【週末は女子プロレス♯84】女子プロ最強を目指す橋本千紘 チャンス拡大で「いける気しかしない!」

センダイガールズプロレスリング(仙女)の橋本千紘は学生時代、アマレスで数々の輝かしい実績を上げてプロレス入り。デビューから1年で仙女トップのワールド王座を奪取以来、団体の顔として活躍中だ。追い求めているのは、女子プロレスラー最強の座である。

橋本千紘はプロレスラーになるためアマレスを始めた【写真:新井宏】
橋本千紘はプロレスラーになるためアマレスを始めた【写真:新井宏】

アマレスでの実績とともにプロレス入りし、1年でワールド王座を奪取

 センダイガールズプロレスリング(仙女)の橋本千紘は学生時代、アマレスで数々の輝かしい実績を上げてプロレス入り。デビューから1年で仙女トップのワールド王座を奪取以来、団体の顔として活躍中だ。追い求めているのは、女子プロレスラー最強の座である。

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 そもそもアマレスを始めたのも、プロレスラーになるためだった。小学生の頃、CS放送GAORAでプロレスの魅力にはまった。当時、女子プロレスでは長与千種率いるGAEA JAPANが放送されており、「将来はプロレスラーになりたい」と思うようになった。2005年にGAEAは解散してしまったが、翌年に長与の弟子、里村明衣子が仙台に女子団体を旗揚げ。「どうせやるなら(GAEAのように)厳しいところでやりたい」と、仙女の入門テストに応募したのである。

 そこで橋本は、新崎人生社長(当時)から「中学を卒業するまで柔道かアマレスをやりなさい」とのアドバイスを受けた。合格は合格だが、正式入門は卒業後。それまでの時間、格闘技を学んで準備しておいてほしいという意味だろう。偶然、地元にはアマレスのクラブチームがあった。もしもそこが柔道だったら柔道をやっていただろうが、彼女は迷わず近所のアマレスクラブに入会した。

 するとそこは、全国大会で上位入賞するような選手たちが集まる強豪チームだった。「同い年の子が全国2位とか、優勝した子もいましたし、そこですごく刺激を受けて、こっちの世界でもやってみたいと思ったんです」。

 アマレスに明け暮れ、プロレス入りはどこかへ飛んでしまっていた。まわりは強豪ばかりで、自分も強くならなければと感じた。決して忘れていたわけではないけれど、アマレスに集中するため、目の前の目標を達成するために、あえてプロレスを見ないようにしていたという。

 そして高校では全日本選手権3位、日大レスリング部で世界学生選手権3位などの好成績を残した。しかし大学卒業とともにレスリングからの引退を決めた。その先については何も考えていなかったという。

「やりたいこともないし、べつに就職活動もせず、結婚しようかなとも思ってたんですけど、何かが引っかかってて……」

 15年4月15日、橋本は後楽園ホールの「カルロス天野引退興行」に足を運んだ。久しぶりのプロレス観戦で、テレビで見た元GAEAの選手たちが躍動していた。「プロレスっていいな」とあらためて感じ、プロレスへの思いが再燃したのである。

 大会終了後、参戦していた里村と食事する機会があった。そこで里村は、中学生時代に入門テストに合格していた橋本に聞いてみた。

「いまもまだ、プロレスラーになりたい?」

「なりたいです!」。橋本は即答した。もしかしたら、この言葉をどこかで待っていたのかもしれない。その場で仙女入りを決め、道場に行く日まで即決した。「誰にも相談せず、家に帰ってから親に怒られた記憶があります(笑)」。

 小学生時代からの夢に戻ってきた橋本だが、デビュー当初はアマレスとプロレスの違いに戸惑うことも多々あった。「基礎の部分では同じなんですけど、受け身に苦労しましたね」。アマレスで受け身を取れば、それは敗戦に直結する。プロレスでは逆に、受け身を取ってからがスタートの部分がある。そのあたりに大きな違いを感じたのだ。

 それでも、逸材は逸材。デビューから1年で里村を破り第2代仙女ワールド王者となった。しかしその頃、鼻をへし折られる出来事もあったという。「アジャ・コング選手から『オマエ、プロレスに(悪い意味で)慣れてるんじゃねえよ!』って言われたんです。その言葉でハッとしましたね。そうだよな、私のバックボーンをどんどん出さなきゃと思いました」。

 背筋が伸びたという橋本は、アジャと仙女至宝のベルトをめぐり、アマレスのバックボーンを武器に闘った。17年1月にベルトを奪われ、4月の後楽園で奪回。師・里村も激闘の末に成し遂げた“アジャ超え”をついにやってのけたのだ。そんな闘いの中から定着させたのが、オブライトと呼ばれるジャーマンスープレックスホールドだ。

 オブライトとは、かつて全日本プロレスなどで闘った大型外国人レスラー、ゲーリー・オブライトのこと。橋本のジャーマンは他と違って見えるジャーマンで、女子の枠を超越、まるでオブライトのようなスーパーヘビー級の迫力がある。そんなところからいつの間にか、橋本のジャーマンはオブライトと呼ばれるようになった。

