歌舞伎町でゲリラ撮影 衝撃シーンは「話し合いで進めた」 矢野聖人が語る問題作の舞台裏

俳優の矢野聖人が映画『車軸』(松本准平監督、公開中)で主演する。歌人で小説家の小佐野彈の同名小説が原作。新宿・歌舞伎町を舞台に、ゲイ、大学生、ホスト3人の関係性を描いていて、矢野は資産家でオープンリー・ゲイの潤役を務める。見どころや撮影秘話などを聞いた。

インタビューに応じた矢野聖人【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた矢野聖人【写真:ENCOUNT編集部】

矢野聖人インタビュー、主演映画『車軸』が公開中

 俳優の矢野聖人が映画『車軸』(松本准平監督、公開中)で主演する。歌人で小説家の小佐野彈の同名小説が原作。新宿・歌舞伎町を舞台に、ゲイ、大学生、ホスト3人の関係性を描いていて、矢野は資産家でオープンリー・ゲイの潤役を務める。見どころや撮影秘話などを聞いた。(取材・文=中村智弘)

 現在、テレビ朝日で放送中のスーパー戦隊シリーズ『王様戦隊 キングオージャー』に、ラクレス・ハスティー役で出演中の矢野。そのイメージからは一転、映画ではゲイ役を好演している。

「今までやったことのない難しい役。30歳になった1本目の作品だったので、役者として刻まれる作品になったと思います」

 映画は、ゲイの資産家・潤(矢野)、大学生の真奈美(錫木うり)、ホストの聖也(水石亜飛夢)3人の三角関係を描く切ない“愛の物語”。歌舞伎町を舞台にした斬新な映像美の中、若者たちの複雑でリアルな感情が表現されている。

「難しいシーンの連続でした。(3人での)ベッドシーンは3人で前もって、8割方、動きを決めてやっていました。今の時代、“流れ”の中で、ああいうシーンを演じるのは難しい。“気持ち”でやれないんです。だから、監督とも一緒に、どの角度から撮るのかとかを話し合いながら進めました」

 撮影は昨年1月に行われた。実際の歌舞伎町で、ゲリラ的に撮影したこともあったという。映像には“リアルな歌舞伎町”が映されている。

「真奈美役の錫木うりさんと、すき焼き屋に向かって2人で歩くシーンがあるんですが、その時、居酒屋のキャッチの人に声をかけられたんです。錫木さんが『あんた、そんなのほっときなさいよ』というアドリブでかわしています。当時は、コロナ禍で人も少なかった。今の歌舞伎町だと人が多すぎて、たぶん撮れないシーンだと思います」

 撮影前には舞台となっている歌舞伎町のホストクラブ、新宿2丁目のお店などに足を運んだ。実際にゲイの人から話を聞き、役作りの参考にしたという。

「表現が難しいですが、ゲイの方は性別を一言で表せない。タイプが細分化されていて、色んな方がいます。表現方法が、すごいたくさんある世界だなって思いました。もともと、僕、なぜかカミングアウトされがちなんです。以前、友達から急に『パートナーがいる』と言われたりしたこともありました」

 物語は3人の感情が複雑にまじりあい、解釈もとらえ方によって様々だ。

「セクシャリティーに関して難しいところが描かれています。色んなことを思って、日々、生きていくわけですが、もっと自由に一人一人が発信していいんだよ、と思いました。映画を観て、人に寄り添ってくれる人が増えたら、うれしいですね。『そういえば、あの人今、何か悩んでたりしていないかな』とか、自分を大事にしてくれる人、大事にしたい人を思い出してもらえる作品になっていると思います」

□矢野聖人(やの・まさと)1991年12月16日、東京都出身。2010年、ホリプロ50周年記念事業・蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』主演オーディションでグランプリを受賞。同年、フジテレビ系ドラマ『GOLD』で俳優デビュー。2014年、映画『最後の命』で柳楽優弥の親友でレイプ犯となる難役を熱演。2018年、映画『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。』で初主演。現在、放送中の『王様戦隊 キングオージャー』(テレビ朝日)に出演。そのほか『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』などにもレギュラー出演するなど、数多くの作品に出演している。

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