元フジ福原直英アナ、競馬に捧げた“第2の人生” 武豊の事務所と業務提携した理由

フジテレビを今年3月に退社したアナウンサーの福原直英は、「競馬番組の司会をやりたい」と志して入社したほどの競馬好き。現在は、日本が世界に誇るレジェンドジョッキー・武豊騎手の個人事務所と業務提携を結びフリーアナウンサーとして活動している。退社から現在まで、どのような歩みだったのかを本人に聞いた。

フリーアナウンサーとして充実した日々を送る福原直英【写真:荒川祐史】
フリーアナウンサーとして充実した日々を送る福原直英【写真:荒川祐史】

フリー転身後、一番の思い出は日本ダービーの口取り

 フジテレビを今年3月に退社したアナウンサーの福原直英は、「競馬番組の司会をやりたい」と志して入社したほどの競馬好き。現在は、日本が世界に誇るレジェンドジョッキー・武豊騎手の個人事務所と業務提携を結びフリーアナウンサーとして活動している。退社から現在まで、どのような歩みだったのかを本人に聞いた。(取材・文=猪俣創平)

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 福原は、フジ時代から出演する「武豊TV!II」(フジテレビONE)のナビゲーターを現在も続けている。レギュラー出演する番組はこの1本ではあるものの、自らが思い描いた充実した日々を過ごしている。生粋の競馬好きが選んだ第2の人生、メインとなる仕事は競馬関係だ。

「お声がけいただければ、競馬だけでなく何でもやるという心構えでやっています。この間も自分で決めて、取材も兼ねて『札幌記念』を北海道まで見に行きました。やっぱり現場にいないと分からないことがありますから。その後は静内に行ってサマーセールも見てきました。フリーになってから初めての夏ですけど、スケジュールを自分で決めるという意味でも文字通りの“フリー”ですよね」

 フジ時代から競馬班として長年現場を取材してきた福原。好きなものを中心に仕事をする現在は、うらやましがられることも増えた。「先日もある調教師さんに『福原さん、本当に楽しそうですね』と言われまして、『おかげさまで楽しいです』と言っておきました(笑)」と、充実した日々を送っている。

 フジを退社し、武豊騎手の個人事務所と業務提携を結んだ。事務所に所属しないフリーアナウンサーの道を選んだのは、一つの提案がきっかけだった。

「サラリーマンは会社という所属を離れたら、そこには何も残らない。いくら自分は知られていると考えていても全然そんなことはないと私は思っています。もし『福原に仕事を頼もう』となっても連絡先が分からないでしょう。そこで、会社を辞める前にこれからの身の振り方を武豊騎手に相談したんですよね。そのときに、『うちの事務所で手伝えることがあれば』と提案をいただいて、本当にありがたい話だったので、業務提携という形でお世話になることにしました」

 番組でも長く共演し、人生相談をするほどの武豊騎手との間柄だが、福原にとっては今も緊張することがあるほど偉大な存在なのだという。

「端から見ると、武豊騎手と僕に強いつながりがあるように見えるのかもしれないですが、尊敬する大騎手です。その思いがどんどん強まるばかりで、会えば会うほど、時間がたてばたつほど、尊敬の念が高まります。業務提携とかそういうことを抜きにして、こういう人と会えたというのが僕にとってはすごく幸運でした」

 日本が世界に誇るレジェンドジョッキー・武豊。その歩みを間近で見てきたがために“放送事故”になったこともあった。

「武豊騎手が2010年の春に大けがをして、その後は勝ち鞍(くら)が減ってしまった時期がありました。でも、成績が低迷しても決して投げやりにならず、誰かのせいにするわけでもなく、そのことをいつまでも愚痴るようなこともない。そんな姿を見ていたから、キズナがダービーを勝ったときに僕は放送席で泣いたんですよ。『すごい、この人!』と。あのとき番組でゲストの方が『武豊騎手、ダービー5勝目すごいですね』と言ったんですけど、僕は『これまでの4勝とは違うんです!』と言って、ダーっと号泣してしまいました(笑)」

福原直英はフリー転身後「一番の思い出」も明かした【写真:荒川祐史】
福原直英はフリー転身後「一番の思い出」も明かした【写真:荒川祐史】

石橋貴明からも激励された“ダービー実況”

 競馬中継の司会だけでなく、レース実況も数多くこなしてきた福原は、昨年まで4年間「日本ダービー」のレース実況を担当した。その名誉ある仕事との巡り合わせもまた幸運だった。「競馬班の年次からいくと、ダービーのレース実況をできる可能性はゼロだったんですよ。でも、人事異動とかいろんなことが重なって、実況できるようになりました」。

 18年に初めて担当した日本ダービーのレース実況は「特別でした」と述懐する。「競馬場でとんねるずの石橋貴明さんにお会いして、『福原くんがやるの? すごいね! 実況頑張って!』と言われました。『実況頑張って』なんて言われたのは、他のG1レースを含めてもダービーだけでした。みんなにそうやって言われてしゃべるのがダービーの実況なんだと……。すごく良い経験ができたと思います」。

 フリー転身後の一番の思い出も競馬だ。その貴重な体験は“局アナ”では決してできないものだった。

 今年5月29日、東京競馬場で開催された3歳馬の頂点を決する「日本ダービー」。若駒たちの頂きに立ったのは、武豊騎手を背にしたドウデュースだった。武豊騎手にとっては6度目の“ダービー制覇”だが、この勝利はオーナーである松島正昭氏の夢がかなった瞬間でもあった。

 武豊騎手と長年親交のある福原は、松島オーナーとも仕事で知り合う機会があり、ホースマンが憧れる「日本ダービー」勝利後の口取り式に参加できた。「写真だと一番左端にいるんですけど、口取りに参加できたのは至福でした。あれはもう……」と、言葉にできないほどの感動を味わった。

「おそらく会社を辞めていなければ、昨年まで4年連続でやっていたので、既定路線だと今年のダービーのレース実況は僕だったんですよ。でも退社することになって、後輩の倉田大誠アナウンサーが実況しました。退社したタイミングで松島オーナーと武豊騎手でダービーを勝った。それを競馬場のスタンドで見て、下(本馬場)に降りていって写真を撮る。ちょっとすごい巡り合わせだなって……。フリーになってここまでで最もよかったのは日本ダービーの口取りに参加できたこと。従来の立場なら絶対できなかったことです」

 フリーに転身したことで得られたかけがえのない時間だった。パリ・ロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(10月2日)への挑戦を予定するドウデュース。福原は「もちろん行きます」と、当日は現地で応援するつもりだ。

 学生時代から北海道の牧場見学に出かけ、フジテレビの競馬中継や実況を数多く経験してきた福原。自由なフリーアナウンサーとして、今後も愛する競馬の魅力を伝えながら満喫していく。

□福原直英(ふくはら・なおひで)1967年7月24日、東京都出身。92年、早稲田大学政治経済学部卒業後にフジテレビ入社。アナウンサーとして「めざましどようび」の総合司会や数々の情報番組やバラエティー番組を担当。「スーパー競馬」、「みんなのKEIBA」、「BSスーパーKEIBA」など競馬番組の司会や実況を務める。2022年3月にフジテレビを退社。現在は武豊騎手の個人事務所「テイク」と業務提携を結びながらフリーアナウンサーとして活動。

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