「ジャーマン自体は意識して使い始めたんですけど、『オブライトみたいだ』とよく書かれるようになって調べてみたら、ホントにすごい人で光栄でした。いまはこの方を越えられるような使い手になりたいと思ってますし、ジャーマンを得意とするレスラーも多いので、メラメラ燃えますよね。負けられないです」

橋本千紘は海外進出を目指している【写真:新井宏】
橋本千紘は海外進出を目指している【写真:新井宏】

「私にはチャンスしかないと思ってます」

 現在、大将の里村はWWEを主戦場としており、英国を拠点としている。里村のいない仙女となって久しく、トップの橋本には自然と団体を牽引する役割が課せられている。

「引っ張るという意識はあまりないんですけど、いろいろ任せられることで何かと言われることも多いんですよ。そうなるとやっぱり負けたくないというか、(リング内外で)里村さんへの対抗心も出てくるんですよね。とにかく心配かけてはいけないし、安心してもらいたいとの気持ちがあって、目の前にあることを一つひとつ必死にこなしてきました」

 昨年、橋本は仙女2冠王から陥落した。10・10新宿でDASH・チサコ&松本浩代組に敗れタッグ王座を失い、12・4大阪で朱崇花にワールド王座を明け渡した。「無冠になってすぐ、里村さんから『仙女のベルトの価値を上げてきたのは紛れもなく橋本千紘だから自信を持っていいし、いまは心も体も落ち着かせて』と言われたんですよ。そしたら一瞬気が抜けて、自分のやってきたことはこれでよかったんだなと思えてすごくうれしかったんです。でも、休んでる暇はないなって」

 年末、橋本はDDTで格闘家・青木真也とプロレスルールで一騎打ち、しかもオブライトで勝利した。また、仙女タッグ王座を落とした優宇とのチーム200キロでOZアカデミータッグ王座を奪取。今年最初となる仙女のビッグマッチ、1・15仙台サンプラザではチーム200キロで空位となっているタッグ王座決定戦に臨む(vs水波綾&愛海組。朱崇花の仙女ワールド王座には岩田美香が初挑戦)。

 さらにはここにきてスターダムとの対戦が勃発。昨年12月29日、橋本がDDTで青木と対戦していた頃、スターダム両国大会で朱里が橋本の来場を呼び掛けたのだ。橋本と朱里は橋本の仙女ワールド王座をかけて20年3・8新宿で対戦、橋本がオブライトで王座防衛しており、対戦が実現すれば、20年3・28以来となる。

 そして橋本は、スターダム1・6後楽園に登場。朱里との一騎打ちが決まるかと思いきや、昨年4月15日の「後楽園ホール60周年還暦祭」(試合後、朱里と橋本がお互いのベルトを掲げリング上で視殺戦)で対戦し苦汁を味わわせたMIRAIからのシングルマッチを突きつけられた。これにより、まずはスターダム2・4大阪でのMIRAIvs橋本が決定。朱里との対戦も、いずれは実現させなければならないだろう。

「無冠になっても、すでに青木戦、OZでのタイトルマッチも決まってましたし、そのチャンスをものにできました。その後も、私にはチャンスしかないと思ってます。このチャンスをつかむにはいままで以上にやらないといけないと思ってますし、自分自身、今年はなにかしらのパワーを感じてるので、ここはどんどん行くべきだと思います。いける気しかしないんですよ!」

 橋本は15年11・12後楽園でスターダムとのシングル勝ち抜き戦に先鋒として登場、いきなり3人抜きをやってのけ観衆の度肝を抜いた。また、16年6・5名古屋に乗り込みジャングル叫女に勝利。17年3・9後楽園の紫雷イオ(現イヨ・スカイ=WWE)デビュー10周年記念試合で岩谷麻優と組み、イオ&里村組と対戦するなど、スターダムでも実績がある。約6年ぶりのスターダム参戦で何が生まれるか、大いに期待されるところだ。

 また、橋本には優宇とのチーム200キロで海外にも飛び出したいとの野望もある。「優宇さんがよく海外に行かれてるので、チーム200キロで海外進出できたらおもしろいだろうなとか考えたりするんですよ」。考えてみれば、優宇と組んだのは仙女初の海外興行、19年7・27英国マンチェスターがきっかけだった。このときこのチームが継続されるとは思いもしなかったが、2人合わせて200キロに届こうかという体重はそれだけでド迫力。ここでつかんだ感触が現在につながっているだけに、いずれはこのチームでの海外進出にも期待したい。もちろん、彼女の気持ちは仙女にある。仙女を拠点に外部でも闘いながら仙女の名前を広めていきたいと考えているのだ。

「仙女を大きくしたい。その気持ちでずっとやってきてますし、私のプロレスはイコール仙女なんですよ。いまのプロレスってホントにいろいろあって幅広いですよね。これもプロレス、あれもプロレスだという感覚なので否定はしないですけど、だからこそ、なおさら自分の信念を持ったプロレスを貫き通すという思いが強いです」

 橋本が目指すのは、最強の女子プロレス。最強の女子プロレスラーを仙女から発信させていくつもりだ。

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