超多忙の乃木坂46久保史緒里「野球がオンとオフの切り替えアイテム」 NHK大河の次は劇団☆新感線

乃木坂46の久保史緒里(22)が、9月14日から上演の劇団☆新感線43周年興行・秋公演いのうえ歌舞伎『天號星(てんごうせい)』(東京・THEATER MILANO-Za)に出演する。今年、グループではダブルセンターの一角を担い、またNHK大河ドラマや映画への出演と多彩にキャリアを積んできた彼女は、11月20日まで東京、大阪で舞台に立ち続ける。かつては客席から見ていた劇団☆新感線の舞台。出演者に加われた思い、芝居への気概が芽生えた「原体験」を語った。

舞台『天號星』や俳優業への思いを語った久保史緒里【写真:冨田味我】
舞台『天號星』や俳優業への思いを語った久保史緒里【写真:冨田味我】

秋公演いのうえ歌舞伎『天號星(てんごうせい)』に出演

 乃木坂46の久保史緒里(22)が、9月14日から上演の劇団☆新感線43周年興行・秋公演いのうえ歌舞伎『天號星(てんごうせい)』(東京・THEATER MILANO-Za)に出演する。今年、グループではダブルセンターの一角を担い、またNHK大河ドラマや映画への出演と多彩にキャリアを積んできた彼女は、11月20日まで東京、大阪で舞台に立ち続ける。かつては客席から見ていた劇団☆新感線の舞台。出演者に加われた思い、芝居への気概が芽生えた「原体験」を語った。(取材・文=大宮高史)

誰もがアッと驚く夢のタッグ…キャプテン翼とアノ人気ゲームのコラボが実現

 2016年9月4日に乃木坂46に加入して約7年。グループ3期生の中でも、久保は早くから俳優活動に積極的で、劇団☆新感線の公演も観劇していた。だからこそ、この作品に懸けている。

「劇団☆新感線さんが作り出すビジュアルや舞台演出にほれこんできました。その舞台が作られていく過程に初めて参加させていただいていますが、私には課題が山積みです。『こうもできないことが、たくさんあるのか』と痛感しています。ただ、(演出家の)いのうえひでのりさんが、セリフや所作の一つ一つに『この劇で私はどういう役割で、どう立ち回るべきか』のヒントを出してくださっています。それに応えて、私もブラッシュアップをし、思いつめ過ぎずに、楽しみながらこのカンパニーの空気感になじんでいきたいです」

『天號星』で演じるみこ・神降ろしのみさきは、裏稼業の人間が活躍するけれん味たっぷりの舞台の中で、異彩を放つ役どころだ。

「殺陣・チャンバラが大きな見どころで、稽古場で見ていても迫力と勢いがすごいです。そんな中でも私はみこらしく占う場面が多いのですが、歌の場面もいただいています。これまで見た劇団☆新感線の舞台ではロック調のナンバーが多かったので、みっちり歌の準備もしています。『どんな歌をお客様に披露できるか…』とワクワクしつつ、稽古が進んでいます」

 公開された公演ビジュアル。久保は極端に眉を薄くしつつ、時代がかった髪型で別人のような雰囲気になっている。本人は素直に喜んでいた。

「(乃木坂46の)メンバーからも『絶対、(久保だと)分からない』って驚かれました。好きで見ていた新感線さんのビジュアルの中に私がいるだけで感動しましたし、メンバーにびっくりされたことも含めてうれしい体験でした」

 初めて経験する舞台の長期公演。その合間にも乃木坂46としての活動はある。支えになっているのは、同じ経験をしてきたグループのメンバーだ。

「稽古から数えるとおよそ半年も一つの舞台に携わるのは初めてです。なので、今年の春まで舞台『キングダム』に出演していた同期の梅澤美波から、乃木坂46との両立の秘訣を聞いたりしています。梅澤も『キングダム』の時は、私に稽古への備えや役作りを相談してくれました。舞台経験者が増えて、お互いに相談し合える環境もありがたく思います」

 22年秋には舞台『桜文』で明治時代の花魁・桜雅を演じ、今年はNHK大河ドラマ『どうする家康』で、織田信長(岡田准一)の娘・五徳役で存在感を示した。「和」に縁のある役が続いている。

「今の私の年齢で時代物に出させていただけることはすごくありがたいです。『桜文』で着物姿での所作をみっちり学んだことも、その後のお仕事に大いに生かすことができ、糧になりました。もちろん、現代劇でもピアノを弾く役だったら本当に弾けるようになったりといったチャレンジが絶対にあると思います。どんな役柄でもチャンスとして大切にしていきたいです」

