27年前の伝説“1億円トーナメント”の舞台裏 仕掛け人が激白「決勝は高田×前田になったかも」

週刊プロレスの表紙を飾った「夢と1億円」

 そもそも論として、優勝賞金1億円というのはどうやってたどり着いた案だったのか。

「俺も宮戸ちゃん(優光元取締役)も自分のやれる範囲のことをやろうとするから、若干詰まっていたところがあったのよ…そしたら、当時の若手社員から『賞金額を1億円くらいにした方がインパクトは抜群ですよね?』って言われたのよ。でも結局その金を用意するのは私じゃん(笑)。でもアイデアは最高だったね。やっぱり斬新なアイデアは絶対に必要だったから」

 実際、その衝撃度は業界を震撼(しんかん)させた。通常は根回しや水面下での交渉があるのが当たり前の業界で、現金1億円を並べる生々しさ。絶大なる問題提起だった。

「その若手社員が言っていたのは、『テニスでもゴルフでも賞金を賭けた大会を開催しているから、他団体のエースに声をかけるなら、それなりの金額を用意しないと失礼。だったら1億円くらい用意すれば文句はないんじゃないですかね』って話だったね」

 しかしその段階で問題がすぐに算出された。それは「会社には現ナマは3千万円しかなかったこと」(鈴木氏)だった。

「残りの7千万円は私の兄が用意してくれたの。会見当日の朝、城南信用金庫の原町田支店に取りに行ったら、兄が取引をうまくやってくれて。7千万円を『借りまーす』ってジュラルミンのケースに入れて。当時の『東スポ』記者なんて本物かどうかを確認していたけど、本物だよ(笑)」

 1日に7千万円を借りて、利子はいくらだったのかが気になるところだが、鈴木氏は「よく分からない」と答えた。

「言われるままに返しただけ。多分、私の兄が払ってくれたんじゃないかな。あの時2人の警備員を付けたけど、それが1人5万円だった記憶が‥」

 27年前の会見だったが、実は記者もその会見を取材した1人だった。古い話だけに覚えていることは限られるが、金額が1億円という大金であるがゆえに、会見上が妙に物々しかったのを記憶している。

 そして翌週の「週刊プロレス」ではその模様が表紙に取り上げられ、目の前に並べられた1億円を前で、主要団体への招待状を手に持った鈴木氏が表紙になった。キャッチコピーは「夢と1億円」。

 だが、結果として招待状を送った5人は誰も参加せず、トーナメントは高田延彦に勝利したスーパーベイダーが優勝して閉幕した。

次のページへ (3/7) 幻の闘いを予想 決勝戦は高田延彦VS前田日明になった!?
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