65歳・阿部祐二、現場リポートを続ける理由 若々しさの秘訣は「日々の充実感」

「事件です」というフレーズで人気のリポーター・阿部祐二氏は、30年近く全国各地の事件、事故現場などを巡って取材し、視聴者に伝えてきた。危険で過酷な現場も少なくない。またモデルや俳優の経験もあり、最近もテレビ朝日系『家政夫のミタゾノ』に出演する活躍ぶり。現在はTBS系『ゴゴスマ』で活躍しているが、どんな思いで現場に立っているのか。普段は取材する側の阿部氏だが、その素顔を取材した。すると頭が下がるほどの努力家だった。

インタビューに応じた阿部祐二【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた阿部祐二【写真:ENCOUNT編集部】

30年近く全国の事件、事故現場を精力的取材「徹夜で張り込み立ちながら眠った」

「事件です」というフレーズで人気のリポーター・阿部祐二氏は、30年近く全国各地の事件、事故現場などを巡って取材し、視聴者に伝えてきた。危険で過酷な現場も少なくない。またモデルや俳優の経験もあり、最近もテレビ朝日系『家政夫のミタゾノ』に出演する活躍ぶり。現在はTBS系『ゴゴスマ』で活躍しているが、どんな思いで現場に立っているのか。普段は取材する側の阿部氏だが、その素顔を取材した。すると頭が下がるほどの努力家だった。(取材・文=中野由喜)

「モデル、俳優を経験後、94年6月に始めたのがTBS系『ビッグモーニング』のリポーター。始めはしましたがリポーターの基礎はゼロ。現場の状況を見たまま表現する力がありませんでした。今なら人が10メートル歩けば30秒しゃべれます。当時はうまくリポートできず、話すのは同じことばかり。訓練はしていないし、周りから『向いてないのでは』という声も聞こえ、まずいと思いました。ただ、番組の視聴率は良かったんです」

 視聴率は良かったものの出演から1年足らずで番組は終了した。その後どうしたのか。

「困っていたら知人が『ルックルックこんにちは』のチーフプロデューサー(CP)を紹介してくれました。CPが面白い人で『何しにきたんだ。うちにはリポーターが20人いる。仕事は回ってこないぞ』と言うんです。ただ、なぜか『断るわけにいかないだろう』と置いてくれました。ところが、入ったら仕事が回ってこないと言われたのに大事件ばかり起きたんです。お歴々のリポーターたちが出払った後に事件が続き、僕も現場に行かざるを得ない状況に。現場に行くと今度は誰もが一番撮りたい取材対象が現れるんです」

 謙遜して話すが少なくとも今のリポーター技術は違う。

「ここ4、5年です、いけると思ったのは。今は自信があります。いろんな物が見えるようになり、やっと怖くなくなりました」

 トレーニングの成果か。要因が気になる。

「トレーニングは日々やっています。たとえば花の本、動物の本などいろんな本を買い集めて読み、表現力の勉強をしています。桜の本だけでも20冊はあります。春に桜の中継をする際、毎年、同じ表現にならないように本で桜の知識や語彙を増やし、表現力を高める練習をしています。今は食リポの機会が多く『おいしい』など、とってつけたような表現は意地でも避けたいので毎日違う表現を探しています。スーパーで食品を見てイメージトレーニングするなど日々訓練し、この4、5年で怖くなくなりました」

 努力の結晶だ。

「今は韓国語を毎日勉強しています。ソウルで何度か仕事の機会があり、英語で人に話しかけたら全然、通じず、せめて質問できるようにと思って始めました。韓国のドラマを見まくって使える表現を拾い上げ、実際に使うようにしています。英語も同じ方法でマスターしました。僕はインタビュアー、質問を通訳の方に頼るのは恥ずかしいし、嫌なんです」

引退のタイミングは「お願いだからやめてと強制退去されるまで」

 事件が起これば全国どこへでも行く。現在65歳。体力は大丈夫か。

「現場に行って徹夜で張り込み立ちながら眠ったことがあります。でも、好きなことをやっているので、つらいとか嫌だと思ったことは1回もないです。関心の無い分野の話題だとしても現場に到着するまでに関心のある自分になるようにもっていきます。その事象に非常に興味のある人間になってから行きます」

 伝えなければという使命感か。

「ジャーナリズム精神というよりも、僕、その事象を本当に面白いと思っているんだよね、という感じです。ある意味、野次馬的で知りたくて仕方ないという人間となって現場に行きます。あとは本当の自分とは違うこともあるかもしれませんが、リポートする際はテンションが高くなってしまいます」

 現場に向かう移動中は何をしているのか。

「本を読んだり何か暗記したり。常に何かに向かっていないと精神的に満足できないんです。暇だと心が満足しません」

 リポーターの仕事のやりがいも聞いてみた。

「『夫に阿部さんを見せてあげたい』『テレビに出てくると何だか元気になる』とか若い女性に『お父さんになってほしい』と言われるのが張り合いになります」

 若々しくバイタリティーにあふれる姿をキープする秘けつはあるのか。

「鹿児島の軟水を15年くらい飲んだり、家でニュースを見ながら筋トレしたり……。あとは毎日、楽しみを見つけて充実感を味わいながら生きているからかもしれません。疲れてだるいとか、やる気が出ないとか、ボーっとしたいと思ったことは一日もないです。休日もきっちりスケジュールを入れて動いています」

 引退のタイミングはどう考えているのだろうか。

「『もう、いいんじゃない』という感覚は一切なく、やらせていただける限り、とことんやります。お願いだからやめてと強制退去されるまではやります(笑)」

 AIアナが登場する時代。将来への思いも聞いた。

「リポーターという仕事も徐々に必要とされなくなる時代がくる雰囲気を10年ほど前から何となく感じています。そこに最後まで抗っていきたい。僕がこけたらリポーターがいなくなるときなのかもしれません。今、リポーターの数も減ってきているし、存在も薄くなってきて危ないと思っていますが、僕はなくてはならない仕事だと思っています。ある人が『たかがリポーター、されどリポーター』と言っていました。僕は『されど』と思ってずっと体現していきたい」

□阿部祐二(あべ・ゆうじ)1958年8月14日、東京出身。早稲田大学政治経済学部卒業。TBS系『ゴゴスマ』などリポーターとして活動する以前はモデルや俳優としても活動。83年に伊達祐二の名前でTBS系『婦警さんは魔女』で俳優デビュー。近年も2022年に映画『月下香』、23年テレビ朝日系『家政夫のミタゾノ』に出演。2019年に京都美術工芸大学客員教授に就任。ミシガン州立犯罪報道プログラム受講済み。趣味は東京ディズニーランドに行くこと。特技は英語、マラソン、ゴルフ。好きな食べ物は納豆とあんこなど。血液型A。

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