白井一幸氏、ジャニーズ社外取締役就任で批判殺到も「想定内。反応が怖いのなら引き受けていない」

7月1日付でジャニーズ事務所の社外取締役に就任するプロ野球界初の企業研修講師・白井一幸氏(61)がこのほど、ENCOUNTのインタビューに応じた。同氏は今年3月、侍ジャパンのヘッドコーチとしてWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で優勝に貢献。その後、ジャニー喜多川前社長(享年87)を巡る性加害疑惑で揺れる同事務所から就任依頼を受けた。周囲は心配し、就任内定の発表後は批判の声も届いた。それでも、火中の栗を拾う思いと「なすべきこと」を聞いた。以下は、インタビュー前編。

白井一幸氏【写真:ジャニーズ事務所提供】
白井一幸氏【写真:ジャニーズ事務所提供】

インタビュー前編「コーチングで水質を改善します」

 7月1日付でジャニーズ事務所の社外取締役に就任するプロ野球界初の企業研修講師・白井一幸氏(61)がこのほど、ENCOUNTのインタビューに応じた。同氏は今年3月、侍ジャパンのヘッドコーチとしてWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で優勝に貢献。その後、ジャニー喜多川前社長(享年87)を巡る性加害疑惑で揺れる同事務所から就任依頼を受けた。周囲は心配し、就任内定の発表後は批判の声も届いた。それでも、火中の栗を拾う思いと「なすべきこと」を聞いた。以下は、インタビュー前編。(取材・文=柳田通斉)

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――今月26日、ジャニーズ事務所が初めて導入する社外取締役への就任が発表されました。同事務所に厳しい目が向けられている状況で、反響も大きかったのでは。

「反響はすごいです。私の公式HPやYahoo!コメントにも『何で引き受けた』『何ができるんだ』などの批判の書き込みがありました。ただ、それらは想定内ですし、こういう反応が怖いのなら引き受けてはいません」

――WBC後にオファーがあり、藤島ジュリー景子社長が事務所の公式サイトで謝罪の動画と書面を公開した今月14日の前には、受諾されていたと聞いています。

「そうです。最初ご連絡をいただいたときには正直、『芸能界とは縁のない自分が役に立つのか』という思いや、『受けるとお前まで逆風になって、大変なことになるぞ』という周囲の声もあり、確かに考える時間は必要でした。ただ、4月末にジュリーさんにお会いして覚悟が決まりました」

――藤島氏とはどんな話を。

「まず、『故人のことは、社長として重い責任を感じています』と話されていました。私はジャニーさんが亡くなっていて、事実認定はできなくても、被害を訴える人が出ていることは事実であり、『それらを受け入れて謝罪をし、償わなければダメです』と伝えました。ジュリーさんにはその覚悟があり、『(被害告発者に)何としても向き合って、事務所を立て直す』という思いを語られました。私が『途中で諦めるということにはなりませんか』と確認すると、『絶対にないです』と即答されました。それが決め手でした。ただ、その後に『ご迷惑はお掛けできない。断っていただいても』と言っていただきましたが、この仕事は自分のチャレンジとしても、『やるべき』と判断しました」

コーチングとは「自発的な思考、行動を引き出していくこと」

――白井さんの就任は7月1日付。社外取締役として、何をしようと考えていますか。

「被害を訴える方々に向き合うことは、ジュリーさんや顧問弁護士、法曹界から社外取締役に就任される方が担当され、私はジャニーズ事務所が生まれ変わっていくためのお手伝いをしていきます。取締役会に出席して意見を言うだけでなく、コーチングでタレント、スタッフの皆さんと向き合っていきます」

――企業におけるコーチングとは。

「目標達成に必要なことを相手の話を聞きながら、確認し、質問を用いて、自発的な思考、行動を引き出していくことです。今回でいえば、ジャニーズ事務所の理想とする在り方を聞きながら、みなさんが目指すものを明確にしていく。なぜ、そうなりたいのか、ゴールに対して現在地はどこなのか、ゴールとのギャップをどう埋めていくのか、そこに向けた資源、強み、それらを使いながら、いつまでやるのか、自ら答えを出す支援をするのがコーチングです」

――カウンセリング、ティーチングとの違いは。

「カウンセリング、ティーチングはヘルプの要素が強くなります。確かに目の前に人が倒れているときは、ヘルプの必要がありますが、これを続けると、『また困ったときに助けてもらおう』と依存型になる可能性があります。本当にいい組織にするためには、自分でゴールに向かって多くのエネルギーを発していくことが大事です」。

――ジャニーズ事務所の組織的な問題点は。

「ジュリーさんが謝罪の書面で伝えた通り、かつては社長のジャニーさん、副社長のメリー喜多川さんの2人で全てのことが決まっていたことです。つまり、密室で何かが起き、透明性がなかったことです。ジュリーさんが社長を引き継いで、ちゃんと取締役会を開き、少しずつ体質を改善していたそうですが、スピード感はなかった。組織を変えるなら劇的にやらないと、慣れ親しんだ方に戻っていくものです。ゴルファーが少しスイングを変えても、結局は元に戻るのと同じことです」

――大胆な変革が必要ということですね。

「今回のような大きな問題が起きないと、『劇的』とはいかない。それも事実です。社内でも『変わらなければ』という思いを抱えていた人もいたと聞いていますし、ジュリーさん自身もそう思っていた。だからこそ、この機に踏み切る決断をした。大事なことは組織内の風通しを良くし、水質を改善すること。透き通った水にしないと前が見えませんから」

□白井一幸(しらい・かずゆき)1961年6月7日、香川・志度町生まれ。83年のドラフト1位で駒沢大から日本ハムに入団。俊足巧打の二塁手としてチームに貢献。95年オフにオリックスへ移籍し、96年に現役引退。日本ハム、DeNAなどでコーチを務め、2018年から本格的にプロ野球界初の企業研修講師として活動。各企業をはじめ、商工会議所、大学、スポーツ界で人材育成、チームビルディングをテーマに研修を重ねている。20年に北海道銀行女子カーリングチームのフォルティウスで、21年にプロバスケットボールB1・レバンガ北海道のメンタルコーチを担当。22、23年はWBC侍ジャパンのヘッドコーチを務めた。同年8月、北海道医療大客員教授に就任予定。

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