次世代ジャンプ主人公が背負う“復讐と継承” アニメ『カグラバチ』に期待される要素とは

『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』。近年の少年ジャンプ作品を原作としたアニメは、ダークな世界観と死の気配をまといながら、国内外で大きな存在感を示してきた。その流れの先で、次の注目作として名前が挙がっているのが『カグラバチ』だ。

『カグラバチ』のアニメ化が決定【画像:(C)外薗健/集英社・カグラバチプロジェクト】
『カグラバチ』のアニメ化が決定【画像:(C)外薗健/集英社・カグラバチプロジェクト】

刀匠を志す少年・六平千紘の復讐譚

『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』。近年の少年ジャンプ作品を原作としたアニメは、ダークな世界観と死の気配をまといながら、国内外で大きな存在感を示してきた。その流れの先で、次の注目作として名前が挙がっているのが『カグラバチ』だ。

 外薗健氏による同作は、『週刊少年ジャンプ』連載中の剣戟バトルアクション。4月27日配信の「ジャンプPRESS#5」内でTVアニメ化が発表され、2027年4月より放送開始予定となっている。制作はCypic、監督は竹内哲也氏、キャラクターデザインは佐々木啓悟氏。主人公・六平千鉱(ろくひら・ちひろ)役には木村太飛が決定している。コミックスは第11巻の発売をもって、電子版を含む累計発行部数400万部を突破した。

 物語は、刀匠を志す少年・六平千鉱の日常から始まる。父・国重のもとで修行を重ねていた千鉱は、謎の妖術師組織・毘灼(ひしゃく)によって父を殺され、国重が打った6本の妖刀を奪われる。残されたのは、父が遺した7本目の妖刀「淵天」。千鉱はその刀を手に、奪われた妖刀と父の仇を追っていく。

 かつてのジャンプ主人公といえば、明確な夢や目標を掲げ、仲間を増やしながら前へ進んでいく存在として描かれることが多かった。もちろん作品ごとに違いはあるが、「強くなりたい」「誰かを守りたい」「夢を叶えたい」という前向きな意志が、物語を引っ張る大きな力になっていた。

 一方で、近年のジャンプ作品では、主人公が最初から喪失や問いを抱えているケースが目立つ。『鬼滅の刃』の竈門炭治郎は、家族を奪われながらも、鬼になった禰豆子を救うために戦う。怒りよりも、守ること、取り戻すこと、相手を悼むことが前に出る主人公だった。『呪術廻戦』の虎杖悠仁は、呪いの世界に巻き込まれながら「正しい死」という問いを抱え続ける。『チェンソーマン』のデンジは、生活の実感や欲望をむき出しにした主人公として、従来の“正しさ”から距離を取った。

 そうした流れの中で見ると、千鉱もまた、近年のジャンプ主人公の系譜に連なる存在だ。彼が背負うテーマは、「復讐」と「継承」。父を失い、父が打った妖刀を奪われた千鉱は、遺された刀を手に毘灼を追う。しかし、その戦いは父の死への報復だけでは終わらない。父が何を思って刀を打ち、その刀がいま誰の手で、何のために使われているのか。奪われた妖刀を追うことは、父が遺したものの意味を確かめることでもある。

「継承」という言葉は、本作では二重の意味で響く。一つは、父が遺した7本目の妖刀「淵天」を、息子である千鉱が振るうという構図そのもの。父が打った刀を、息子が握って戦う――それ自体が継承の物語の形をしている。

 もう一つは、刀という道具が持つ宿命だ。父・国重が打った妖刀は、人を守るためにも、人を殺すためにも使われる。作り手の願いを離れ、使い手によって別の意味を帯びていくこともまた“継承”なのである。千鉱は父の刀を継ぎながら、奪われた妖刀が誰の手で、何に使われているのかという現実にも向き合わされる。

 だからこそ『カグラバチ』の剣戟には、ただ敵を倒すだけではない重みがあるのだろう。刀を使ったアクションの爽快感と、その刀が何を背負っているのかという問いが、同じ画面の中に置かれているのである。

 ただし、千鉱はそうした中で蠢く感情を言葉で説明するのではなく、妖刀を取り戻すための行動に滲ませる。その意味でも、アニメ版で重要になるのは妖刀を使った剣戟シーンだろう。アクションの見せ場であると同時に、そこには千鉱というキャラクターの信念が表れるからだ。

 父を奪われた怒り、妖刀を取り戻す執念、父が遺したものをどう扱うのかという葛藤。そうしたものを剣戟の中でどう見せるかが、アニメ版『カグラバチ』の印象を大きく左右するのではないだろうか。

 スタッフ面でも、剣戟描写への期待値は高い。監督の竹内氏は『ソードアート・オンラインII』でアクション作画監督、『天国大魔境』でバトルシーンコンテ・演出・作画監督などを担当してきた。キャラクターデザインの佐々木氏、制作のCypicとともに、本作の剣戟アクションがどのように映像化されるのかは、アニメ化で注目されるポイントの一つだ。

海外人気ゆえに求められる、表現面の調整

 また、『カグラバチ』は連載開始直後から海外でも注目を集めてきた作品である。同作は「次にくるマンガ大賞2024」コミックス部門で第1位を獲得。アニメ化にあわせ、第1話冒頭20分を世界各国のアニメイベントで上映するワールドツアーの開催も発表されている。さらにツアーファイナルとなる日本では、第1話全編が世界最速で上映される予定だ。

 海外展開への期待が大きい一方で、表現面の調整は大きな課題になりそうだ。『カグラバチ』には血の描写や、身体が傷つけられる場面も少なくない。毘灼に追われる少女・鏡凪シャルをめぐるエピソードにも、子どもが傷つけられる痛ましさが含まれている。剣戟の鋭さや復讐劇の重さは本作の魅力だが、海外展開を見据えるほど、年齢区分や国・地域ごとの受け止められ方も避けて通れない。

 実際、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は日本ではPG12区分で公開されたが、北米公開では暴力描写や流血描写を理由にR指定となった。日本で幅広い層に届いた作品であっても、国や地域によってレイティングの判断は変わる。『カグラバチ』もまた、原作の生々しさをどこまで残し、どこを映像表現として調整するのか。その判断も、アニメ版の大きな見どころになる。

 コミックス累計400万部突破、「次にくるマンガ大賞2024」第1位、ワールドツアー開催と、アニメ化を迎える時点ですでに国内外の期待値は高い。現在は配信を通じて、原作ファン以外のライトなアニメ視聴層にも作品が届きやすい環境にある。届く範囲が広がるほど、作品のダークな世界観は大きな武器であると同時に、視聴者を選びうる要素にもなっていく。

 剣戟の鋭さや復讐劇の重さといった原作の手触りを、アニメがどこまで映像に残すのか。2027年4月、『カグラバチ』は次世代ジャンプアニメの主人公像を考えるうえでも、重要な一本になりそうだ。

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