「入って欲しいのはキミじゃない」 害獣のわなに2度入った“場違いな動物”に驚愕 農家困惑の結末は?

アライグマを捕まえるために仕掛けた箱わなに、なぜか“場違いな動物”が──。二度にわたってわなにかかった猫の姿を公開したSNS投稿が大きな反響を呼んでいる。投稿した兵庫県の農家・有坪民雄さんに詳しく話を聞いた。

アライグマ用のわなにかかった三毛猫【写真:投稿者提供】
アライグマ用のわなにかかった三毛猫【写真:投稿者提供】

「入って欲しいのは、アライグマであってキミじゃない」

 アライグマを捕まえるために仕掛けた箱わなに、なぜか“場違いな動物”が──。二度にわたってわなにかかった猫の姿を公開したSNS投稿が大きな反響を呼んでいる。投稿した兵庫県の農家・有坪民雄さんに詳しく話を聞いた。

「アライグマ用の罠なのに……」

 5月11日、有坪さんはこうXに投稿した。添えられた写真には、アライグマ用の箱わなの中に、三毛猫が入っている様子が写っていた。

 さらに翌12日には、「昨日逃がしたら今朝も入ってた。入って欲しいのは、アライグマであってキミじゃない。困った」と、再び同じ三毛猫がわなにかかっている写真を掲載。アライグマを捕まえたい農家と、なぜかわなに入り続ける三毛猫の“攻防”に、SNS上では「もしかしたら、飼って欲しいんじゃないですかね(笑)」「居心地いいんだろうなあ」「有坪さん優しい目してるから、もう『ここ飯場や』って認定されてるわ」「出してもらえるのがわかってるから餌食べに入っているのでは」などの声が寄せられた。

 一見すると、ほのぼのした珍事に見える。しかし、有坪さんが箱わなを仕掛けた背景には、農家にとって深刻なアライグマ被害がある。

 有坪さんは兵庫県でコメと肥育牛(神戸ビーフ)の生産を手がける農家だ。大学卒業後に船井総合研究所で約7年間勤務した後、家業の農業へ戻った。農業関連の著作も複数あり、新規就農の教科書として知られる『農業に転職!―就農は「経営計画」で9割決まる』(プレジデント社)や、独自の農業論を展開した『誰も農業を知らない』シリーズ(原書房)などが現在も書店に並んでいる。

 有坪さんによると、アライグマ被害は作物が食べられるだけではない。特に困るのが、牛の飼料を目当てに牛舎に住み着かれることだという。

「牛舎の2階にエサにするイナワラを収納しているのですが、そこに住み着かれると、ワラの上でうんちをされていて、当然ワラが使えなくなります」

 20年ほど前から、数匹のアライグマが牛舎に住み着くことが多くなった。何度も捕獲して一掃しても、半年もたたないうちに別のアライグマ数匹が住み始めるという。今年だけでも6匹を捕獲している。

 わなの餌には、一般的にはお菓子の「キャラメルコーン」が使われることが多いという。しかし、今回は「カール」を使った。理由を聞くと、有坪さんは「アライグマ=キャラメルコーンの『常識』に挑戦してみたくなった(笑)」と明かす。

 箱わなは、アライグマの通り道と見られる導線に沿って設置する。餌だけ食べられて逃げられたり、わなの前のまき餌だけ食べる賢い個体がいたりすると、餌を変えたり、牛に与える餌を少し減らして、アライグマが牛の残した餌をつまみ食いできないようにしたりするという。

逃がしても翌朝また箱わなに…三毛猫の正体は?

 そんな真剣な対策のさなか、箱わなに入ってしまったのが例の三毛猫だった。

 有坪さんによると、三毛猫は野良猫ではなく、近くの飼い猫。ネズミを捕りに“出張”してくるようで、以前から顔なじみだったという。「猫がかかった時は、ああ、かかったかと思うだけで、放してやると一目散に逃げます」と振り返る。

 通常、猫は一度わなにかかると警戒して二度とかからないものだという。しかし、今回は翌朝も再び箱わなの中にいた。有坪さんは「たぶん以前から目が合うくらいの関係性は持っていたので、敵意がない人として認識されていたのでしょう」と見ている。

 そして13日、有坪さんはついに本命のアライグマを捕獲したことを写真付きで報告。「アライグマ捕獲。たぶんこれでアライグマは全て捕ったはず。しばらく罠も設置しないので、三毛猫が罠にかかることもない。もしまだアライグマがいたら、またネコとの攻防は続くかも知れませんが、いったんは終了です」と投稿した。

 捕獲が完了した時の心境について、有坪さんは「達成感はありますけど、どうせまた来るわと達観してます」と語る。農家にとっては、これで終わりとは言えず、また繰り返されるかもしれないのが現実だ。

 アライグマは見た目のかわいらしさとは裏腹に、農作物や家畜飼料に被害を及ぼす厄介な存在だ。有坪さんの投稿が大きな反響を呼んだのは、そんな農業現場の苦労が伝わる一方、自由奔放な三毛猫との思わぬやり取りがどこかユーモラスで、そのギャップが多くの人に響いたからだろう。

 有坪さんは「またアライグマのわなを仕掛け始めたら、同じことが起きるかも知れませんね」と話す。アライグマとの戦いは終わったようで、完全には終わっていない。そして、三毛猫との“攻防”も、またいつか再開するのかもしれない。

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