盗難バイクから信号受信「ものすごく近い」 漫画家の愛車、事態が急転 戻ってきても残る謎

「人生で初めて買ったバイクで、今までで一番高い買い物でした」。そんな大事な愛車が何者かに盗まれ、驚きの展開を迎えた。漫画家が10年間乗り続けている愛車ヤマハ・セロー250。自宅の駐輪場から突然姿を消し、思わぬ形で戻ってきた。異様な事態の詳細を聞いた。

ヤマハ・セロー250が一時盗難被害に遭った【写真:本人提供】
ヤマハ・セロー250が一時盗難被害に遭った【写真:本人提供】

「盗難防止タグの信号を、スマホが受信したんです」

「人生で初めて買ったバイクで、今までで一番高い買い物でした」。そんな大事な愛車が何者かに盗まれ、驚きの展開を迎えた。漫画家が10年間乗り続けている愛車ヤマハ・セロー250。自宅の駐輪場から突然姿を消し、思わぬ形で戻ってきた。異様な事態の詳細を聞いた。

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 盗難被害に遭ったのは、山草遊(@you111142)さん。『東京ガレキ少女』を連載していた経歴を持ち、現在はフリーでSNSや成年向け作品を中心に活動している。

「人生で初めて買ったバイクです。生活が苦しい時に出版社へ行く交通費を浮かせるための投資の意味もあって購入したのですが、その後一緒にいろんな場所に、取材や遊びに行った相棒のような存在です」と、愛車への思いを明かす。

 まだ新人だった頃にネットオークションで当時22万円ぐらいで購入した中古バイクだが、「貯金が吹っ飛びました」。名前は「アルカナイ(歩かない)君」と付けた。理由は「ちゃんと走るから」。以来約10年間、ハンドルを握り続けてきた。たまに壊れては原因を探って直して、パーツを変えて……。走行距離が10万キロを超えても元気な自慢の愛車だ。

 今年6月下旬。東京・新宿区内の自宅の駐輪場に止めていた相棒が狙われた。あまり人目に付かない場所だった。6月26日の夕方には駐輪場に置いてあるのを確認しており、28日の昼頃に盗難に気付いた。「恐らく27日の台風の日にまぎれて盗まれたかと思います」。こつ然と姿を消した愛車。事態が急転したのは、日付が変わって29日午前0時のことだった。

 解決の経緯はこうだ。「バイクのタンクバッグに入れておいた盗難防止タグの信号を、スマホが受信したんです」。タグの場所を確認すると、「ものすごく近い」。驚がくした。自宅から外に出て確認すると、なんと盗難場所である駐輪場のほぼ同じ位置にバイクが置いてあったのだ。すぐさま警察に連絡した。また、周囲に人影はなく、車体の損傷や付属品の紛失も見当たらなかったという。

「見つかったのは、自宅の駐輪場で間違いないです。普段と違う停車位置に置いてありました」と、当時の状況を振り返る。

 元あった場所にひっそりと戻された愛車。一方で、不可思議な痕跡が残されていた。「盗難バイクの鍵を確認すると、なぜか僕が半年以上前に失くしたと思っていたスペアキーが刺さっていたのです」。スペアキーは、普段は財布の中に入れていたのがなくなっていた。どこかで落としてしまった可能性が高いという。

 警察官が駆け付け、現場写真を撮影するなどの対応をした。山草さんは数時間前に提出したばかりの盗難届の取り下げ手続きを行った。さらに、一度は盗難被害を報告したSNSで、愛車の発見を報告。「おかげさまで無事に相棒が帰ってきてくれました!!」と情報拡散への感謝の思いをつづった。

「罪を追及するつもりはありません」

 発見までの一連の経緯について、山草さんはあくまで自身の推測と前置きしたうえで、犯人像への見立てを語ってくれた。

「これはあくまでも僕の想像ですが、犯人は近所の人だと思っています。盗んだ後に僕が警察を呼んだり、警察の方が近隣のビルの防犯カメラをチェックしてるのを見ていて、『大事になってしまった、このままでは捕まるかもしれない』と感じて戻しに来たのではないかと考えています」

 山草さんは、犯人のこれ以上の追及はしない意向を示している。愛車が無傷で戻ってきたことで、安堵(あんど)の思いが勝るという。

「犯人に言いたいのは『戻してくれてありがとう。もし乗りたいんだったら相談してね』ということです。元の場所に戻してくれたので恨みはないです。愛車が盗まれたショックはありますが、戻ってきてくれた安心感が強いので、罪を追及するつもりはありません。もし盗難車を販売しているような悪徳業者の仕業だったらまた違うのかもしれませんが……」。本音を打ち明ける。

 バイクや自動車の盗難被害は近年、社会問題として深刻化している。今回、山草さんの愛車は幸いにも無傷で戻ってきたが、被害に遭ったこと自体の心のショックを受けたことは確かだ。

 今現在は安心して創作活動に励んでいる。今回の出来事を受けて、山草さんは「まず情報拡散に協力してくださった皆様ありがとうございます」と、改めて感謝の言葉を口にした。そのうえで、盗難の加害者側に向けて、「車両盗難は思っている以上に被害者の心を傷付ける行為なので、『もしやっている人は辞めた方がいいよ。人を幸せにするよう頑張った方が楽しいよ』。そう伝えたいです」と、切なるメッセージを送った。

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