【医療の現場から】PCR検査は増えるのか(後編) なぜ偽陽性、偽陰性の結果出るのか詳細

どこからを陽性と判定すべきか

 偽陽性ではありませんが、非常に微量しかウイルスがない場合でもDNAをどんどん増幅して陽性と“判定”することが問題になることもあります。PCR検査は陽性、陰性と出てくる判定だけで、単純にその人の状態を判定できる検査ではないのです。

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 こういうこともあります。現在の厚生労働省が示している陽性の判定基準では、1つの検体で検査を2つ並行して行っているので、そのうちの1つが陰性もう1つが陽性との結果になることがありますが、その場合は陽性という判定を出します。実は陰性の方が正しく、陽性はたまたまの陽性であったとしても、その逆であったとしても本当にどちらが正確な結果かはわからないのです。なのに、入院患者の検査でそういう結果が出た場合、陽性と判定せざるを得ずし、症状がなくても退院が1か月近くも長引いている例が少なからずあると思われます。

優先すべきは重症者、重篤者を少なくすること

 そうした方々のフォローも大切ですが、それ以上に今優先すべきは重症者、重篤者を少なくすることではないでしょうか。それは、PCR検査の数をいたずらに増やして軽症者の数を把握することではないと思います。検査、臨床それぞれの現場の負担を減らし、本当に治療、対処の必要な人に注力する体勢を整えることではないでしょうか。

 今、医療現場も混乱しています。交通整理をして混乱をなくすことを優先すべきです。闇雲にPCR検査を増やしたのでは、現場の負担が増すばかりで“検査崩壊”してしまうのでは、と私は危惧しています。そうならないためには、みなさんもコロナを怖がりすぎないでいただきたい。先日、東京都が陽性率(直近7日の平均)を発表しましたが、これほどコロナと疑われる人だけに絞って厳密な検査をしていても、5月7日で7.5%。つまり、ほとんどの人がコロナ陰性なのです。みなさんには冷静になっていただきたいと思います。

□西村秀一 (にしむら・ひでかず)1955年9月8日、山形県新庄市生まれ。1984年、山形大学医学部医学科卒。米国疾病予防管理センター(CDC)客員研究員、国立感染症研究所主任研究官などを経て2000年、仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長就任。専門は呼吸器系ウイルス感染症。訳書に「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」(みすず書房)、「豚インフルエンザ事件と政策決断ー1976起きなかった大流行」(時事通信出版局)など。

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