【映画とプロレス #15】映画「ミリオンダラー・アーム」のモデル、リンクはインド初の大リーグ選手からWWEに転向

(写真左から)サウラヴ、リンク(C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.
(写真左から)サウラヴ、リンク(C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.

WWEのトライアウトに見事合格しデビュー

 インドに戻ったシンは、アメリカンフットボール転向で再渡米することも考えていたという。アメリカへの挑戦をあきらめきれなかったのだ。そんな頃、テレビでWWEのプロレスを見た。ジョン・シーナの試合に加え、「メイク・ア・ウィッシュ・ファウンデーション」をはじめとする慈善活動にもリスペクトの気持ちが沸いてきた。シーナがプロレスを通じて子どもたちに夢を与えている。自分もスポーツを通じてインドに恩返しがしたい。そう考えたシンは、プロレス挑戦を視野に入れた。映画にも登場したアッシュ・アズデバン(BJのビジネスパートナー)のアドバイスもあってWWEのトライアウトを受けることが決定した。

 ムンバイからの飛行機には、もうひとりの受験者が搭乗していた。彼の名前はサウラヴ・グルハール。11年にTNA(現インパクトレスリング)のインドプロジェクト、RING KA KINGでプロレスデビュー、ジェフ・ジャレット率いるRDXのメンバーとなった。彼は俳優でもあり、神話ドラマ「MAHABHARAT」(13~14年)などに出演、インドで知られる存在だった。

 ドバイでおこなわれたトライアウトには2人とも合格、18年1月、WWEと契約することとなった。先にWWEデビューを果たしたのはシンだ。18年5月31日、NXTのハウスショーでカシアス・オーノとシングルで対戦。サウラヴのNXT初戦は9月28日のNXTハウスショーで、シンと組んでのタッグマッチだった。その後、両者ともハウスショーで経験を積み、シンは19年4月4日、レッスルマニアウィーク中におこなわれた4・4ニューヨーク「WORLDS COLLIDE」でWWEブランド初登場、バトルロイヤルに出場した。ちなみに、ロデリック・ストロングが優勝したこの試合には戸澤陽も参加している。

 その後もハウスショーでタッグを組んでいたシン&サウラヴは、19年10月2日にダークマッチながらNXTの収録マッチに初登場。そして今年3月25日、NXTのTVマッチにマネジャーのマルコム・ビベンスとともに乱入、ロドリック・ストロングに勝利したマット・リドルを襲撃するデモンストレーションをやってのけた。つづく4月8日のNXTでは紫雷イオがNXT女子王者シャーロット・フレアーへの挑戦を決めたラダーマッチの次の試合に登場、インダス・シェールというチーム名が明かされ、チェイス・パーカー&マット・マーテル組を4分あまりで一蹴した。最後はサウラヴのペンデュラム・バックブリーカーからシンがダイビングエルボードロップを投下しピンフォール勝ち。野球では左投げだったシンだが、ダイビングエルボーは右腕を使っていた。この試合ではアナウンサーが、「『ミリオンダラー・アーム』で知られるリンクは“ミリオンダラーマン(テッド・デビアス)”の後釜としてWWEの王座を取りにいく!?」と実況。野球映画を前提にしたキャラクターであることがうかがえる。

 88年8月8日生まれのシンは身長190センチ、体重は野球時代から大幅にアップし115キロになった。タッグパートナーで4歳年上のサウラヴはシンよりやや身長が高いが、どちらもワイルドな風貌で見分けがつきにくい。とくにシンは元野球選手とは思えないほど、いい意味でプロレスラーに変身できたと言えるだろう。野球でもプロレスでも、シンにはパートナーとの切磋琢磨が運命づけられているかのようでもある。果たして、この2人がWWEでどんなポジションをつかんでいくのか、インダス・シェール主演“「ミリオンダラー・アーム」のリアルな続編”が楽しみである。

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