【医療の現場から】開業医が明かす 厳しい経営と昨年末からいた原因不明の肺炎患者

患者さんの不安はとても強くなっている

 私のクリニックの患者さんは高血圧や糖尿病などの基礎疾患をもつ50、60代の方が多いのですが、患者さんの不安は非常に強まっていると感じます。とくに女性の方。そういう方に共通しているのは、日中のワイドショーを熱心に見ています。テレビなどを見て事実を知るのは大切ですが、感情的に誰かを非難したりする様子をずーっと見ていると気分がふさいで、うつっぽくなったりします。「免疫力を高めましょう」なんて内容も放送していますが、始終新型コロナウイルス感染症の番組を見ているとかえって免疫力が落ちてしまうんじゃないでしょうか。

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 新型コロナウイルスについて、当初はどんな専門家も初心者で、確かなことを知っている人は誰もいなかったのです。だから、それを聞いても受け止め過ぎない、考えすぎないようにしましょう、と患者さんにはお話していました。それよりも今しかできないことをして、気分よく穏やかに過ごし、患者さんの持つ高血圧や糖尿病などの基礎疾患を良い状態にすることの方が大事ですよ、と。そういう話をしただけでも、少し落ち着いてくださるようでしたね。

昨年末から原因不明の肺炎患者がいた

 2月に「かぜ外来」をもうけましたが、私のクリニックには新型コロナウイルス感染症の患者さんは来ていません。ただ、もしかしたらいたかもしれない、とは思います。というのは、昨年末から肺炎を起こしているのに、検査をしてもマイコプラズマなどには感染しておらず、なかなか解熱しない患者さんが数人いらっしゃったのです。

 当時はまだ新型コロナウイルス感染症は知られていませんでしたから、「これはなんだろうな」と思っていました。でも、幸い重症化せずに治ったので深くは追究しませんでした。今、振り返ってみると、もしかしたらそのなかに新型コロナウイルス感染症だった方がいたかもしれないな、と思います。だって、あれだけ多くの観光客が海外から来ていたのですから、新型コロナウイルスの感染力を考えたら、日本での感染のスタートが、今、把握されているほど遅かったはずはないと思うのです。

早期に効くアビガンに期待

 ようやく治療薬のレムデシビルを厚生労働省が承認し、5月中にはアビガンも承認されようとしています。処方にどういう条件がつくかわかりませんが、PCR検査の結果、陽性と出た患者さんに解熱剤などで対応する対症療法だけではなく、新型コロナウイルスそのものに効果が期待できる治療薬を使うことができるようになることは有益です。とくにアビガンは早期に効くとされていますから、重症化を防ぐには有効だと期待しています。

 新型コロナウイルス感染症については、軽症だった患者さんの容態が急変し、急激に悪化して亡くなった症例が報告されていますが、そうした方はウイルスが全身に広がって、サイトカインストーム(免疫反応の暴走)が起きていると考えられています。そうならないためには、全身に広がる前の感染早期でアビガンを使用して、ウイルスの増殖を抑えることがカギになると思います。

血栓を作りにくくする食事を

 それにはできるだけ早期でコロナと診断できなくてはいけません。PCR検査を闇雲に増やすよりも、陽性陰性の結果が早く出る抗原検査を増やした方が現実的だと思います。抗原検査はPCR検査に比べ精度は劣りますが、ウイルス量がある程度あれば陽性と出ますから早く治療につなげることができます。明らかに状態が悪く陽性の可能性が高いのに抗原検査で陰性と出たら、その場合はPCR検査を受ける、というふうに併用できるようになれば良いのではないかと思っています。

 新型コロナウイルスに個人でできる対策は限られています。手洗い、うがいをこまめにし、三密を避ける対策を続けていくことが大切です。最近は新型コロナウイルス感染症と血栓症の関係が注目されています。そうすると、血栓を作りにくくする食事(血管をいたわる食生活)を心がけることも大切になってくるかもしれませんね。

◆私たちENCOUNT編集部では、新型コロナウイルスについて取材してほしいことを募集しております。info@encount.pressまでお寄せください。

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