衝撃のカーフキック炸裂から4か月、米国の堀口恭司を直撃 RIZIN王者の真意とは?

2020年大みそか、朝倉海へのリベンジを果たした直後の堀口恭司【写真:ENCOUNT編集部】
2020年大みそか、朝倉海へのリベンジを果たした直後の堀口恭司【写真:ENCOUNT編集部】

今後の堀口恭司の方向性を決める3つの指針

 コロナ禍の現在、半年先はもちろん、来年のことは誰にも分からない現状があるのは先にも触れた通り。その中で「来年、トーナメントの優勝者と闘う」という話は、堀口にとっては現実でないのかもしれない。

 その段階で、堀口が「ベラトール」の王者になっている可能性もあるし、何より、RIZINの行方も混とんとしている。

 昨年を例に取ると、RIZINはクラウドファンディングで広く資金を募りながら、やっとの思いで6大会を開催した。一方、米国では、UFCが、なんだかんだ言いながらも40大会を開催していたのだ。契約選手の数が違うので、一概に比べることはできないが、RIZINが先行き不透明な状況にある中で、「来年の話」というのは、言ってしまえば雲をつかむようなもの。金銭面を含めた具体的な話など、ないに等しいだろう。

 もちろん、個人的にはそういう流れになればいいなあと思う気持ちは持ち合わせているものの、堀口からすれば、不確定要素だらけになる来年の話に対して、すんなり首を縦に振りたくない気持ちも十分に理解ができる。

 理由は至極簡単だ。それだけ今の堀口の視界には、日本人ファイターの姿は誰も入っていない。最大の理由はこれに尽きる。つまりRIZINがどうというよりも、その部分こそが本質というか、問題の根っこ。私はそう見る。

 仮の話、もしそうなのだとしたら、5月からスタートするバンタム級トーナメントは、より注目されるような熱い試合が必要になる。誰に注目されるのか。もちろん、ファンや関係者の目は当然ながら、その熱さがいかに堀口本人に届くか否か。次なる焦点はそこではないかと思う。そのためには、他の選手に比べ、いかに圧倒的なレベルの違いを見せつけられるか。そこではないだろうか。

 なぜ堀口が「来年、トーナメントの優勝者と闘う」との話に気持ちよく乗れないのか。ほかにも、考えうる理由は2点あるように思う。

 まず第1に、ファイターには選手寿命がある、ということ。要は堀口に限らず、いつまでも最前線で闘えるわけではない。もしかしたら30歳の声を聞いた堀口にとって、その部分は我々が考えているよりも大きなものになってきたのではないか。今後の堀口は、今まで以上に一つの試合を大事に考えていく時期に入ったということだろう。

 そしてもう1点は、やはり一昨年にあった朝倉海戦(2019年8月18日、名古屋・ドルフィンズアリーナ)での敗北である。これに関しては、トラウマとまでは言わないが、堀口にとっては実績からキャリアから、大きく格下だった朝倉との一戦を、快くではなく、どちらかと言えば周囲に押し切られるカタチで受けた結果、キャリア初のKO負けを喫した上に、その直後には、勤続疲労からヒザのじん帯を断裂し、1年以上の長期欠場に追い込まれた。

 振り返れば17年2月、「日本の格闘技界を盛り上げたい」と口にしてRIZINに参戦し、文字通り最前線でRIZINを、いや、日本の格闘技界をけん引してきた堀口からすれば、思ってもいないアクシデントだった。とはいえ、ファイターとして生活している以上、十分あり得る話だ。本人もそこは理解しているだろう。

 しかしながら堀口を苦しませたのは、敗北や怪我以上に、日頃から堀口を応援してくれる人たちを悲しませてしまったこと。ここが大きかったに違いない。

 以上の理由から堀口は周囲の流れに身を任せたまま、どちらかと言えば安易に自身の進むべき道を選択するのではなく、確固たる方向性を見据えながら進むべき道を模索する、といった方針に転換したのではないか。そんな気がしてならない。

 ここに書かれていることがどこまで堀口の真意を代弁できているのかはわからないが、あながち大きくは間違っていないと思っている。

 果たして、堀口の次戦は、いつどこで行われ、相手は誰になるのか。そして堀口は本当に日本人ファイターと闘う日が来るのか。もうすぐ夏の声が聞けそうな今、早くも来年以降への妄想が止まらない――。

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