屈指の名作「ククルス・ドアン」劇伴は半沢直樹の作曲家 ガンダム音楽の制作過程とは

ガンダムとザクが対峙する映画の一場面【写真:(C)創通・サンライズ】
ガンダムとザクが対峙する映画の一場面【写真:(C)創通・サンライズ】

大胆にアレンジした「苦き故郷」 アムロの絶望を表現

 ドアンとの戦いに敗れ、ガンダムを失ったアムロ。広大な島を歩いてガンダムを探すシーンには、テレビ作品で使用された曲を大胆にアレンジした曲「辿る記憶(機動戦士ガンダムより「苦き故郷 M-45」)」を生み出した。

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「任務のため、島の強い日差しの中で一心不乱にモビルスーツを探すアムロ。あてもなく歩く中で疲労と孤独が広がっていきます。ここでは渡辺岳夫先生の『苦き故郷(M-45)』をアレンジさせていただきました。癒やしの音色のような曲を厳しいマイナーに落とし込み、チェロが厳しい音を奏でます。映画ではしつらえを変えアムロの葛藤や絶望を表現しています。ファンの方に気に入っていただけたらうれしいです」

 テレビ作品の視聴者が驚く仕掛けは、ほかのシーンにも散りばめられている。一方で「水戸黄門の印籠のように変えられないものもある」と、服部氏は言う。

「松山祐士先生の『ガンダム大地に立つ』は、国内外でガンダムが登場する音楽として親しまれているものです。僕らしさも入れたいなと思いながら、やはり『パパパパーン』と高らかに響く金管楽器の音をファンの人は待っているかな…と。原曲を大切にしながら制作したので、映画のクライマックスで流れる『ガンダム登場』も楽しみにしていただきたいです」

 服部氏が「水戸黄門の印籠のように」と表現したガンダムのゆるぎない音楽。放送から40年以上経っても愛され、またテレビ放送された1話がスケールを拡大して映画化される事実について、音楽面ではどう感じるのだろうか。

「富野由悠季監督が生み出した「機動戦士ガンダム」の作品力に突き動かされた渡辺先生、松山先生が思いを真剣に伝えようと尽力され、素晴らしい結果になったのだと思います。多くの人にとって未知の存在である宇宙を何とか音で表現しようと、リズムシンセサイザーを効果的に使われたり、試行錯誤があったと思います。リズムが多くて情緒のある曲が多い渡辺先生と、クラシカルで壮大な曲の松山先生は師弟同士。お互いを認め合っていたからこそ生まれた奇跡です」

 服部氏は、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」(2015年)で劇伴を担当したことをきっかけに、ガンダムと向き合うようになったと語る。

「子どもの頃は『宇宙戦艦ヤマト』の世代でした。トロンボーンを任せてもらった吹奏楽部ではヤマトの主題歌を演奏したりして。17歳の時にパリに音楽留学していたこともあり、日本のガンダムブームは知りませんでした。ただ、アムロの宿敵であるシャア・アズナブルが形成されていく様子を追った『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の音楽を手掛けるにあたり勉強し始めました」

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