が爆発したビルの2階に向けて、消火水を浴びせ、路上には散乱した爆発物が散らばっていた。

警察や消防の仕事ぶりに敬服 「本当に心強かった」

 早くその場から離れないといけないと思ったのは、警察官の発したひと言があったからだった。

「(煙に)有害物質が含まれている可能性がありますので下がってください」

 混乱状態にあった現場で、この言葉は重く響いた。私は二次災害への恐怖を感じ、身勝手な取材根性と好奇心に任せて無意識に近いまま現場に立っていたことが危険な行為だと気づかされた。

 その場にいたのは5分程度だったが、そのわずかな時間ですら着ていたシャツから露出した肌の部分に、煙によるススの匂いがこびりついていた。長居は無用と判断し、雑居ビルに背を向けた。

 それにしても、敬服したのはこの国の警察や消防の仕事ぶりの優秀さである。東日本大震災の際にも見聞きしたが、とくに有事の際のテキパキとした動き方は、傍から見ていても本当に心強かった。

 当たり前の話と言ってしまえばそれまでだが、いかに普段から事故を想定した訓練をしているのかがダイレクトに伝わってきた。それを目の当たりにしたことが、率直な驚きだった。

 夕方になると知人から連絡があり、地上波のニュース番組に私自身が映っていたと告げられた。

 頭の片隅にまた、事故のことが浮かんだ。帰宅後、改めて新橋で何が起こったのかを調べると、4人の重軽傷者がいることを知った。さらに、近くに迷惑系YouTuberがいたことも……。

 事故が身近で起きたとき、人々は何を考えるのか。そして、私はどのように行動すべきなのか。この経験で多くのことを学んだ気がする。

次のページへ (2/2) 【動画】すさまじい煙の中、消防隊が到着…事故現場付近に居合わせた記者が撮影した実際の動画
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