【週末は女子プロレス#10】植松寿絵、GAEA復活出場の真相 一度固辞も同期説得で決断

GAEA一期生の(左から)永島千佳世、里村明衣子、植松寿絵【写真:新井宏】
GAEA一期生の(左から)永島千佳世、里村明衣子、植松寿絵【写真:新井宏】

リング内に足を踏み入れ「なんか召喚されているような気分でしたね」

 植松は現在、地元・静岡でスポーツジムのインストラクターとして働いている。身体を動かすことが仕事だから、コンディション作りには比較的容易に入っていけた。が、コロナ禍により大会の一年延期が決定。仕上げてきた肉体とは裏腹に、モチベーションがガクッと落ちた……。

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「一年後ということで、もう割り切りました。私の場合、1か月くらい前から集中して練習すればいいですから」

 ところが、今年に入ってからコロナ禍は収束どころか、さらに不透明な状況になってしまう。日時や会場が変更の連続。「KAORUさんの引退に間に合わなかったら意味がないし、GAEA復活は結局夢物語だったんだな」と、諦め寸前まで陥った。しかし、土壇場で6月13日の会場使用許可が下りる。「6・13はラストチャンス。やってもやれなくても、その日を最高に持っていこうと思いました」。

 そして迎えた当日、大会は無事に開催をみた。試合前、植松はリングチェックのため一足早くリング内に足を踏み入れた。「その瞬間、ただいまって思いました。なんか召喚されているような気分でしたね。そこで(レスラーの)スイッチが入りました」。久しぶりにペイントをし、前髪を逆立てた。試合が始まれば、得意の顔面ウォッシュで場内が手拍子に包まれる。それはまるで、現役時代がそのまま戻ってきたかのような光景だった。OGではない、プロレスラー植松寿絵がそこにいたのである。では、プロレスラーとしてもっとも印象に残った試合はなんなのだろう?

「デビュー戦、フリー一発目、引退試合というのが3大トップなんですよ。デビューと引退は当然として、私の場合はやっぱりフリー転向第1戦ですかね。というのもGAEAが解散してフリーになり、自分ではじめて取ってきた試合が、それなんですね」

 05年4月24日、東京・ディファ有明でのM’sスタイル1周年記念興行。植松は当日発表の「X」としてトーナメントに参戦。この日は栗原あゆみデビュー戦で、植松は1回戦でGAMIを破った栗原の相手としてサプライズ登場。テーマ曲が鳴った瞬間の客席の反応を、今でもハッキリ覚えている。

「私はGAEAの劣等生だったので、フリーでどこまでできるのかすごく不安だったんです。でも、テーマ曲が流れて名前がビジョンに映し出されたときに会場が『ウォー!』ってなったんです。うれしくて涙が出てきて、慌ててメイクを直してから入場しました。あの試合でお客さんが『できるじゃん』『すげえじゃん』って思ってくれた。あのとき、フリーでもやっていけると思ったんです」

 GAEA一期生は里村をはじめ、脅威の新人と呼ばれていた。が、デビューから数年間、植松は最も地味な存在だった。5人の同期全員がAAAW世界タッグ王座を奪取しているが、植松はもっとも遅くベルトを巻いた。輝優優とのタッグでブレイクするも、それはGAEA終盤の出来事だった。

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