【週末は女子プロレス♯29】コミカルヒールの第一人者は「千の技を持つ女」 前代未聞の引退試合から8年の今

77人が参戦したGAMI引退試合(2013年12月30日、後楽園ホール)【写真提供:プロレスリングwave】
77人が参戦したGAMI引退試合(2013年12月30日、後楽園ホール)【写真提供:プロレスリングwave】

「あそこで人生が大きく変わった」アルシオン移籍

「里村ってリングに上がる前にお祈りするじゃないですか。里村を呼んだのは、あれを邪魔したかっただけなんです。だからリングに上がる前に何度も目の前を往復して邪魔しましたよ(笑)」

 ある意味、目的は達成した。が、リング上ではデスバレーボムをくらい、あっさりフォールを許してしまう。

「空気読め!って感じですよ。だから退場せずに試合を続けました。その後のつくしにも負けた? ああ、そうやったなあ…」

 結局、この試合でGAMIは9人に負けた。それでも敗れるたびにだだをこね、しまいにはGAMIに勝った選手を失格にまでしてしまう始末。なんという横暴! そして試合の真っ最中に休憩時間を挟み(こちらも前代未聞!)、トータルタイム1時間39分27秒。最後は桜花に“伝家の宝刀”目突きからの首固めでフォール勝ち。終わってみれば77人が参戦し、鈴木みのる、秋山準までやってくる超豪華版だった。鈴木、秋山の招へい理由は「対戦してみたかったから」。すべてはGAMIの人脈とわがままのなせるわざだ。

「終わった後は(疲れ切って)さすがにもうやりたくないと思いましたね(笑)。やり尽くしましたよ。あれだけ好き放題やって、思い残したことありますなんて言うたら失礼よ(笑)。ホントはひとつだけ悔いがあったけど、WAVE10周年の大田区で長与千種さんに触れて、その夢もかないましたから、ホンマ、(選手として)やり残したことはないです」

 冒頭でも述べたように、このような引退興行は前代未聞、後にも先にもこれだけだろう。まさに空前絶後の大会だったのだが、幸い、配信で見ることができるという。会場であのパーティーに参加した方も、また未見の方も、ぜひあのときの衝(笑)撃を味わってほしい。

「ウチがいつも配信しているカンフェティストリーミングシアターというのがあって、配信チケット買って見られるようになります。ノーカットで入場テーマ曲もそのままやし、久しぶりに見てみたらおもしろかったわあ!」と、宣伝することも忘れないZABUN取締役。現役生活でこれが最も印象深い試合とのことだが、出来事で言えばLLPWからアルシオンへの移籍だと、GAMIは当時を振り返る。

「私って対抗戦時代の人間やけど、決して主役ではなかったし、目立ってなかった。このままここ(LLPW)にいててもどうなんやろ? みたいなのはボンヤリあったんですよ。そんな頃にヘッドハンティングされたやないですか。敵やしメチャメチャ嫌いやったけど、アジャ(コング)様が仕掛けるって面白そうやなって、ちょっと思ってしまった。それでアルシオンに移籍して、あそこで人生が大きく変わったと思いますねえ」

 アルシオンではプレーヤーとして注目を浴びるようになった。「千の技を持つ女」と呼ばれるようになったのも、独自の方法で技の研究に専念できる環境にあったから。さらにメガホンを武器にすることで、コミカルヒールという新路線を発掘した。

「ヒールやりたいって言ったのに、いつの間にかコミカルになってたから、なんかおかしいなと思って(笑)」

 関西弁でのアピールにより、メガホンでの殴打が笑いを誘ったのだ。凶器のはずなのに、コミカル色が強まった。本人の思惑とは若干異なったようだが、かえってこれが功を奏した。笑いの取れるヒールで、しかも技マニア。唯一無二の個性が開花したのである。

「女子プロレスにコミカルという場所を作った第一人者って自分で思ってるよ。自画自賛してます。女子のコミカルを確立させたなって、そこは自信ある(笑)」

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