コロナ禍でNPOが苦境…対面活動できず4割が収益減「このままでは解散もやむ得ない」

法政大学大学院の柏木宏教授【写真:ENCOUNT編集部】
法政大学大学院の柏木宏教授【写真:ENCOUNT編集部】

NPOは「隙間産業」 少数の声を届ける役割

 政府や自治体がNPOなどに求める事業の応募は、だいたいの年間スケジュールが決まっており、通常コンペを経て担当のNPOが決まる。複数のNPOが競合すれば、「落ちることのほうが多い」(柏木氏)。コロナによる対面の自粛で、せっかく受注してもイベントが実施できなければ、自治体からの収入は入らない。「今年取れたから来年取れるとは限らない。多くの場合は1年契約」と競争は激しい。

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 特に小規模団体は地域に密着し、もともと採算度外視の傾向が強くなっている。ボランティアの受け皿となり、善意で社会的な弱者を支えている。それでも事業として存続できなければ、人件費や家賃、光熱費など、最低限の支払いもできなくなってしまう。

「予算が小さい団体はほとんどがボランティアでやっている。お金がないことが前提。オフィスを間借りしているとか、自分の家をオフィス代わりにしているところもある。少ない人数で回しているからこそ、(収入の減少で)経営の見通しは厳しく、解散がやむを得ないところも出てくる」と柏木氏は警鐘を鳴らした。

 全国に存在するNPOの数は5万程度で、ここ数年大きな変動はないという。NPO法人の中でも、認定NPO法人は寄付によって所得税や法人税が控除できる優遇措置もある。しかし、ほとんどのNPOにはあてはまらない。「オンラインに切り替えたり、新事業に転換する発想や実行力が少ない団体もあるかもしれない」と課題も見つめるが、オンライン自体に意味をなさない活動も多く、今後は次々とつぶれていく事態が生じてもおかしくないと訴える。

「どこの団体もできたときは、1人2人、数人がこんなことやらないかと始める。NPOは隙間産業って言う。大きな課題は行政主導でやっている。NPOはその隙間の中でこぼれた課題を探してくる。子ども食堂もそう。家で食べるのが難しい子どもが見出されている。日本もだんだんと格差が広がってくると、それに伴ったさまざまな問題が派生する。それに着目するのは最初は少数の人間。そこで着目されたことがすべて大きくなるとか、社会的に重要だとならないかもしれないけど、NPOは社会の安全性を担保していく上で必要。そうした活動が育っていくような素地を作っていくのは大事だと思います」

 コロナ禍での困窮や孤立は、大きな問題になっている。それを救おうと懸命に動いている人たちがいる。柏木氏はNPOを金銭的に支援する中間組織のサポートも期待。困難な時期だからこそ、力を合わせる必要がありそうだ。

□柏木宏(かしわぎ・ひろし)1953年、東京生まれ。同志社大学文学部卒業後、渡米。社会福祉や法律関係の非営利組織(NPO)の職員や理事などを歴任。2003年に帰国し、大阪市立大学大学院創造都市研究科に赴任。現在は法政大学大学院公共政策研究科教授として、日米のNPOのマネジメントをメインテーマにNPOの運営の現状と課題について調査研究を実施している。「コロナ禍における日米のNPO:増大するニーズと悪化する経営へのチャレンジ」(明石書店)など著書多数。

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