今夏は稽古と並行して『真夏の全国ツアー2023』7都市16公演を完走。故郷・宮城でのライブにも参加した【写真:冨田味我】
今夏は稽古と並行して『真夏の全国ツアー2023』7都市16公演を完走。故郷・宮城でのライブにも参加した【写真:冨田味我】

15歳で初の演技「今は懐かしく振り返ることができますが、当時は必死でした」

 初めての演技の場は、3期生12人で演じた17年2月の舞台『3人のプリンシパル』だった。1幕を見た観客が幕間に投票した結果で、2幕の『銀河鉄道の夜』の配役が決まる“公開オーディション”の要素も持つ舞台だ。結果次第で配役が変わる上に、2幕に出演できるのは3人だけ。そんなシビアな争いを15歳で経験した。

「今は懐かしく振り返ることができますが、当時は必死でした。演技力だけでなくアイドル性や人間性まで含めて『私が選ばれるかな』と、あまり自信も持てなくて。『誰よりもお芝居に真摯(しんし)に向き合おう』と覚悟を決めていました。自己PRも演技も同じことはしないよう、毎回変えていました。公演が進むと客席の皆さんの私を見る目が厳しくなっていると実感していましたし、上がるハードルをクリアしつつ、『どうしたらアイドルとして魅力的な12人の中から選んでいただけるか』を悩み、考え抜いた日々でした」

 結果、投票で選ばれた2幕の出演回数が12人の中でトップに。当時から演技力の片りんを見せていたが、俳優業を追究し続ける原点もできたという。

「演出家の徳尾浩司さんから『あなたは個性がないと自分で言うけど、そんなに努力ができることを個性と言わずして何と言うんですか』というお手紙をいただきました。ずっと宝物です。私のお芝居への向き合い方が、『決して間違いではなかった』と実感できた思い出で、あの言葉がなかったら『お芝居をもっと続けよう』という気持ちにはなれなかったかもしれません」

 モデルやラジオ番組でもレギュラーで活動する日々。『芸能の仕事でライバルや目標となる存在はいますか』、と聞いてみると、久保は言った。

「他人にライバル意識を持つことはあまりなくて、自分に対して持ちますね。例えばある作品を見て、『あんな役ができたらいいな』と思うことがあれば、『それができる自分にならなければ』と私自身への発奮を促す材料にしています」

 乃木坂46は8月23日に33rdシングル『おひとりさま天国』をリリース、7月から8月には『真夏の全国ツアー2023』を完走。並行して『天號星』の稽古を続けてきた。そんな多忙な中でのリフレッシュは野球。地元球団の東北楽天ゴールデンイーグルス、高校野球、大リーグ(MLB)まで、試合の映像を見ている時間が癒やしになっている。

「野球を見ている時間だけは完全プライべートモードで、お仕事のことは考えないんです。イーグルスの試合が終わっても、他のチームの試合にチャンネルを変えたり、録画した高校野球やMLBの試合を流したりして、その間にご飯などプライベートなことは全て済ませ、ゲームセットを見届けたら『よっしゃあ~』って、また仕事モードになります。野球がオンとオフの切り替えアイテムになっています」

 そんな日々の中、乃木坂46を離れての仕事現場でも評価を上げている。

「お仕事の現場でひとりの役者として見ていただくことが増えてきました。そのおかげで、しっかり評価していただけているのだから、『私の方が妙な負い目を感じる必要はないんだ』と思えるようになってきました。俳優の方々と同じ気持ちで、責任感を持って一つ一つの役を究めていこうとしています」

 かつては乃木坂46の冠番組でのお披露目で、泣いてしまう少女だった。だが、今は新しい作品と出会う度に成長を遂げている。それでいて、目をキラキラさせて野球愛を熱く語る。そんなギャップも彼女の魅力。ファンをグッとひきつけている。

□久保史緒里(くぼ・しおり) 2001年7月14日、宮城県生まれ。16年9月、乃木坂46の3期生としてデビューし、17年から雑誌『Seventeen』専属モデルとしても活動。
23年の主な出演作として、NHK大河ドラマ[どうする家康」、映画「リバー、流れないでよ」、「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」、待機作にWOWOW連続ドラマW「落日」がある。乃木坂46の32ndシングル『人は夢を二度見る』で山下美月とWセンターを務めた。161センチ。血液型O。

ヘアメイク:宇藤梨沙 スタイリング:伊藤舞子

次のページへ (2/2) 【写真】久保史緒里のアザーカット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください