屈指の名作「ククルス・ドアン」劇伴は半沢直樹の作曲家 ガンダム音楽の制作過程とは

ジオン公国軍のマ・クベ【写真:(C)創通・サンライズ】
ジオン公国軍のマ・クベ【写真:(C)創通・サンライズ】

「自分の死も認められない男」と分析、マ・クベに捧げる新曲も

 2作連続でガンダムの映画音楽を担当。今作では気になるキャラクターもできたという。

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「ジオン公国軍のマ・クベです。ある計画を進行させている中心人物で、ちょっといけ好かない。必要以上にインテリジェンスを気取っているスノッブな男です。シニカルな笑みを浮かべている彼が登場する際に流れる曲(マ・クベをイメージした)『暗雲の気配』という曲を作りました。欲にまみれ、ドロドロした中でうごめいている。停滞し続けているさまは、普段はクラシックの場で演奏されているサクソフォン奏者に表現していただきました。地を這うように生きている、彼はきっと死も認められないんじゃないかな」

 テレビ作品と同様に映画の終盤にも、「愛するものを守ること」についての提示がある。服部氏はそこを重視している。

「ドアンはザクに乗り込んで侵入者を撃破する文字通りの戦いのほかに、子どもたちが自給自足できるよう、畑の耕し方などの生きる術を子どもたちに教えています。戦災孤児である彼らに寄り添い、精神的に支えることもドアンにとっては守ること。アムロはドアンから『君はこの子どもたちのために戦えるか。君の仲間とでも…』と問いかけられ、言葉を失ってしまいます。でも、物語の最後には『ドアンの身体に染みついた戦いのにおい』を消すために、ドアンが操っていたザクを海に投げ入れるんです。子どもたちからは非難されますが、ここには『武器を持って戦うだけが、守ることではない』というメッセージが込められているように感じます。映画を見た子どもたちが大人になった時に、武器を持つことではない解決策を見つけてくれたらと願っています」

 作品を解釈し、イメージして作り上げた楽曲の数々。服部氏は、それらが劇場に足を運んだ人たちの心に刻まれることを願っている。作品に込められたメッセージとともに。

□服部隆之(はっとり・たかゆき)1965年11月21日、東京都出身。パリ国立高等音楽院を修了し、1988年に帰国後、福山雅治・椎名林檎などのポップスから、鮫島有美子・武満徹などのクラシックまで幅広いアーティストのアルバム、コンサートなどの編曲を手がける。映画においては「蔵」(96年)、「誘拐」、「ラヂオの時間」(ともに98年)の3作品が日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。テレビドラマでは「HERO」、「のだめカンタービレ」、「半沢直樹」、NHK大河ドラマ「真田丸」などの音楽を手掛けた。2015年に映画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の音楽を担当。このほかCMやゲーム音楽など幅広いジャンルで作曲家として活躍している。

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■映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」オリジナルサウンドトラックは、アップルミュージックなどの音楽配信サイトなどで試聴可能。配信サイトの一覧はこちら(https://lnk.to/g-doan-OST)から。

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