下町本屋の“名物”配送車、50年超でも現役バリバリ 親子2代で乗り継ぎ「家族みたいなもの」

下町の本屋で親子2代が乗り継ぐ“名物”配送車がある。日産の名車、ダットサン・ブルーバード510だ。バン型の1台は、50年以上、元気に走り続けている。

名車ダットサン・ブルーバードは下町の本屋の名物だ【写真:ENCOUNT編集部】
名車ダットサン・ブルーバードは下町の本屋の名物だ【写真:ENCOUNT編集部】

JR金町駅から徒歩2分、戦後まもなく創業「太洋堂書店」の配送車

 下町の本屋で親子2代が乗り継ぐ“名物”配送車がある。日産の名車、ダットサン・ブルーバード510だ。バン型の1台は、50年以上、元気に走り続けている。(取材・文=吉原知也)

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 東京・葛飾区のJR金町駅から徒歩2分にある「太洋堂書店」。地域に愛される街の本屋だ。その“顔”として親しまれているのが、このダットサン・ブルーバードだ。

 3代目店主でオーナーの田口学さんによると、同店は戦後間もない頃に貸本屋として営業を開始。1952年頃に、新刊を扱う書店に業態を変えたという。ダットサン・ブルーバードは、71年から配送車として走り始め、現在も現役バリバリだ。ボディー部分には「金町 太洋堂書店 自家用」の文字が入っており、レトロな雰囲気を醸し出している。

 当時の書類はしっかりと保存されており、「『ダットサン ブルーバード バン 1600』と書いてありますね。父が買って、私は3歳の頃から乗ってきました。エンジンの調子はいいですよ。クーラーが付いていないので暑い日は乗らず、雨の日もサビが気になるので乗らないようにしています」と大事に取り扱っている。定期購読の雑誌の配達や、学校・教育施設への辞書の配達などで活躍を見せている。

 配送のため運転していると、「まだ走っているんだね」「懐かしいね」と声をかけられ、旧車ファンらに写真撮影を求められることも。そのたびに、希少性とともに、地元に愛されていることを実感するという。

 実は、一度、“引退”を考えたことがあった。6年前のことだ。

「車検に出すタイミングで、父が亡くなりました。もう1台、軽自動車の配送車があるので、『もうやめる?』という話が出て……。自分自身考えたんです。『父からこの本屋を引き継ぐのなら、このクルマもセットだろう』って。3歳から乗せてもらっていて、若い頃に土手で運転の練習をしたのもこのクルマです。もう家族みたいなものです。守っていく、その責任を持たないとなと思いました」。こうして一家の大事な1台を受け継ぐ決意をした。

 右側のブレーキランプについてちょっとした親子のエピソードがあるという。

「父がぶつけて壊してしまい、応急処置で直して乗っていました。それで米国から部品を輸入して、修理した矢先に、今度は私がやっちゃって(笑)。粉々に壊れちゃいました」。それでも、オーナーズクラブのつてを頼り、別のオーナーが持っていた廃車予定の1台から部品を譲り受け、しっかりと修復できた。

 ところどころの傷やサビもいい味を出していて、まさに“生きている”。YouTubeでは、田口さんが制作するなどした紹介動画が公開。後世に伝える取り組みも行っている。

 本を届けるという使命感を持ち、今日も安全運転。「走っていると皆さんに声をかけていただくこともあって、ものを大事にすることの大切さを実感しています。家族のようなクルマです。古い車ではありますが、動く限り乗り続けていきたいです」と実感を込めた。

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