「アマゾンと競争しても意味はない」独立系ECサイトが映画界に進出したワケ

ECサイト「北欧、暮らしの道具店」が製作した映画「青葉家のテーブル」(松本壮史監督)が18日から全国公開された。同作はシングルマザーの春子(西田尚美)を中心に一風変わった共同生活をしている青葉家のひと夏の物語。株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平社長、本作のエグゼクティブプロデューサー、佐藤友子店長が映画界進出のワケを明かした。

インタビューに応じた青木耕平社長と佐藤友子店長【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた青木耕平社長と佐藤友子店長【写真:ENCOUNT編集部】

「北欧、暮らしの道具店」が製作、西田尚美主演の映画「青葉家のテーブル」公開

 ECサイト「北欧、暮らしの道具店」が製作した映画「青葉家のテーブル」(松本壮史監督)が18日から全国公開された。同作はシングルマザーの春子(西田尚美)を中心に一風変わった共同生活をしている青葉家のひと夏の物語。株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平社長、本作のエグゼクティブプロデューサー、佐藤友子店長が映画界進出のワケを明かした。(取材・文=平辻哲也)

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「北欧、暮らしの道具店」は青木社長、佐藤店長の兄妹が07年にオープンさせたECサイト。その前年、以前の事業が失敗し、北欧への思い出づくりの慰安旅行をした際、雑貨類にみせられ、帰国後、購入してきた雑貨を販売するサイトを作ったことから始まった。ECサイトでありながら、「フィットする暮らし、つくろう」をテーマに日々の暮らしに寄り添った読み物、動画、ラジオ番組などさまざまなコンテンツを発信している。

「青葉家のテーブル」は2018年4月から配信され、600万回以上再生された短編ドラマの長編映画化だ。「開店10周年となる17年に、『お客さんにありがとう』という気持ちを伝えるようなウェブCMを作りたいなと思ったんです。本作のプロデューサー、杉山弘樹さんに相談に伺ったら、『お客さんが見たがっているドラマを作ってプレゼントした方がいいんじゃないですか』と言われ、すごい面白いと思ったんです」(青木社長)

 青木社長の頭に浮かんだのは、自分と同じ趣味を持つ人たちが楽しめるドラマの数が少ないということだった。ドラマ制作となると、相応の予算も必要になるが、「一番難しいのは人々を感動させること。お客さんが気に入ってくだされば、収益の上げ方はそんなに難しいことではないはずだ」と制作を決意。

 監督はそのCM作品が気に入っていたという新鋭・松本壮史氏に依頼し、約1年かけて4話を制作した。

「僕も撮影・編集含めて、ずっと立ち会って、撮影ではクーラーのスイッチを切る係をやっていましたので、現場では『空調さん』と呼ばれていましたね(笑)。ドラマ制作の経験が豊富なスタッフばかりではなかったんですが、1回ごとにめちゃくちゃ良くなっていくんです。そういうのを見ると、経営者としては、もっと伸ばしたくなるんです。もう一つ上までいけるんじゃないか、と。それで、映画化を発表(19年7月)したんです」(青木社長)

 配信ドラマはECサイトのPRと割り切っているのか、と思えば、そうではない。「ドラマ自体の制作費は企業さんとタイアップしたアナザーストーリー2話、関連グッズなどで既に全部回収できています。お客さんにとっては『青葉家―』の続きが見られるわけで、数分間の動画を数十万回見ていただけるCMはなかなかないので、それなりの単価で販売できる商品になっています。だから、これは僕らの新規事業なんです」。

 19年12月からは第2弾の料理ドラマ「ひとりごとエプロン」(8話)も配信中。「こちらは予算を抑えた作り方ですが、違うファン層を獲得するなどいろんな狙いがあって作りました。こちらも物販関連グッズ事業で、利益が出ています」と佐藤店長。映画は単なるPRでも、道楽や節税対策でもないのだ。

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